大腸がん検診の語り

インタビュー28:プロフィール

東海地方で暮らす藤川さん(仮名)は、現在、妻と二人暮らし。結婚して近くに住む息子と娘がいる。藤川さんは36歳のときに胃がんと診断され、手術を受けた。当時、海外に赴任していた藤川さんは、1年に1度、日本に帰国して受けていた人間ドックの検査で異常が見つかる。末期に近い胃がんだった。当時、がんの告知は今ほど行われていなかったが、家族が海外にいるということで、藤川さん本人に直接告知がなされた。術後1ヶ月は非常に辛かったが、それでも体調は次第に回復し、2~3年後には1人前の食事を食べられるまでになった。
手術から3年ほどは再発の不安もあったが、5年が経過した頃からはそのこともあまり気にならなくなっていた。しかし、「もうがんを忘れていた」59歳のとき、今度は大腸がんが見つかってしまう。そのきっかけは下血だった。藤川さんは当初、痔によるものだろうと考え、1ヶ月ほど放っておいたが、やはり気になったため、人間ドックを受診した。そこで検査をしたところ、大腸がんであることが判明した。
思い返せば、マラソンのタイムの低下や体重の減少(普段ほとんど変わらない体重が2キロ減った)、ときおり感じる強い痛みなど、幾つか体調の変化はあったが、食事も普通にできていたし、下血に気づくまでは特にこれといった症状はなかった。
便潜血検査を受けたのはこのときが初めてだった。便を調べるだけの検査ということを知り、「こんな簡単なことは、いろんな検査のときにみんなやればいいのに」と思った。内視鏡検査については、多少の恥ずかしさはあったものの、既に異常の疑いがあったので、「やらないとしょうがない」という気持ちだった。
胃がんの手術後は大変苦しい思いをしたが、大腸がんの手術後は痛みもなく、医学の進歩を感じた。退院後も、泳いだり、ランニングをしたりと、普段の生活でそれほど不自由を感じることはなかった。
大腸がんの術後は、病院で定期的に検査を受けている。また、血圧と体重を毎日測定し、記録をつけるなど、自分でも普段の生活から、体調に異常がないか注意している。そして、もしおかしいと感じることがあれば、すぐに病院に行くようにしている。実際、おしっこの色がいつもと違うので受診したところ、膀胱にがんが見つかったこともあった。
便潜血検査では、がんでない人でも陽性反応が出ることがあり、そのことで「がんかもしれない」と不安になるデメリットもあるが、費用もそれほどかからないし、なにより早期に発見すれば治る確率が高い病気なので、検査は受けた方がよいと思う。がんと宣告されることが怖くて検査を受けない人もいるかもしれないが、早く見つけて治療をすれば、それほど変わりなく生活することができる。がん患者を「普通の人じゃない」と見なす世の中の風潮がなんとか変わることを願っている。