手術療法

ここでは前立腺がんの外科的な治療に関する体験を紹介します。前立腺がんの手術には、下腹部を切開して前立腺を切除する方法(恥骨後式)、肛門の前方を切開して前立腺を摘出する方法(会陰式)、そして、腹腔鏡という機械を挿入して開腹せず内視鏡的に前立腺を切除する方法があります。手術を受けたインタビュー協力者の多くが、恥骨後式前立腺全摘除術を受けていました。その中には短期間ですが、術前にホルモン療法をしていた人たちもいました(ホルモン療法をご覧ください)。

手術を選んだ理由に、医師から手術を含む色々な治療に関する説明を受けたけれど、手術できるなら、手術でがんを取ってしまいたかったとか、医師に手術の方がいいと勧められたから、と話す人は少なくありませんでした。中には、手術が怖かったので、家に帰ると気持ちが揺らぎそうだったから、診断を聞いたその日に手術を受ける決心を医師に伝えたという人もいます。

小線源療法の後に手術はできないが、全摘した後でも放射線療法はできるので、手術で取ったほうがいいと思った

若いから手術のほうがいいのではないかと医師に言われ、自分も手術のほうがいいと思った

手術は怖かったが、完全に取れて、中がどうなっているかわかるのがいいと思い、その場で即決した

勃起神経温存について

前立腺を摘出する手術は、術後に性機能障害をもたらすことが少なくありません。すでに年齢を重ねていることや、子どもに恵まれ、役割は終えているという理由から、まあ仕方ないと割り切って手術を受けたという人たちもいましたし、夫婦で相談したうえで手術を決断した人もいました。一方で、可能ならば、勃起神経を温存したいと希望した人たちもいました。

術後の性機能障害について医師から説明を受けたが、がんを取り去ることを最優先したいと思った

手術でEDになるので夫婦で話し合うように言われた。ホルモン治療もあると言われたが、手術で取ってもらうことにした

術前に医師から尿失禁やインポテンツの話を聞いた。勃起神経を残してほしいと希望した

術前処置・検査と手術前の思い

インタビューに協力した人たちは、手術前の全身状態をチェックするため、心電図や胸のレントゲン、血液検査など全身の検査を受けていました。また、前立腺の周囲は血管が豊富な場所であり、多くの場合、輸血の可能性を考えて事前に自己血を採血します。ある人は800cc採血された体験を話しています。ある男性は糖尿病の持病があり、入院して血糖値を安定させたのち手術に臨んだそうです。この男性は、術後も血糖値が上昇してインシュリンでコントロールしたと話していました。手術前の不安として、手術自体は心配していなかったけれど、麻酔に対して不安があったと語る人がいました。また、手術前の不安には、医師に率直に不安だと話したり、決心した後にあまり手術の情報をいれないようにしたりして、対処したという人もいました。

術前検査で心電図に異常があり、心エコーと24時間ホルター心電図の検査をした。輸血に備えて自己血を800cc取った

手術前の医師からの説明では、手術時間や手術のリスク、麻酔のリスクなど怖い話ばかりされた

持病の糖尿病があったので、血糖値をコントロールして手術に臨むため、1週間早く入院した(音声のみ)

術前に一番心配したのは麻酔のこと。そのまま目が覚めないんじゃないか、脊髄に打つ麻酔で症状が残るのではと不安があった

手術前の不安は、主治医に率直に不安を伝え、「手術と決めたらもう勉強などせず医師に預けた方がいい」という友人のアドバイスをもとに対処した

恥骨後式前立腺全摘除術の実際

手術は麻酔がかかっているうちに行われるので、意識はなく、痛みも感じません。麻酔から目が覚めたときに安堵したと何人もの人たちが語っていました。術後数日は、発熱や、下腹部の傷の痛み、ガスが出なくてお腹が張った、便秘した、歩行するのが大変だったというような体験が語られていました。割合すぐに動けて、術後もしばらく背中から入っている硬膜外麻酔や痛みどめの坐薬のおかげで、痛みもなく楽だったという人たちもいました。

手術室に運ばれて、テレビで見たようなもんだと思っているうちに、スーッと意識がなくなった。意識が戻ったときは生きていると思って嬉しくなった

術直後は寒気がして、それから2日間くらい38度台の熱が出た

術後に腸の動きが徐々に回復していったが、ガスが出るまで5日くらいかかった。食事が始まったころ、力が湧いてきた

術後に喉の痛み、便秘、傷の痛みを体験した。自分の場合は尿道をつないだ部分が腫れてカテーテルを抜いた後、尿が出なくなった

手術した翌日から立って歩いた。自分では立てるつもりだったが、最初はふらついた。痛い時は必ず教えてくださいと言われ、薬で痛みはなかった

会陰式前立腺全摘除術の実際

手術を受けた人たちの中には1人だけでしたが、肛門の前方から前立腺へアプローチする会陰式の手術を選択した人がいました。前立腺までの距離が近いことや手術時間が短いことを選んだ理由として話していました。

手術の方法(会陰式)について、手術時間が短いと聞き、家族とも相談して決断した

内視鏡的前立腺全摘除術の実際

インタビューを受けた人の中には、内視鏡的な手術を受けた人が2人いました。内視鏡的な方法では、お腹に4~5ヶ所の小さい穴を開けます。そこから器具を挿入して、前立腺を摘出します。手術操作のときに腹腔内がよく見えるようにガスを注入しますが、1人の男性はその体験について詳しく話しています。この人は術後のお腹の状態についても話しています。もう1人の男性は、傷が恥骨後式や会陰式より小さいため、痛みが少なく回復が早かったと話していました。

腹腔鏡は試験的な形ではあったが、執刀医は経験があり、任せることにした。お腹に大きな傷がなく、術後の痛みは少なかった

腹腔鏡でおなかの中を見るため、ガスを入れてお腹を膨らませた。術後に少しずつガスが抜けていったようだ

おなかの傷は5ヶ所で、小さい傷だったので、痛みは少なかった

術後の後遺症

手術後に体験されている症状・後遺症の代表的なものとして尿漏れがあります。ほぼ改善したと話す時期は、術後1ヶ月から半年と幅広く、人によって異なりました。中には2年経った今でも尿漏れに対処が必要だと話す人もいました。また、多くの人たちが勃起障害を体験していました。術後数年経って下肢にリンパ浮腫が起きた人もいました。そのほか、脱腸を体験した人、手術でつないだ尿道の部分が細くなったためステンレスの棒(ブジーと呼ばれる)を入れて徐々に広げたという人、会陰式の手術を受けて、会陰部の痛みが持続しているという人、排泄のことでうつっぽくなってしまったという人もいました。これらの後遺症や症状とそのケアについては、術後後遺症で詳しく紹介します。

入院中の生活と周囲の支え

手術に伴う入院は、術式やその人の状況によっても異なりますが、インタビュー協力者の話ではおおよそ2~4週間の入院を必要としたそうです。4週間入院したという人は、保険の申請もあって、通常より長く入院したということでした。ある男性は、入院中したときの職場や家族からの支えについて語っていました。

入院中は、仕事の面では良い部下に支えられた。家族が毎日見舞いに来てくれたのは励みになった

手術後の経過

手術後にPSA値が上昇し、放射線療法やホルモン療法を受けた男性もいました。この人は前立腺を摘出したら、すっかり治ると思っていたので、どこにがんがあるのか分からず、理解に苦しんだそうです。

手術して前立腺を取り除いたら、がんはなくなるし、PSA値も上がることはないと思っていたので値がなぜ上がるのか理解できなかった

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