関東地方在住。内野さん(仮名)は大学教授として多忙な日々を過ごしている。年齢を意識し始めた頃より、人間ドックを定期的に受けている。受診先は自宅近所の病院で、便潜血検査は受けずに、胃・腸カメラ(胃・大腸内視鏡)を用いた最新技術による検診を毎回実施している。
現在の病院で検査を受ける以前は、勤務先の大学より勧められた病院で人間ドックを行っていたが、バリウムを飲むのがとても苦手だった。そこで、家族から自宅近所の病院を勧められ、大腸の治療に関する実績もあり、設備も整っているということで、検診を受けたところ、非常に楽に終える事が出来た。カメラを体内に挿入される違和感は感じるものの、鎮静剤を打たれて意識が遠のいているため、それほど辛くは感じられない。また、自分でカメラを見て説明を受けられ、ポリープが見つかればすぐに切除してもらえるため、安心して受診している。実際に、2005年にポリープが見つかり、事前に伝えてあったとおり、その場で切除した。大学での自身の専門分野も影響し、検査はなるべく最新技術を取り入れたものがよいと考えている。
大腸の検診に対する意識が高まったことは、大学生の頃より何度か血便が出たり、ときどき腸のあたりが痛むことが要因となっている。そのたびに病院に行き、異常は見られないと診断されていたが、長い間気になっていた。そこで、現在の病院での定期的な受診を行うようになった。
また、亡くなった父親のがん経験も影響している。父親は前立腺・膀胱がんの治療を行って一度は回復したが、体調を崩し病院で検査を受けたところ、盲腸がんの末期状態であった。なぜその状態になるまで見つけられなかったのか疑問に思い、尋ねたところ、長い間市が実施している検便検査を「面倒だから」という理由で行わずに過ごしてきたということだった。
そうした経験もあり、大腸がんだけでなく他のがん検診についても定期的に受診している。大学の業務が忙しいため、十分な健康管理を行っているとは言えないが、からだの事は常に意識の中にはある。自身の年齢も配慮すると、受診すべき項目はしっかり受診すべきだと考えている。
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森さん(仮名)はフリーの編集として働いているが、2006年に多発性硬化症と診断され、闘病しながらの生活である。若い頃2年間出版社に勤めており、その時の保険は共済だった。会社が倒産したのを機にフリーの編集者に転じ、国保に加入した。地域の健康診断に便潜血検査を付け加える形で長い間受けてきた。しかし2001年ころから歩きにくくなり、2003年に脊柱管狭窄症と診断され、手術を受けた。この頃は歩けたので3年ほどは受診していたと記憶している。その後に、多発性硬化症になり、歩行困難になってからは受けていない。
多発性硬化症は急激に悪くなることはないが、少しずつ進行する病気であり、さまざまな神経に影響を及ぼす。大腸がん検診に関連することとして、病気で便秘しがちなため二日連続で便が取れる確証がないので、便潜血検査を受けにくいことが挙げられる。また歩行にも時間がかかるので、検診を受け、検診キットを戻しに行き、結果を後日聞きに行く、と3回通院しなければならない検査はとても受けにくい。また、今罹っている病気に対処するだけでも大変なのに、あえて検診を受ける動機を持つことは難しい。
森さんの父親ときょうだいはリンパ肉腫で他界している。免疫システムの異常が自分には多発性硬化症という形で出てきたので、リンパ系のがんには罹らないだろうという思いもある。ただ、同じ神経の病気でも筋萎縮性側索硬化症という病気は比較的早く亡くなってしまう。パーキンソン病のように長く患うのも大変だが、余命が短い患者さんたちと一緒に入院していた経験から感じるのは、がん検診を受けるかどうかという対象から自分たちははずれているのではないか、ということだ。むしろ健康と難病の間にいる人たち、例えば糖尿病で自己注射している人や変形性膝関節炎で歩けない人などが、いわゆる「検診弱者」に入るのではないかと思っている。もちろん、地方の交通の不便な場所に住んでいて買い物が不便なのと同じように、医療にアクセスしづらい「検診弱者」もいるだろうが、都市に住んでいてもフリーターやアルバイトなど会社での一般的な健診を受けられない人々も「検診弱者」なのではないかと思う。
