PSA検査・検診
PSA(ピーエスエー)は前立腺特異抗原と呼ばれる腫瘍マーカーで、採血によって調べることができます。この検査は前立腺がんのスクリーニング(がんの疑いがあるかどうかをチェックする)を行うために用いられる場合と、前立腺がんの経過観察や治療効果をみるために用いられる場合とがあります。ここでは、検診などを含むスクリーニングとしてのPSA検査、つまり前立腺がんの診断がまだつかないときの体験について紹介しています。
インタビューに協力してくださった方は、診断が確定する前に1度はPSA検査を受けています。前立腺がんの初期には、自覚症状がほとんどないと言われています。そのため自治体や職場の健康診断、人間ドックでPSA検査を受けて、はじめて異常を知ったという人も少なくありません。PSA検査の意味や、そもそもPSA検査自体を知らなかったという人、また泌尿器科なので恥ずかしい検査なのでは、と思っていた人もいて、当時を振り返り、PSA検査についてもっと啓発をする必要があると語る人もいました。
毎年の人間ドックで知らないうちにPSA検査を受けていた。定年前の最後のドックで見つかって幸運だったのかもしれない
自覚症状もなかったし、まだ60歳だったので、前立腺がんは自分には関係ないと思っていた。PSAについても知らなかった
PSA検査を知らなかった。発見が遅れて亡くなった人も知っているし、今では職場の同僚で年齢の高い人には受けるよう勧めている
前立腺がんについて全然知らなかった。泌尿器科は検査が恥ずかしいという誤解がある。どういう検査か分かれば、気軽に受けられるのでは
ふらつきが続いていたために受診した内科で、検査の際についでにPSA検査も勧められたので受けた
肺がんを疑ってがんセンターの呼吸器科を受診したとき、ふと思い立って隣の泌尿器科でPSA検査を受けたら、値が高かったので定期的に受け始めた
自分から希望してPSA検査を受けた人もいます。報道などで前立腺がんについて耳にし、不安を感じた人は、積極的に検査を申し込んでいました。また、かかりつけの病院で検診のポスターをみて、興味をひかれて受けてみたという人もいれば、同年代の身近な人との会話をきっかけに、軽い気持ちで検査を受けに行ったという人もいました。
前立腺がんは高齢者なら誰でもかかる病気だと不安に思っていたので、PSA検査の存在を知って、すぐに申し込んだ
かかりつけ医で前立腺がん検診のユニークなポスターを見て、PSA検査を受けてみようと思った
同窓会で前立腺がんやPSA検査のことを聞き、簡単だというので冷やかし半分にかかりつけ医で測ってもらったら、ごっつい高いと言われた(音声のみ)
グレーゾーンのとき
PSA検査では、一般に4.0ng/mlが基準値と言われ、4.0ng/ml以下を「陰性」、4.0ng/ml以上10.0ng/ml未満を「グレーゾーン」と呼んでいます。前立腺がんの確定診断のためには、前立腺生検が不可欠ですが、このグレーゾーンにあるときに、前立腺生検を行うかどうかは、前立腺の状態を診察(直腸診や超音波検査)し、その人の年齢や家族歴なども配慮したうえで、専門医によって総合的に判断されます。そのため、同じくグレーゾーンにあっても、前立腺生検を促される場合もあれば、そうでない場合もあります。ただし生検不要とされても、PSAによる定期的な観察を行うのが望ましいとされています。
なお、グレーゾーンのときに前立腺生検によってがんが見つかる確率(陽性率)は、およそ25~30%と言われています。PSA値は前立腺肥大などの良性疾患でも上昇します。逆に4.0ng/ml以下でも、がんでないとは言い切れません。測定時の年齢や、測定する施設によっても、基準値が若干異なる場合もあります。
このグレーゾーンという言葉を、どう受け止めたかによって、その後の対処は当然大きく異なっていました。軽く受け止めたと語る人もいれば、すぐに精密検査を受けに行ったという人もいます。軽く受け止めたという人の中には、あのとき医師から精密検査を受けるべき時期をきちんと示してほしかった、という人もいました。
健診時にオプション料金で安かったのでPSA検査を受け、グレーゾーンと言われたが症状もないので軽い気持ちで受け止めていた
グレーゾーンだからと安心し、気にしていなかったが、後から何か手当を要する重要な状況だったのかと思った(音声のみ)
定期的にPSAを測っていると値が段々上がってきたので、「おかしい、精密検査をやった方がいい」と自ら主治医に提案した
グレーゾーンといわれたが、定期的な検査の必要性がよく分からなかった。精密検査を受けるタイミングなど、医師から患者にきちんと説明してほしい
また、グレーゾーンのときに「がんと診断される確率は30%ぐらい」と聞いて、確定診断でなくても大きなショックを受けたと話す人もいました。
PSAが1カ月で2も上がった。医師から「がんと診断されるのは30%くらいだが生検を」と勧められたときには、頭が真っ白になった
PSA検査を受けたときに、すでに自覚症状があったという方の場合、その多くは排尿トラブルでしたが、身体のだるさ、痛みなど、排尿以外の症状を抱えていた人もいます。(診断前の症状については症状のはじまりと受診のきっかけのページをご覧ください)。
PSA検診の意義について
インタビューに協力してくださった方のほとんどは、40~50代になったら、早期発見のためにPSA検査は受けたほうがよいと言い、身近な人に検診を受けるよう勧めている人も少なくありませんでした。その理由に、初期には自覚症状がほとんどない怖さを挙げる人がいました。
周りには50歳以上になったら、PSA検診を受けるように勧めている。前立腺がんは痛みなどの症状が出ないから怖い。必ず受けた方がいいと思う
検診の実施の仕方については、集団検診に入れるべきだという人もいれば、家系に前立腺がんになった人がいるかどうかなど、状況に応じて受けるべき人は受けた方がよいという人もいました。過剰な検査や治療が行われる可能性を心配しながらも、やはり早期発見のメリットが大きいので検診を勧めたい、と話す人もいました。
PSA検診について議論されているが、低分化がんの人が2割いるのだから、ぜひ健康診断の中に入れるべきだと思う
前立腺がんの恐ろしいところは全く自覚症状がないまま進むこと。家系にかかった人がいる場合は若いうちからぜひ検査を受けた方がよい
検診は大事。過剰医療や精神的負担などのリスクもついてまわるが、患者にとって早期発見は非常に大きなメリットだと思う
検診でのPSA値を、早期発見に役立つ頼りになる指標だと考える人がいる一方で、基準値である4.0ng/ml以下でがんが発見され、指標としては限界があるかも、と疑問を口にする人もいたり、PSA値だけで前立腺がんだといじくりまわされている気がすると言う人もいました。また、PSA値は絶対の判断基準ではなく、注意を促すスクリーニングとして大きな意味があると語る人もいました。
PSA検査は腫瘍マーカーの中で一番頼りになる指標だ。健康な人も受けるのは大切だと思う
PSA値が4以降ならばがんを疑うというが、3すれすれでがんがみつかった。マーカーは必ずしもどんぴしゃりではないらしい
がんがどこにあるか、はっきり分かればいいのに。PSA値だけで「前立腺がんだ」といじくりまわしているような気がしないでもない
なお、現在わが国には、前立腺がん検診のあり方について2つのガイドラインがあり、それぞれ見解が異なっています。詳しくは以下をご参照ください。
厚生労働省がん研究班編・前立腺がん検診ガイドライン
日本泌尿器科学会編「前立腺がん検診ガイドライン2010年増補版(ダイジェスト版)


