治療法の選択・意思決定

治療の選択は、乳がんの状態(大きさやがんの種類、悪性度、ホルモン感受性などのがんの性質、転移の有無、再発のリスクなど)、その人が置かれている環境、人生・生活の優先順位などによって、異なってきます。ここでは、インタビューに答えた人たちがどのようなことを考え、その治療を選択したのか、選択するまでの過程について、語っています。

手術法の選択肢には乳房温存術と乳房切除術があります。乳房温存術を受けた人たちがそのいくつかの理由について語っています。

子どもが小学生だったので、おっぱいがあった方がいいと思って温存にした

一日も早くがんを取り除きたくて胸はいらないと思ったが、夫の希望もあって温存することになった

ほとんどの人が可能であれば乳房温存手術を受けていました。しかし、中には乳房温存療法が可能でも、さまざまな理由から乳房切除術を受けた人たちもいました。今回、インタビューに協力してくれた非浸潤がんの女性は1人だけでしたが、彼女は手術当日まで迷った結果、最終的に乳房切除術を選択したそうです。

温存も可能だったが、乳房を全摘してリンパ節も広く取っておけば放射線治療なしで安心していられると勧められた

生検では非浸潤がんであり、医師は温存を勧めた。いろいろな可能性を考え、温存か全摘か、手術当日の朝まで決められなかった(音声のみ)

術式について手術前日まで迷っていたが、主治医に80歳になったときに後悔しない方を選ぶよう言われ、自分の気持ちが整理でき、全摘を決意した(音声のみ)

温存手術を望んでいても、検査結果から乳房切除術が勧められ、やむなく受け入れたという人や温存手術に期待をかけて術前抗がん剤治療を受けた人もいました。

腫瘍が大きいので温存は難しいと言われたが、術前抗がん剤治療に期待をかけたいと思った。自分一人で考えて誰にも相談せずに決めた(音声のみ)

乳房再建術については、乳房切除術と合わせて同時に再建術を受け、最初から乳房の膨らみが元通りになるよう望んでいる人たちがいる一方で、しばらく時間を置いてから考えることにしたという人もいました。(乳房再建術を参照)

リンパ浮腫や上肢の運動機能障害となることへの不安から、リスクを承知した上で、リンパ節を取らないでほしいと希望した人も数人いました(リンパ節郭清とセンチネル生検を参照)。

リンパ節を取らないときのリスクの説明を医師から聞いたが、とにかくリンパ浮腫を避けたかったので、術式の選択でリンパ節を取らないでくださいとお願いした

抗がん剤治療について、20代の体験者は、医師から勧められた治療がガイドラインと同じだったので、迷わず受けることにしたと話していました。また、自分の希望より家族の気持ちを大切にして治療を受けることにしたという人もいました。転移や再発時における抗がん剤への気持ちは、初発の時とは異なり、脱毛を避けたいという声が複数ありました(再発・転移の治療を参照)。

説明された抗がん剤治療の内容はガイドラインと同じだったので、迷いなくやることに決めた

抗がん剤はしたくないと思ったが、家族はやるだけのことをやってほしいと言ったので、あとで後悔してほしくなくて受けることにした

ホルモン療法については、抗がん剤に比べて副作用が少ないと言われていますが、複数の人から妊娠・出産への影響や継続的に不快な症状が続くことを懸念する声が聞かれました。また、ホルモン療法で肝機能障害が生じ、途中で中止を選択した人がいる一方で、毎日、肝機能改善の注射を受けながら、治療継続を望んだ人もいました。乳がんの治療後、間質性肺炎を発症した女性は、どんなに確率の低い副作用であったとしても、重篤な副作用が起こり得ることと治療の効果に関して納得して治療の選択をすべきだと語っていました。

当面は結婚や出産の予定がなく、再発防止を優先してホルモン治療をすることにした

抗がん剤のように短期間なら副作用も我慢できるが、日常生活に影響のある副作用が長期に続くようであれば、ホルモン療法をどうするか考えると思う

再発防止に効果があると言われたが、肝機能が悪くなり、自分からホルモン療法を止めると言った

再発予防のための治療が間質性肺炎(※)の誘因になったのかもしれないと思うと、情報を前もって知った上で、自分で治療を受けるかどうか選べたらよかった
※細菌感染によって気管支または肺胞内部に炎症が起きる通常の肺炎とは違って、放射線や薬剤、膠原病などの影響で肺胞を支える壁などに起きる炎症をさします。

インタビュー協力者の中には、誰にも相談せずに決めた人もいれば、身近な人や患者会に相談した人たちもいました。ある女性は、自分で情報を集め、十分に吟味した上で、手術や抗がん剤治療などの治療を一切受けずに、無治療で経過を見ることを選びました。しかし、最終的に一人で決断することには躊躇し、信頼できる友人に相談したと話しています。

診断後、友人が一人の医師を紹介してくれた。最初の診察では、術前抗がん剤と乳房温存術を勧められたが、さまざまな本を読んで考え、無治療で経過を見ることにした(テキストのみ)

無治療を選択するとき、友人に相談したが、命にかかわる決定であり、大きな試練だった(テキストのみ)

また、治療を選択する上で治療費の負担が少ないことや仕事が継続できることを条件としてあげる声もありました。

命も治療も大事だけど、それにはお金が要るので、働きながら治療したいと医師に伝えた

インタビューに答えた人たちは、自分で治療をどうするか決断していくことはとても悩むし、難しいことだったと語っています。一度、決断したあとで本当によかったのか不安を感じることもあります。ある女性は自分の選択した治療がイレギュラーで不安があったが、治療は人それぞれであることがわかってから、安心したと話していました。結果がわからないからこそ、自分なりに納得のいく意思決定をしていくことが大切だと語っていました。

最初、自分がノーマルな治療法から外れていると思って不安になったが、人それぞれに合った治療法があると考えるようになって精神的に楽になった

あとで後悔したくなかったので、治療についてやるだけのことはやってみようと思った

答えがわからないからこそ、自分で勉強して納得して治療を選ぶことが大切だと思った

なお、それぞれの治療法のページにも治療法の選択や意思決定に関連する語りが掲載されています。

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