放射線療法
放射線療法は、乳房温存手術後の乳房内再発予防のために行われるほか、乳房を切除した場合も胸壁やリンパ節など周辺領域での再発を防ぐ目的で放射線照射を行うことがあります。また、骨や脳などに遠隔転移した病巣に対する治療としても行われます。
インタビューで放射線療法の体験について語った人たちの多くは、乳房温存手術を受けた後に、初期治療の一連の流れの中で放射線療法を受けた人たちでした。また、通常のエックス線による照射に加え電子線による追加照射を受けた人や、リンパ節転移があってわきの下や鎖骨付近にも照射をした人もいました。
術前抗がん剤、手術を終えて、放射線治療が始まった。毎日通うのは体力的にはつらかったが、医師や家族に励まされながら25回の照射をクリアすることができた
乳房温存手術に引き続き抗がん剤治療を受け、職場復帰して通院で放射線治療を受けた
エックス線照射を25回やった後で、追加で電子線照射(※)を5回やった。苦痛もなく、副作用は皮膚がヒリヒリする程度だった(テキストのみ)
※ブースト照射ともいい、照射量を増やすことによって乳房内再発のリスクを減少させる目的で行われます(日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン3放射線療法2008年版」)。
また、乳房を切除した後に、リンパ節の転移や断端部にがんが残っているのが見つかって、放射線療法を受けた人もいました。
大きく乳房を切除した断面にがんがあり、リンパ節転移が8個あったので、放射線治療もすることになったが、副作用は軽くて済んだ (音声のみ)
一方、乳房以外の部位での再発に対する治療として、放射線照射を受けた人もいます。以下に紹介する人のほかに脳への転移がわかって全脳照射を受けた人や骨転移への照射によって痛みが軽減した人もいました(再発・転移の治療を参照)。
腸骨と股関節の転移部に放射線照射をするのに、通院途中で転んで骨折するといけないということで、入院して治療を受けた
インタビューでは多くの人が通院で治療を受けていて、中には仕事をしながら治療を続けた人もいましたが、再発・転移の治療だったり他にも持病があったりして、入院して治療を受けた人もいました。また、通える病院が近くになくて入院した人もいます。手術を受けた病院に放射線治療の設備がなかったり、毎日通うには遠すぎたり、照射部位の関係で特殊な装置が必要になったりして、転院して治療を受けた人もいました。
半日だけ出勤してそのあと放射線治療に通っていたが、生活にはほとんど影響がなく、運動不足解消のためにバドミントンをしていた
持病があったので入院して放射線療法を受けた。持病の影響で肌がただれやすくとても痛かったが、ステロイドの塗り薬で治療をやりとおすことができた(テキストのみ)
骨転移に対し自宅に近いがんセンターでの放射線照射を希望したものの、とても混んでいたので、遠方の大学病院まで通うことになったが、毎日遠足気分で楽しく通院できた
放射線の照射自体は通常1~2分、照射中は痛みも熱も感じないので、治療そのものは楽だったという人が多いですが、毎日通わなければならないのが気分的に負担になったという人もいました。照射部位によっては治療前の位置決めが大変だったという人もいます。また、照射位置につけた印は、治療中は消すことができないので、襟ぐりから見えてしまったり、下着に色が移ったりするのが気になったという人もいました。
毎日車を運転して放射線治療を受けに通うのが苦痛で、副作用のやけどや胸につけられた照射位置の印(マーキング)も気になり、うつっぽくなった時期があった
肺などの臓器に放射線が当たらないよう、照射位置をきめるのに、手術した側の腕を上げた状態で身動きできずに40~50分かかった
副作用については、人から聞いた話や家族の体験から強い不安を抱いていた人も何人かいましたが、実際にはそれほど副作用はなかったと話していました。
前立腺がんで亡くなった父が放射線治療で苦しんだのを見ていたので、大変だろうと思っていたが、副作用もなく、30回休まずに受けることができた
実際の副作用の体験としてインタビューで語られていたのは、治療中に出る急性反応としての日焼けのような皮膚症状が主で、一部に体のだるさ、白血球の減少を経験した人もいました。一方、治療後数ヶ月以上経ってから出てくる副作用(晩期障害)で、放射線肺炎を経験した人もいました。
放射線を当てている皮膚が焦げ茶色になり、痕が残るのが心配で入浴時もこすらないようにしていたが、医師にきちんと洗うように言われて、そっとこすったらきれいな皮膚が出てきた
放射線治療が終わって1ヶ月くらいしたときに、風邪をひいたような、肺が痛いような気がしてレントゲンを撮ったところ、軽い肺臓炎(※)と言われた
※放射線治療の治療中あるいは終了後、比較的早期に出現する、放射線肺臓炎のこと

