乳房再建術
ここでは乳房再建術についての語りを紹介します。乳房を温存したいという希望があるにもかかわらず、それができなかった人や、温存できても、乳房の形が変わるのが嫌だと思った人が、乳房再建術を選んでいました。また当初は再建を考えていなくても、片方の乳房を切除したために体の左右のバランスが悪くなったことから、再建を考えた人もいました。逆に再建手術を勧められていても、改めて全身麻酔の手術を受けるリスクや経済的な負担、その他個人的な理由で受けないと決めた人もいました。
乳首の近くの小さながんのために乳房を全摘するのは、女性として割り切れない思いがあり、医師たちの再三の説得にもかかわらず、再建を強く希望した(音声のみ)
もともと大きかったほうの乳房が残ったので、体のバランスが崩れて姿勢が悪くなったことに加え、物事に対して卑屈になってきたので、乳房再建をしようと思った
胸がないからといって「女じゃなくなった」とは思わなかったし、再建したら検査もしにくいだろうと思った
乳房温存後、水がたまるくらいのくぼみができたが、この病気があったから今の自分がいると言うことを忘れないために、あえて再建はしないことにした(テキストのみ)
乳房再建術では、乳房のふくらみを再建するのに、お腹や背中など自分の体の別のところから採った組織(自家組織)を使う方法と、生理食塩水を入れたバッグやシリコン(人工物=インプラント)を使う方法の2通りがあります。自分の組織を使う場合は異物反応が起こりにくく、健康保険も利きますが、お腹や背中にメスを入れることになるので、そのことで将来の生活に支障が出ることもあります。お腹の組織を用いる「腹直筋皮弁法」と背中の組織を用いる「広背筋皮弁法」では、お腹のほうが、皮下脂肪が使えるので大きな傷に対応できます。人工物の場合は、体への負担が少なくてすみますが、保険が利きません。
インタビューに協力した人たちの中には、水着のときに見えないからという理由でお腹の組織を使うことにした人や、過去に手術でお腹を切っていたために自家組織が使えず人工物を使うことにした人がいました。
水着で隠れると言われて腹直筋皮弁法にしたが、お腹への負担が大きいので、出産のときにいきめるのかという不安を感じた
以前に婦人科の手術を受けていたので、自家組織を使うより体への負担も少ないということで人工物を入れる方法を選んだ
再建手術を行う時期については、乳房切除の手術時に再建を行う「同時再建」と手術後半年以上経ってから行う「二期再建」があります。インタビューでは、乳房を失うということに対して強い拒絶感がある、あるいは二度も手術をしたくないといった理由で同時再建を選んだ人もいますが、もともと同時再建しか説明されなかったという人もいました。一方、二期再建するつもりでいても、時間がたつにつれ、再度手術を受けるのがおっくうになってきたという人もいました。
同時再建だったので胸の傷に関するショックは少なかったが、お腹の傷が思ったよりひどくてびっくりした
リンパ節転移もあったので、再建手術はきちんとがんが治るまで3年待つようにいわれたが、日にちがたつうちに次第におっくうになってきた
再建手術の実際について
同時再建では乳腺外科医と形成外科医の連携が必要となり、手術時間が長くなります。自家組織を使って同時再建した人は入院期間も長くなり、胸だけでなく自家組織を取った部位の痛みや傷痕の突っ張り感も気になったと語っています。
腹直筋皮弁の同時再建で入院期間はがんを取るだけの手術より3~4日延びた。胸の痛みよりお腹の痛みの方が激しかった
インタビューでは、人工物による同時再建で手術をしたものの、アレルギー反応や放射線治療による炎症などの合併症で再建を中断してしまった人がいました。また、自家組織を用いた場合でも、腹部の傷の合併症で2年近く苦しんだ人がいました。
同時再建で生理食塩水の入ったパットを入れたが、術後3日後ぐらいにアレルギー反応が出て、取り出さざるを得なかった
同時再建を希望してエキスパンダーを入れたが、放射線治療が必要となり、皮膚に炎症が起きて、コヒーシブ(※)に入れ替えることができなくなった
※コヒーシブ=コヒーシブ・シリコンのこと。シリコンを寒天状に加工して、シリコンバックに注入したもの。
退院後1週間ぐらいで腹直筋皮弁法でできたお腹の傷が開いて黄色い汁が出てきて、それから2年近くずっと、毎日ガーゼを当てては取り替える日々が続いた(音声のみ)
一方、術後3年たって二期再建を受けた人は、まず生理食塩水を入れたエキスパンダーという袋を入れて皮膚を引き伸ばしてから、シリコンジェルに入れ替えるという方法を取っていました。左右乳房のバランスをとるために、残った側の乳房の吊り上げ手術も受けています。
最初はエキスパンダーという水風船のようなものを入れて、3週間かけて少しずつ生理食塩水を注入していった。その間に反対側の乳房の吊り上げ手術も受けた
エキスパンダーを入れてから1年半くらいして、アメリカからシリコンジェルを取り寄せて入れ替えをした
インタビューに答えた人たちのうち、再建が出来た人は皆、手術の仕上がり具合に満足していましたが、加齢とともに再建したほうの乳房と健康な乳房に差が出てくることを懸念する声や、腹部の傷痕に違和感を訴える声もありました。
移植したお腹の皮膚がちょっと毛穴が大きいような気がする程度で、乳房自体には変化がなかったが、年齢とともに健康なほうの乳房が下降してきた


