大腸がん検診の語り

インタビュー36:プロフィール

関東地方で暮らす山下さん(仮名)は現在、夫と二人暮らし。近くに住む娘が一人いる。山下さんはこれまで二度、大腸がんの診断を受けている。一度目は60歳のときであった。その3年ほど前から、便秘や下痢、便が細くなるなどの自覚症状があり、がんかもしれないと思ったが、受診せずに放っておいた。自分の母親がちょうど同じ60歳のときに胃がんと診断され、全摘手術を受けたが、その後、転移を繰り返しながらも90歳まで生きた。そのこともあり、「がんになったらなったときのことだ」という考えがあったからである。しかし、医療者の親類から受診を強く勧められ、仕方なく検査を受けたところ、初期のがんが見つかり、内視鏡で切ってもらった。
内視鏡による手術ということもあり、体への負担もほとんどなかった。術後、一度だけ検査を受けたが、その後はずっと「ほっぽらかし」の状態だった。しかし、最初の診断から10年経った頃にひどい下痢と出血があり、病院を受診したところ、がんが見つかってしまう。親指大に大きくなっており、その場で切除はできないということで、入院して手術を受けた。また、このとき潰瘍性大腸炎も見つかった。がんについては、既に70歳を過ぎていたこともあり、「まあいいわ」とあまり気にしなかったが、潰瘍性大腸炎は原因も分からず、しかも全腸性ということで、こちらの方が山下さんにとっては深刻な問題であった。
二度目の大腸がんの診断を受けた後は、潰瘍性大腸炎のこともあり、一年に一度は内視鏡検査を受けなければならないと言われている。しかし、近くの大きな病院で二度検査を受けたが、いずれも痛くて入らず、結局最初に通っていた遠方の病院に移って内視鏡の検査を受けている。
検診については、コレステロールや中性脂肪など、日常的に気をつけておかなければいけないものについては自治体の検査を受けているが、がん検診は受けたことがない。もちろん、検診を受けて安心できるという人は受ければいいと思っている。しかし、高齢になってからのがんに関しては、手遅れのものは手遅れだし、そうでなければ、治療をしないでそのままにしておいてもがんで死ぬより、寿命の方が先に来るかもしれない。むしろ、積極的に治療をして、入退院を繰り返したり、抗がん剤の副作用で苦しんだりするよりは、徐々に弱っていった方がいいのではないかと思っている。
また、若い人の検診については、小さながんが早期に発見されて治ったと喜んでいる人もいるが、もしかしたらそのがんはそのままにしておいても進行の遅いがんかもしれない。実際、自分の周囲にも、若い頃に子宮がんと診断されたが、手術を拒否して、今も元気に暮らしている友人がいる。また、がんが見つかっても、若い人の場合、進行が早く、あっという間に亡くなってしまうケースが多いとも聞いている。したがって、医療者や予防医学に対しては申し訳ないが、若い人にとってがん検診がそれほど有効であるとは思えない。