ベッカー型の筋ジストロフィー患者の寺島さん(仮名)は、現在2名の男性介助者の援助を受けながら地域で生活している。
大腸がん検診は、行政から届くがん検診の案内の中に入っている。けれども、怖いという気持ちと共に、自分はがんにはならないだろう、という思いもあって受診したことはない。医療機関には、筋ジストロフィーの診察で2か月に一度通っており、詳しい検査は1年に一度受けているが、そこでも特にがんのことは言われたことはない。
ただし、以前ボーエン病という皮膚がんの手前、と言われる病気にかかったことはある。最初は特にぶつけたわけではないのにかさぶたができた。10年ほど放っておいたら、そのかさぶたが大きくなってきたので病院に行き、そこで診断された。でも、それを聞いて「もう終わりかな」とは思わなかった。自分は大丈夫だと思っていたのだと思う。そのままにしていると血液の中にがん細胞が入り手遅れになると聞いたが、そうはならなかった。
大腸がん検診は受けたことはないが、痔になったときに内視鏡検査を受けたことはある。肛門から内視鏡を入れて痛い検査だと思ったが、筋ジストロフィーの場合検査に適した姿勢を取るのが難しい場合がある。自分の場合はうつぶせにはなれない。また、同じ姿勢を保つのも結構きつい。検査の時には介助の人は外にいて、特に看護師の助けもなかったため、自分で我慢して受けた。障害が進行すると、検査を受けること自体が困難になるのではないかと思っている。
今はレントゲンも車いすのまま受けることができるようになって医療技術の進歩はあるのだろうが、特に入院生活などで介助の不十分さを感じることは多い。完全看護だからという理由で介助者が一緒に入院できず、一方で看護師は障害の専門家ではないために障害者のケアがわからない状況がある。言葉障害があったり、コミュニケーション上の問題があれば介助者が入れるが、筋ジストロフィーのように言葉を発することに特に困難がない場合には、こうした問題が起こってくる。
それが筋ジストロフィーの患者を医療機関から遠ざけているかはわからないが、肺炎などの普通の病気がきっかけで命を落とす場合もある。患者はそういったことは知っているので気をつけて生活しているが、一般的に検診などはやはり受けた方が良いのだろう。