大腸がんとは

国立がん研究センターの「がん情報サービス」の最新がん統計によると、2012年にがんで死亡した人のうち、部位別のがんで最も死亡数が多かったのは肺がん、次いで胃がんで、大腸がんは3位です。年間に約12万人の人が新たに大腸がんという診断を受け、約4万7千人が大腸がんのために命を落としています。しかし、その割には大腸がんについて、はっきりしたイメージや知識を持っている人は少ないのではないでしょうか。今回私たちのインタビューに協力した人たちは、大腸がんについて次のように語っています。

このように大腸がんは他の部位のがんに比べて印象が薄いようです。東京都がん検診センターの入口陽介医師は、大腸がんは増えていて、特に女性のがん死亡率の第1位を占めていると話していますが、インタビューに協力した女性たちの間でもそのことはあまり知られていませんでした。

ここでは、大腸がんに関する基本的な知識について、インタビューに協力した人たちの語りと専門医による解説を合わせてご紹介します。

大腸がんの特徴

大腸がん

大腸は長さが約2mほどあり、胃に近いほうから盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸と呼ばれます。大腸がんは結腸・直腸・肛門に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。


がんは大腸の壁の内側の粘膜に発生して、壁の外側に向かって進展していき、進行すると壁を突き破って周辺のリンパ節に転移し、さらには肺や肝臓などの臓器に遠隔転移します。大腸がんは早期に発見されればほぼ100%治すことができますが、ひとたび遠隔転移を起こすと治療が困難になります。そのため、なるべく早い段階でがんを見つけることが肝要です。

大腸がんの自覚症状

大腸がんの症状は、がんが大腸のどの部分にできるかによって違ってきます。インタビューでは、大腸がんと診断された人の多くが、自分が考えていたような大腸がんの症状は出ていなかったので、大腸がんとは思わなかったと話しています。

実際、大腸がんはある程度の大きさに成長しないと症状は出てきませんし、その症状も多様でほかの病気との区別がつきにくいようです。がんの進行と出てくる症状について、専門医は次のように話しています。

また、大腸がんは自覚症状が出てから受診しても間に合うのではないかと話している人も複数いました。その反対に、「がん=死」というイメージを強く持っている人もいます。特に「進行がん」という言葉を聞いて「治らないのではないかと思った」人もいました(「大腸がんの治療」のインタビュー17を参照)。

こうした意見に入口医師は「症状が出ている進行がんでも転移がなければ助かる」と話しています。「進行がん」とは、がんが粘膜層、粘膜下層にとどまらず(とどまっていれば「早期がん」、ステージでいうと0期~I期の一部)、筋層から漿膜下層,漿膜,漿膜外へと浸潤している場合(I期の一部~IV期)を指します。ちなみに、大腸がんの病期別生存率は、がんが筋層にとどまっているI期が99.2%、筋層を超えているがリンパ節転移がないII期は89.1%、リンパ節転移のあるIII期でも78.7%、遠隔転移のあるIV期が16.1%となっています(がん情報サービス「大腸がんの病期別生存率」より)。従って、「進行がん」といっても、II期では「余命いくばくもない」ということにはなりません。しかし、進行がんになると、リンパ節への転移が否定できないので、原則的にリンパ節を切除すること(リンパ節廓清)が必要となります。その前の段階でがんを見つけられれば、内視鏡で切除することができるので、症状が出る前に検診を受けることが推奨されるのです。

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