患者本人への影響

本人にがんの告知をするのは、たやすいことではありません。告知されたときのことを思い起こし、思いやりのある優しい告知だったという人もいれば、少しぞんざいに診断結果を告げられたように思ったという人もいました。ある男性は、診断結果を電話で知らされて、ひじょうに大きなショックを受けました。告知にあたって、なるべく穏やかに話を切りだそうとしてくれた医師もいましたが、ほとんどの患者は、程度の差こそあれ、ショックと不信感を抱いたと言っています。

自分のPSA(前立腺特異抗原)値が高いことは以前から知っていたものの、まさかがんという診断が下されるとは思ってもいなかった、という患者もいました。ある患者は、自分の気持ちは他人にはわかってもらえないだろう、という孤独な心境を語りました。別の患者は、自分ががんだと知って、まずは最善の治療方法を探そうと必死になったのだと言いました。この患者が多少なりとも落ち込んだのは、もっと後になってからのことでした。がんという診断に伴なう経済的問題について、とりわけ不安を抱くであろう妻や家族のことを、とても心配していた患者たちもいました。

ある患者は、診断結果を聞いてから二週間くらいは、自分ががんであることを受け入れることができず、耐えがたい思いだったと語りました。けれども、最初にがんだと診断されたとき、治る可能性があると楽観的に考えていたという患者たちもいました。いつまでもはっきりしないより、的確な診断が得られる方がましだと考えたのです。長年PSA値が高かったある患者は、最終的に診断結果を聞いたとき、事態を冷静に把握できたと話しました。また、別の患者は、信仰を持っていたおかげで、死というものを直視できたということです。

さまざまな治療による副作用も、患者の生活に影響を及ぼしました。治療のせいで疲れきってしまったと話す患者も、何人かいました(「エネルギーの欠乏」を参照のこと)。

ホルモン療法の影響で男性らしさに変化があった、と話した人も何人かいました。ホルモン療法をしなかった患者の大半は、性機能の減退があったとはいえ、そういった男性らしさに変化があったとは言いませんでした。それに対して、長期のホルモン治療を受けた患者たちは、セックスに関心がなくなったとか、身体的にも心理的にも変わってしまったように感じたと報告しています。つまり、ホルモン療法が男性らしさに影響を与えたと感じたのです(「インポテンス」を参照のこと)。

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