障害のある人や当事者団体とのかかわり

自分と似たような障害のある人との出会いは、自分一人ではないと孤独が解消されたり、体験に基づく情報を教えてもらったりと、様々な意味を持ちます。インタビューでは子どもの頃から様々な場で自分と似た障害のある人と交流があった人もいましたが、ここでは大学やそれ以降になって、自分自身で人間関係を築く中で、似たような障害のある人と出会った体験について取り上げました。

似た体験を持つ人と出会った時の思い

それまで自分と同じような障害のある人が身近にいなかった人の中には、似たような障害のある人に会ったことで、素直に嬉しいと感じたり、自分一人ではないという思いになったりした人がいました。その一方で、必ずしも同じような障害のある人との交流を望まない人もいて、その出会いの意味は様々です。

次の聴覚障害の女性は、大学で、聞こえる人たちの中で育った聞こえない人と会ったり、手話を覚えたりしたことが、大きな転機になったと話していました。

中学生の頃にがんと診断された女性は、何となく病気のことは人に言ってはいけないことだと感じていました。しかし、18歳の時に患者会に初めて参加し、病気についてオープンに話す人たちに出会ったとき、びっくりしたことを話していました。

筋ジストロフィーで肢体不自由の男性は、同じ病気の年下の人に会うことで自分の心に様々な動きがあったことを感じていると話しています。

また、この男性は、自分の病気について研究する研究者になり、海外の同じ病気の患者に会う機会もあることを話しています。

自分と違う障害であっても、障害のある人との出会いが、その後の生き方に大きく影響することもあります。当事者の立場から障害学生支援を続けている車椅子の男性は、大学時代に障害を持ちながら教職を取った人の話を聞いて、自分も教職を取ることにした話をしていました。

中には、同じような障害のある人同士が交流できる場を、自ら立ち上げた人もいます。次の聴覚障害の男性は、理系の学生が議論できる場が欲しかったので、大学を越えた場作りを行ったことを話していました。

同じような診断の人たちの集まりに出かけてみたが、その場が合わないと思った人もいます。次の発達障害の男性は、交流の場に出かけてみたが、帰りたいという思いを持った体験を話していました。

次の内部障害の女性も、自分の病気の患者会に出かけてみたときの話をしています。

自分にとって心地いい形でつながるなど、付き合い方の工夫について話した人もいました。大学在学中に脊髄損傷で車椅子になった男性は、同じ脊髄損傷でも年齢や損傷部位によって体験は様々なので、自分に当てはまるところを参考にしているという話をしていました。

似た体験を持つ人からの学び

似た体験を持つ人と交流することを通じて、自分の障害や病いに対する理解が進むことや、日常的に生活を送る上での実践的な技術や知識を学ぶことはよくあります。

次の発達障害の女性は、在学中に大学の発達障害の人のためのグループワークに参加し、自分自身に対する気づきを得て、具体的なコミュニケーションの方法などが参考になったという話をしていました。

聞こえる人の中で育った次の聴覚障害の女性は、大学でろう者の先輩に会い、学生支援の仕組みを教えてもらい、同時に手話を習得して、徐々に人との関わりを学んでいったという話をしていました。

診断が出ていないけれど不調がある人は、同じ障害や病名の人とはつながりにくいかもしれません。しかし中には、世代や診断は違うけれど、似たような症状を抱えている人の様子を知ることで、気持ちが変わることがあります。

長く診断名が分からず、症状が出てから8年後に線維筋痛症と診断された女性は、痛みの緩和のために通っていたプールでの高齢者との出会いについて話していました。

自分の体験が他の人の役に立つこと

他の障害のある人とかかわることは、一人ではないと思えたり、具体的に何かを学ぶことになったりするなど、人から与えられるだけにとどまりません。中には、障害や病いのある自分の体験が、他の人の役に立つことも考えられます。

もともと体験を発信しようとは思っていなかったという次の内部障害の女性は、体験を積極的に発信している人と会って、思いが変わったことを話していました。

次の内部障害の男性は、看護職として働きながら、自分の体験を活かせるのではないかと思い、障害や病いのある当事者の団体と関わり始めたことを話していました。

また次の内部障害の男性は、患者会に行ってみたら、似たような病気を抱える子どもの親に会うことになり、自分のことを話していくのが大事だと思ったという話をしていました。

子どもの頃から吃音の自助会に参加していた男性は、大学生になってからは自助会のスタッフとして、小中高生や子どもが吃音をもつ親たちと話す機会を得ていることを次のように話しています。

障害当事者としての自分自身を考える経験

障害や病いのある自分自身は何者かと悩んだ時に、直接すぐに答えが出なくても、他の障害のある人たちの存在が、考えるヒントをくれることがあります。
在学中には診断が出ていなかった次の内部障害の女性は、自分自身を受け入れるのに、他の障害のある人の存在が影響したと話していました。

大学でろうの先輩に会った難聴の女性は、先輩のように全く聞こえない人の仲間になりたいと思いながらも、それが難しいと感じたことを話していました。

一人暮らしの準備をする過程で初めて障害のある人とかかわった車椅子の男性は、障害のある人に出会ったことが、自分自身を見つめなおすきっかけになったと話していました。

2021年11月公開 2022年4月更新

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