再発・転移の治療
ここでは、再発・転移に関する治療の体験を紹介します。今回、インタビューした人たちが報告した転移部位は、骨、肝臓、肺、卵巣、脳、皮膚、胃、反対側の乳房などで、手術して残った乳房内や傷跡周辺の皮膚に再発した人たちもいました。再発・転移の治療は転移部位の切除や放射線照射などの局所治療が行われると同時に、全身に散ったがんを制御するため、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤治療、分子標的療法など)が行われます。通常、手術前後に行われた補助療法と同様に、がんの性質に合わせてどの薬が有効か検討されます。しかし、初発の薬物療法とは異なり、一定期間で終わることがないため、それぞれの人が望む生き方や経済的な負担・家族の状況などを含むその人の置かれた環境によって、選択する治療は異なっていました。
骨と肝臓に転移し、はじめて抗がん剤をやることになった。安くて気持ち悪くなくて髪の毛が抜けない薬にしてほしいと希望した
術前抗がん剤は何回で終わるという目標があったが、再発治療ではずっと抜けたままになるのが嫌で、脱毛しない抗がん剤を選択した(音声のみ)
このように脱毛しない薬を選びたいという意見は複数から聞かれました。しかし、そうして脱毛は避けられたけれど、下痢などの副作用で辛い経験をしたと話す女性もいました。
再発治療では脱毛しない抗がん剤を選んだが、自分の場合はその薬で下痢がひどかった。飲み薬だったので、点滴と違って副作用出現が予測できず、仕事中の突然の下痢に苦しんだ(音声のみ)
ある人は、自分なりに学習して治療の内容を選択したと話し、本人しか、辛さも何を許容できるかもわからないものだから、自分で決めることが大切だと治療選択に関するアドバイスをしています。
いろいろと勉強して自分が納得いく治療を選択した。10年20年と長期にわたって治療をしている体験者の声も知っていたので、抗がん剤でいけるという自信があった
がん治療はリスクとリターンという考え方ができると思う。リスクである副作用をどれだけ許容できるかは人それぞれだから、自分で判断して決めていくことが重要だと思う
時には、生き生きと過ごすことややりたいことを優先するという生き方を選択している人たちもいました。
つらい思いをして抗がん剤治療をしているのと、やりたいことをやって過ごすのと、同じ時間でも全然違うと気づいて、この先どうするか考えた(次のクリップに続く)
副作用で気持ちが萎えて、闘う意欲がなくなるのは嫌なので、抗がん剤治療を一旦止める決意をした
やりたいことを優先して、副作用の強い抗がん剤は一時休薬して、三線ライブを行うことができた(音声のみ)
複数のインタビュー協力者がそれぞれの転移した箇所に対する局所治療について体験談を語っています。卵巣転移で卵巣を摘出した人は、乳がんの手術より開腹手術の方が数段辛くて回復に時間がかかったと話していました。また、脳転移で全脳照射をした女性は、通院して治療を受けていましたが、吐き気などの副作用が辛くて、途中で入院せざるを得なかったそうです。肝転移に対して、自ら治療法を探してラジオ波治療や抗がん剤の動注療法(動脈に直接注入する方法)を受けた人たちもいました。また、骨転移で放射線治療をして痛みが楽になった人、術後残った乳房内に再発して腫瘍の摘出術を受けた人もいました。
卵巣転移があり、腹水が貯まっていて、どこまで切除するかはお腹を開けてみないとわからないと言われた
複数の脳転移が見つかり、ガンマナイフの適応ではないことがわかったので、通院で全脳照射を受けた。吐き気やだるさがあって、途中で入院した
肝転移に対して、抗がん剤と分子標的薬の治療で一度小さくなったが、リバウンドしたため、自ら希望して動注化学療法とラジオ波治療を受けた
左足に骨転移が見つかり、骨折したかと思うほど痛みがあり、放射線治療を行ったところ、治療が始まって3日ほどで痛みが楽になった
最初の手術は乳房温存手術だったが、その後、残った乳房内にがん細胞が見つかり、摘出手術を受けた。現在は、乳房の形がほとんどなくなってしまった
乳がんが再発して療養している人の中には、緩和ケアを受けている人たちがいました。痛みなどの身体症状だけでなく、精神的な辛さをも和らげる緩和ケアは、がんの診断初期から必要だと言われています。今回、抗がん剤治療と並行して緩和ケアを受けている女性は、上手に緩和ケアを活用することができてよかったと話していました。
抗がん剤治療に並行して緩和ケアにかかり始めた。最初はもうやることのない人が行くと抵抗を感じたが、痛みが楽になり、悩みやいろいろな話ができたのでよかった
無治療を選択した一人暮らしの女性は、がんが転移して痛みが出たり、体が動かなくなってからのことを考え、在宅で痛みの治療やサポートが受けられ快適に生活できるような体制を望んだと話しています。
定期的に医師の往診があり、看護師やヘルパーも訪問してくれているので、痛みの治療と精神面や生活のサポートを受けることができて快適に過ごしている(テキストのみ)