早期発見できる病気については予防策を講じるべきだと考えているので、検診のシステム自体は必要だと思うが、地域の検診システムの不合理を感じることもある。65歳を過ぎて、特定健診、がん検診に加え、うつや認知症を対象とした日常生活についてのアンケート調査が行われた。しかし、自分が身体障害者であるという情報が実施主体内部で共有されていないため、転倒の経験があり不安もある、と答えると「運動しましょう」という答えが返ってきた。民間に委託して実施した調査のようだったが、そのことがかえって情報を共有しづらくしているのではないだろうか。がん検診が受診者にとって受けやすいシステムになっていないことは問題だが、行政の予防施策全体における不合理も気になる。
神経の病気では医療者に恵まれたと思っているが、この病気が診断される前に通っていた開業医に1年間全く診療をされないまま牽引をされ続けた経験がある。結局、医師をしている姉に相談して病院を変えたが、住民のもっとも身近にいる地域の医療者は、症状の裏に隠れている病気を的確に判断してほしいと願っている。
村岡さん(仮名)の在住する市では、大学と協働して市民の健康診断を行うとともに大学に医学研究のための血液や尿など様々な情報を提供するNPO法人によって「0次予防(0次健診)」を実施している。この健診(0次健診)の検査項目は特定健診(40歳以上74歳未満の公的医療保険加入者が対象となる)を含む幅広い項目を網羅しているが、便潜血検査は含まれていない。
村岡さんは結婚して、この市に転居してから0次健診を一度受けたが、それまで自営業を営んでいたため、子どもの頃検便はしたものの便潜血検査はこれまで受けたことがない。0次健診は無料で受けられるが、村岡さんにとって魅力だったのは託児がついていたことだった。託児も無料だったので同世代の友だちも受けていた。子どもを預けてまで、しかも一日かけて健康診断を受けるのはハードルが高いので、こういったサービスはとても良いと思う。最近は豪華な人間ドックがあるようだが、若い人たちにとって重要なのは「安近短」というか、気軽に受けることができるという点だと思う。夫も毎日忙しい。日曜日の休みには病院も開いていないし、会社で健康診断をしてくれれば良いが、そうではない立場の人たちは受けるのが難しい。若い人の多くは忙しいし、自分は健康だと信じているので、時間をわざわざ作る気にはならないのではないだろう。
がん検診は自分にとってはまだ先の話だが、乳がんや子宮がんは大腸がんに比べると身近に感じている。妊娠した時に子宮がん検診を受けたし、乳がん検診はまだだが、ピンクリボンのキャンペーンや女性下着メーカーのPRなどをよく目にする。文章を読まなくても、見てわかるようなアピールだった。大腸がん検診が便の検査だということは知らなかったし、そこで陽性になったらどういった検査をするのかもわからないので、知る機会があっても良いと思う。
民間の医療保険は生命保険の特約で付けているが、お付き合いで入ったので、いまあまり詳しい内容は思い出せない。夫の方が死亡の保証が厚い保険にし、自分は病気をカバーできるものにしている。健康のために何をしているかと言われれば、食生活を充実させることである。発酵食品は体に良いと聞いたので、地元に伝わる発酵食品を作ったり、手作りの納豆にも挑戦したい。早期発見は早期治療に結びつくと思うので、チャンスがあればチェックしていきたいと思っている。
ベッカー型の筋ジストロフィー患者の寺島さん(仮名)は、現在2名の男性介助者の援助を受けながら地域で生活している。
大腸がん検診は、行政から届くがん検診の案内の中に入っている。けれども、怖いという気持ちと共に、自分はがんにはならないだろう、という思いもあって受診したことはない。医療機関には、筋ジストロフィーの診察で2か月に一度通っており、詳しい検査は1年に一度受けているが、そこでも特にがんのことは言われたことはない。
ただし、以前ボーエン病という皮膚がんの手前、と言われる病気にかかったことはある。最初は特にぶつけたわけではないのにかさぶたができた。10年ほど放っておいたら、そのかさぶたが大きくなってきたので病院に行き、そこで診断された。でも、それを聞いて「もう終わりかな」とは思わなかった。自分は大丈夫だと思っていたのだと思う。そのままにしていると血液の中にがん細胞が入り手遅れになると聞いたが、そうはならなかった。
大腸がん検診は受けたことはないが、痔になったときに内視鏡検査を受けたことはある。肛門から内視鏡を入れて痛い検査だと思ったが、筋ジストロフィーの場合検査に適した姿勢を取るのが難しい場合がある。自分の場合はうつぶせにはなれない。また、同じ姿勢を保つのも結構きつい。検査の時には介助の人は外にいて、特に看護師の助けもなかったため、自分で我慢して受けた。障害が進行すると、検査を受けること自体が困難になるのではないかと思っている。
