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大腸がん検診の語り

便潜血陽性は6~7%なのでかなり絞り込まれている。偽陽性が出ることもあるが、それが痔のためなのかどうかを確かめるためにも大腸内視鏡による精密検査を受けて欲しい

便潜血検査と痔の関係ですね。確かに痔からの出血でそれを拾うこともあるかもしれません。ただ、100人受けてそのうち6~7人ぐらいの陽性率なんですね、便潜血検査は。実際に内視鏡をやっておりますと、大なり小なり痔を持っていらっしゃる方はもっと多いので、必ず痔があれば陽性となるわけでもありませんし、痔の治療をなさる場合には、だいたいどこの痔の専門病院でも、腸のほうに病気がないかどうか、本当に痔の出血だったかどうかということを確認するために大腸内視鏡検査を行って、その痔の治療をすると。あるいは、痔の治療をしたあとに大腸内視鏡検査を必ず行うようにしております。
だから、どちらから出たのかというのは便を見るだけではわからないので、必ず便潜血検査が陽性であれば、痔だけじゃなくて、肛門だけじゃなくて腸のほうにも出血原因がないかどうかを調べる必要は必ずあります。そのとき陽性と出て、自分は痔を持っているから痔だと自己判断せずに、やはり検査を1回はお受けいただいて、そこで腸に何もないというのを確認したら、痔だったかもしれないということになるかもしれません。ただ、やっぱり必ず、痔を持っていても大腸の検査は受ける必要がありますので、ぜひそのへんはしっかり考えてお受けいただきたいと思います。

大腸がん検診の語り

大腸がんはある程度大きくなると潰瘍を形成し、そこから出血する。そうなると便に血が混ざるようになり、便潜血検査で陽性となる

まず、実際に腸の中を見る検査としては内視鏡検査、あるいは注腸検査――バリウムを肛門から入れて撮るエックス線検査、それからCT。今は3DCTといって、腸をきれいにして、そのあと炭酸ガスを入れて撮る。
そういった検査があるわけなんですけれども、それをすべての方に検査をするというのは大変ですし、処理能力的にも不可能であると。それから、受ける方も結構大変なわけですので、やはり危険因子のある方を対象に拾い上げて検査をするというのが、(対象となる方々の)死亡率を下げる(施策としてのがん)検診の目的です。
なぜ便潜血検査というのを行うかといいますと、ある程度大腸がんというのは、少し大きくなってくると、表面がただれてきて少し潰瘍(かいよう)を形成してくると。そうしますと、便に血が混じりやすいということで、便に混じった血液を調べることでがんの危険因子があるというふうに判断して検診を行うという方法なわけです。ただ、実際に定量値で見ていくわけなんですが、ある程度の一定の量が入っていると、それを陽性というふうに判断しています。

大腸がん検診の語り

大腸がんは症状が出てから受診しても遠隔転移がなければ助かる率は高いが、便潜血検査を受ければ転移を起こす前の段階で見つかる可能性が高くなる

大腸がんになってそれなりの症状が出てからでも、検診を受けなくてもいいんじゃないかと、症状が出てから医療機関を受診しても助かるんじゃないかというお考えがあると思いますけれども、症状が出てからでも助かる方もいらっしゃいます、確かに。大腸がんというのは基本的には胃がんや食道がんに比べまして、生命予後――少し進行していても助かる可能性というのは非常に高いです。
進行がんでも転移がない方は助かるんです。非常に救命率が高いです。肺とか肝臓への転移がない方は、それでも7~8割の方は助かるわけなんですけれども、いったん肝臓とか肺に遠隔転移を起こしてしまいますと、救命率というのはぐっと下がって、5年間の生存率はそれで見ますと2割に落ちてしまうと。そこが大きなギャップになっているわけです。だからその前に見つける必要があると。
進行がんでも、転移を起こす前に見つけるというのが大切なところなんですね。そこに便潜血検査という、大腸がん検診というのが重要であるということになっていきます。だから、進行がんになってしまいますと表面がただれてきて潰瘍(かいよう)を起こしてきますので、貧血が起こったり……出血ですね、便に血が混じる。それが持続していると。それから閉塞してきますと便が出にくくなる。おなかが張ったりとか、便がほとんど出なくなるという症状が出てくるということになります。そういった状況になりますと、結局、肺とか肝臓に転移しているがんが多くなるということです。
それで、そのような症状が出る前の、できれば進行がんでも転移を起こす前のがんで見つけるというのが、この便潜血検査の大事なところであるということになります。何も便潜血検査はポリープを見つける検査でもありませんし、早期がんを見つける検査でもないんです、実は。その人の救命というのを考えますので、そういった転移を起こす前の、進行がんになる前の状態で見つけるというのがこの便潜血検査の大事なところになります。

大腸がん検診の語り

大腸に症状が現れる病気はいろいろあるが、がんで便が出にくいとかおなかが張るといった症状が出るまでには、がんがかなり進行してしまっている

大腸の症状といいますか、便秘とか下痢とかそういった症状というのは個人差が一つあると。一つは、いろんな病気があって症状を起こす場合もありますけれども、やっぱり食べた物、それから、精神的なストレスを受けて下痢をしてしまったりとか機能的なことのほうが多いわけです。腸の動きとか動きのバランス、それから吸収のバランスが崩れるとやっぱりいろんな症状を引き起こしてしまうということのほうが多いように思います。
実際に大腸がんができて、腸の壁にできるわけなんですけれども、かなり大きくなって腸の中を詰まったような状態まで大きくなった場合に関しては、便が出にくくなったりとか、おなかが張ったりという症状が出やすいと思います。それだけ大きくなれば、だいたい表面がただれてきて潰瘍(かいよう)を起こして、そういったがんっていうのはかなり根を張ってきているがんですので、それを進行がん、典型的な進行がんということになってまいります。ですから、それだけ大きくなってからやっと初めていろんな症状を起こす場合も多いので、小さい大腸がんができても症状はなかなか出にくいというのが現状です。

大腸がん検診の語り

症状が出てから受診する人には命に関わるようながんが見つかることが多い

実際に診療を行っておりますと、便潜血検査で陽性となって来る方が多いんですが、やはりいろんな医療機関から精密検査を依頼される方の中には、やはり症状が出てから、いろんな貧血が少しずつ出たり、便秘になったり、おなかが張ったりとかして医療機関を受けて、その精密検査として受けに来る方がいらっしゃいます。そういった方に非常に進んだ、命に関わるような大腸がんが見つかることが多いということをよく経験いたします。検査を行っておりますと、非常に進んだ大腸がんが見つかるというか、発見する機会が多いというのが現状です。

大腸がん検診の語り

食生活の変化で大腸がんは増えている。大腸がんになる人は男性のほうが多いが、臓器別の死亡率では女性のがん死亡率の1位を占めている

わが国では食生活の欧米化、肉食が増えてきているということから、これは明らかになっていますけれども、大腸がんは増えてきていると。現在のところ、1年間に大腸がんにかかる方が10万人。それから、大腸がんで亡くなる方がその半数の5万人と、じわじわとずっと増え続けてきているというのが現状です。特に男性・女性で比較しますと、男性のほうがやはりがんの罹患率は高いわけなんですが、臓器別のがんの死亡率を見ると、これは2012年のデータですけれども、女性では死亡率の第1位、男性では3位というデータがあります。だから、徐々に死亡率の上位を占めてきているというのがこの大腸がんであります。