妊娠・出産への思い
ここでは、妊娠が可能な年齢に乳がんとなった人たちの妊娠・出産に対する思いと実際に出産された人の体験について、紹介します。今回、インタビューに協力してくださった人たちの中に、妊娠中に乳がんになった人と乳がんになった後、出産を体験した人がそれぞれ1人いました。
妊娠・出産への思い
乳がんの治療が終われば、生理がある人は妊娠・出産が可能であり、治療が将来の胎児に悪影響を与えたり、乳がん治療後の妊娠・出産が再発リスクを高めるという報告はありません(日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン1薬物療法2010年版」)。しかし、将来の妊娠・出産に対する不安の声は多くの人たちから聞かれました。結婚や出産への希望を持っている20代の女性は、治療に用いた薬剤がどう影響するのか心配だと話していました。
将来は結婚して子どもを産みたいと思っているが、妊娠・出産については治療の影響があるかもしれないと心配している
特に30代後半から40代の女性にとって、その時期に抗がん剤治療やホルモン療法を受けることで、妊娠・出産可能な年齢を過ぎてしまうのではないかと懸念し、治療を受けるかどうか悩んだ人も少なくありませんでした。再発防止を優先して5年間のホルモン療法を受けることにした人がその時の気持ちを語ってくれています。
結婚や出産が難しいかもしれないというショックと、更年期障害が重なり、一時はうつ的になったが、同病者との交流で悩んでいるのは自分一人じゃないと癒された
出産は無理かもしれないが、結婚はあると思いたい。必要以上に重たく考えないようにしている
30代後半で罹患したが、出産可能なぎりぎりの年齢であり、ホルモン療法を5年受けるとなると人生の設計図が変わってしまうので、葛藤がある
すでに結婚して子どものいる人でも、次の妊娠に関する悩みが聞かれました。最初の子どもを出産後、20代で乳がんとなり、治療後しばらく時間が経って、妊娠を考えた時の夫の反応について話してくれた女性がいました。
自分が生きられないと思うと妊娠は考えられなかったが、元気になるともう一人ほしくなった。でも夫は体の心配をして、もう子どもはいいと言う
妊娠・出産の体験
今回、インタビューに協力してくださった人たちの中に、1人妊娠・出産の体験をした女性がいました。彼女は、結婚後子どもが欲しくて不妊治療をしていたところ、20代で乳がんが見つかりました。そこで術後抗がん剤治療の前に、卵子凍結保存をすることを決め、採卵しましたが、治療終了後に自然妊娠し、出産しています。
治療後の卵巣機能低下を懸念し、保険を掛けるつもりで卵子凍結保存をすることにした
採卵できないと抗がん剤治療を始められないので病気の進行が心配だった。卵子凍結保存できたことで、抗がん剤の副作用がどうあれ、安心して治療に臨めた
治療後半年後に妊娠許可が出てすぐ、拍子抜けするくらいスムーズに自然妊娠したので、神様からのご褒美だと思っている
妊娠中は、術後の放射線を浴びた乳房で母乳を飲ませてよいか不安に思っていたが、主治医に大丈夫だと言われた
娘を出産し、乗り越えてきたものの分もプラスされ感動した。これから結婚や妊娠を望む人たちにも味わってほしいので、諦めないでと伝えたい
インタビューに協力してくださった人の中で、妊娠中に乳がんになった人は1人いました。この女性の場合は、妊娠後期に乳がんと診断され、帝王切開後、乳房切除術を受けています。しかし、妊娠初期は妊娠継続するかどうかの選択や妊娠中は治療の制限があるため*1、病状や妊娠週数によって対応が異なってきます。
*1 妊娠初期の抗がん剤治療、妊娠中の放射線療法とホルモン療法は禁忌とされています。また、妊娠中期・後期の抗がん剤治療の長期の安全性は確立されているとは言えませんが、必要性に応じて慎重に行うことが勧められています。(日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン1薬物療法2010年版、3放射線療法2008年版、」)
乳がんがわかったのは妊娠8ヶ月のときで、37週まで待って帝王切開で出産後、同日、乳房切除術を受けた。その後、抗がん剤治療を受けた
なお、「英国人の乳がんの語り」にも乳がんになった後に妊娠した人(30代・インタビュー17)や妊娠中に乳がんが分かった人(30代・インタビュー44)の体験談があります。


