インタビュー内容テキスト

貴方はこれまで、事故の日から年月を経たときどきのご自分の感情を、実際にはあまり表現してきませんでしたね。つまり、ラッセルさんを失ったことによるショックのことですが・・。

ええ、ショックだったとは思いますが、信じられないくらい冷静でした。私たち夫婦はとても独立した生活を送っていましたし、ラッセルを亡くしてからの最初の数日も、「そう、私なら大丈夫。だって、私は家に帰って夫と毎晩一緒にお茶をするようなタイプの人間ではないんだもの」と言いながらずっと過ごしていました。私は独立した生活をしていましたから、毎日仕事が終わって一緒に帰宅し、一緒にお茶を飲み、一晩中隣に座って過ごすタイプの人たちに比べれば、ずっと容易にショックに耐えられるはずでした。そしてこれからもそうであると思い続けていましたし、有り難いことに、他の人々よりもショックが少ないだろうと思っていました。
ところが、少し時間がたつと、実際の現実は違いました。最初、私は子供達のことを信じられない程守っていて、私にとって一番大切だったことは、その時自分に起きていたどんなことよりもむしろ、子供達をどう守っていくかでした。そしてその後、これがこれからも一生ずっと続いていくのだという現実に直面したとき、初めのうちは家が嫌になり、家に入ろうとするたびに、本当にいやでいやで仕方なくなりました。よくシャワーを浴びているときに動けなくなることがありました。シャワーを浴びに行くと動けなくなり、完全に身動きができなくなって、浴室から出られなくなりました。馬鹿げているように聞こえますが、車の中にいるといつも、あの最初の夜の体験が蘇ってくるのを感じ、それが一年以上も続いていて、恐怖なんです。

経験というのは、病院に行ったときのことですか?

そう、今話したようなストーリーの記憶が蘇ってくるのです。車のハンドルを握った瞬間、頭の中がそうなるのです。警察官が車のドアの周りにいて、あのときの体験がすべて蘇るのです。怖ろしい夢の中では、しばしば死や衝突のシーンが出てきたりしました。時には部屋いっぱいに子供達や、またある時はセキセイインコがいて、それが押しつぶされて全部死んでしまう夢を見ることもありました。

怖ろしいですね。

ひどいものでした。そのときは「独りで生きたくない、独りになんてなりたくない」と、将来に対する対的な恐怖を感じながら何度も何度もそう思いました。私たち夫婦はともに定年を間近に控え、ラッセルはあと6ヶ月、私はあと1年という時でした。一緒に計画も立てていたのに、私の未来は、私の計画はどうなるの?と思い、今は自分の生活全てが奪われてしまったように感じました。ある時には、すっかり自信を失ってしまいました。私は妻でしたから、自分の分身ともいうべき人を失ったのですから、まるで自分がいなくなったように感じたのです。夫との関係も安定し、将来計画も練り上げ、自信にみちていたところから、文字通り一瞬のうちに全てを失ったのです。ですから、彼を失い、自分を失い、人生を失ったと感じたのです。それから、じっくりと考える時間があって、こう思うようになったの。彼は私よりももっとしたいことが沢山あったのに、私は元気で生きていて、彼が死んでしまったのは公平じゃないと思った、泣きごとを言うのは止めなきゃと思ったわ。彼は最後の10年~15年の間に、退職後のために色々なものを集めていたのに、それをもう使えなくなったし、遊ぶことも、楽しむこともできなくなったの、それはすごく不公平だと思えてきたの。極度の疲労感、完全な疲労感を覚えて、それがいつまでも続くように感じる。いまでもまだ本当に疲れを感じているの。夫に先立たれ、それを乗り越えようとして、でも最後には全て上手くいくだろうということを理屈でわかっている論理的な思考と、真っ暗な穴に突き落とされて這い出すことができない非論理的な思考を併せ持った二重人格者みたいに感じるからだわ。だから、とてつもないジェットコースターに乗っているようなものなのよ。時々は、町を歩いていて、こう思うの、「そうよね。人生は一度きりだし、私はそれを学んだの。だから、それを精一杯生きなきゃいけない。だからこういう良いことは全てやろう」と考える。すると、前向きになり自分に自信が持てるようになるの。ところが次の日の朝、目覚めてみると、絶望に陥り、完全にコントロールを失い、「一体、どうしてこんなことになってしまったのか」と思ってしまう。ある朝には、前向きで自分に自信を感じながらシャワーを浴びており、確かに私はコントロールできているし、ものごとが順調に行っていると思うのだけど、寝室に入って写真を見ると、30秒もしないうちに前向きな気持ちから深い絶望に落ち込んでしまう。これは、ほんとに信じられないくらい疲れることで、その疲労感はとても説明できません。

それはつい最近のこと?

いいえ、6ヵ月か、8ヶ月前のことです。でも、今でも自信を持ち、前向きになることができる日があるのですが。ラッセルが亡くなってから2年目となる前の夏のころのことですが、それまで本当にものごとが上手くいっていると確かに感じるときが数か月ありました。でも、2度目の命日のあたりでは、またトラウマの時期を迎え、6~8ヶ月前の状態に押し戻されてしまったのです。

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