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公開フォーラム「『患者の語り』が医療を変えるPart 2」に参加して
11月23日、東京大学弥生講堂にて、公開フォーラム「『患者の語り』が医療を変えるPart 2~“がん体験をめぐる語り”のデータベースを作ろう!」が開催された。当日は研究者以外にも、患者の方々やそのご家族、学生、医薬系企業関係者の方など、さまざまな立場からの参加者総勢162名が集まった。自分自身も患者の「病いの語り」を医療にどのように生かしていけるのか、というテーマに関心を持っていたため、ホームページ上でこの公開フォーラムの開催を知ってからというもの、非常に楽しみにしていた。
フォーラムの第一部「『患者の語り』が医療を変える」では、「健康と病いの語りデータベースDIPEx」と題し、DIPEx-Japan代表の別府宏圀先生から、イギリスのDIPExの取り組みの紹介とともに、病いの語りをデータベース化する意義、そしてDIPEx-Japanのこれからの展望についての話を伺うことができた。別府先生の講演を通して、患者の語りがわれわれにいかに多くのかけがえのない視点を与えてくれるかということを再確認するとともに、そうしたインパクトのある語りであるからこそ、それらをデータベース化し医療や教育、研究に生かしていくことの必要性を感じた。
続いて、フォーラムの第二部「がん体験について語ろう」では、がん体験者であるエッセイストの岸本葉子さん、読売新聞社会保障部記者の本田麻由美さんを迎え、がん体験者の生の「語り」を聞くことができた。岸本さんはご本人が自らのがん闘病体験を公に語ってきたという経緯から、語ることのもつ力についてお話された。その中で、とても印象深かったのは、岸本さんの「語ることはエンパワーメントである」という言葉である。岸本さんは、病いの経験を語ることによって、自分自身の心の整理になり、また他の人の語りを聞くことが立ち直りにつながり、また新たな結びつきが生まれる、語りはそのような可能性を持っているとおっしゃっていたが、これは病いの語りをデータベース化することの意義にも同様に当てはまることだろう。また本田さんからは、患者の声が実際に行政やがん医療を動かした事例が紹介された。患者の声に耳を傾けることの重要性、そして彼らの生の声こそが社会を動かしていく力となるのだと考えさせられた。
お二人の講演のあと、和田恵美子先生(大阪府立大学)が「がん体験をめぐる語りのデータベースを作る」と題して講演された。講演では、和田先生がこれまで行なってこられた全国に闘病記文庫を広める活動や、Web上での闘病記ライブラリーの取り組みを紹介されたあと、DIPEx-Japanのこれまでの歩みや、研究にあたっての組織整備、具体的な研究方法について話された。実際どのように語りを収集するのか、またデータベース化するにあたってのデータの取り扱い、保存等、具体的にどのように研究が進められていくのかをわかりやすく説明された。
フォーラムの最後となる第三部のパネルディスカッションと質疑応答では、活発な意見交換がなされた。がん患者の方々からは岸本さんと本田さんのお二人に、がんを公にすることで経験した困難についての質問があった。がんを公にすることはある程度の社会的リスクを負うことになることもあるとお二人ともおっしゃっていた。そのようなリスクを負ってでも自らの病いの語りを役立ててほしいと申し出てくださる患者の方々の思いに応えるためにも、語ってくださった患者の方々の語り提供後のフォロー(Ex. 悪用されないための技術的フォローや個人情報の保護など)も十分に取り組んでいく必要があると感じた。また、病いの語りという患者側からの視点が医療者と患者の相互理解へとつながっていくためには、そしてがん体験者の方々、また今現在がんと闘っていらっしゃる患者の方々の声を医療や質的研究に生かしていくためには、研究者としての視点も当然重要になってくるが、それと同時に、語りを提供してくださった方々の視点や思いを忘れたり置き去りにしてしまってはならないのだということを強く感じた。
今回のフォーラムに参加し、さまざまな立場の方々の意見を伺うことができ、とても刺激を受けた。会場にいた参加者は、立場は違えど、「医療を変えていきたい」という思いはみな一致していたように思う。語りのデータベース化という取り組みも、そうした社会的な要請に応えるためのひとつの取り組みといえるだろう。今後のDIPEx-Japanの活動の広がりを期待するとともに、自分自身もこの取り組みに何らかの形で関わっていけたらと思う。
(林優美子)