今はレントゲンも車いすのまま受けることができるようになって医療技術の進歩はあるのだろうが、特に入院生活などで介助の不十分さを感じることは多い。完全看護だからという理由で介助者が一緒に入院できず、一方で看護師は障害の専門家ではないために障害者のケアがわからない状況がある。言葉障害があったり、コミュニケーション上の問題があれば介助者が入れるが、筋ジストロフィーのように言葉を発することに特に困難がない場合には、こうした問題が起こってくる。
それが筋ジストロフィーの患者を医療機関から遠ざけているかはわからないが、肺炎などの普通の病気がきっかけで命を落とす場合もある。患者はそういったことは知っているので気をつけて生活しているが、一般的に検診などはやはり受けた方が良いのだろう。
首都圏在住の小林さん(仮名)は現在会社員の夫と息子の4人家族。フリーで編集者・ライターをしている。これまで大腸がん検診は一度も受けたことがない。
国民健康保険に加入しており、自治体が行う健康診断は毎年受けている。ただ、その項目に大腸がん検診は入っておらず、別にがん検診があり、自分で病院に連絡をしなければならない。胃腸系のトラブルもなく、自覚症状もないため、わざわざ申し込んでまで検診を受けようとは思わない。
乳がんと子宮がんの検診は割としっかり受けている。住んでいる地域では、2年に1回、これらの検診を無料で受けることができる。こちらも大腸がん検診同様、自分で病院に連絡しなければならないが、周囲に乳がんや子宮がんを経験している友達や知人が多く、中には若くして亡くなった人もいるため、婦人科系の病気には気をつけている。逆に、知り合いで大腸がんになった人はいない。もうひとつ、昔怪我をした息子に付き添って行った病院で、たまたま乳がんの検診を受けたが、「乳がんかもしれない」と言われた。大きな病院で超音波検査をしたところ、乳がんではなかったが、今後の経過をみた方がいいと言われたことも、乳がん検診を積極的に受けることと関係している。
大腸がんについては、若い人や女性はあまりならないというイメージがある。また、乳がんや子宮がんは早期に発見しないと命に関わるという恐怖感があるが、大腸がんや胃がんに関しては、自覚症状が出てから治療をしても間に合うのではないかというイメージがある。実際、胃がんで胃の3分の1を切除した親類もいるが、その後も普通に食事ができるまでに回復している。そのため、あまり検診を受けることのメリットが感じられない。
昔、胃がんについて読んだ本の中に、検診を受けて早期に発見しても、進行した状態で見つかって治療した場合と寿命はそれほど違わないと書いてあり、だったら早い段階で病気が分かって色々と思い悩むより、がんと診断されてから治療をしても、不安に思う期間が短くて済むのではないかとも思うようになった。加えて、検査を受けた翌月に胃がんで亡くなった知り合いがいて、検診を受けても必ずがんが発見されるわけではないということも、検診を受けないことに影響していると思う。
ただし、大腸がん検診を積極的に受けないわけではない。実際、自治体の健康診断に入っていれば、あえて拒否することはないと思う。項目に入っていないので、たいしたことないのかも、と思ったりもする。夫が会社で受けている健康診断には便潜血検査が含まれており、メニューが充実していると思う。
今回、このような話をして、次にチャンスがあれば大腸がんの検診を受けてみようかと思うが、やはり辛い検査は嫌だ。いきなり内視鏡検査をやるわけではないが、夫が内視鏡検査を受けた際、麻酔が強すぎたのか、なかなか目が覚めなかったという経験があり、結構怖いという印象を持っている。
大腸がん検診は浅田さん(仮名)の職場の定期検診の中に入っていないので、受けていない。あえて避けていたというわけではなく、受けるチャンスがなく、そのまま今に至ってしまった。家族や友達から強く勧められたこともない。大腸がん検診は便潜血検査なら検便するだけなので、体への侵襲性もないし、延命につながるという話も聞いたことがあるので受ける価値がある検診だとは思っている。国からの強制には抵抗があるが、職場関係の人に受けてほしいと言われれば、受けたかもしれない。年齢的にもがんの好発年齢であり、受ければ見つかる可能性も高くなるだろうから、これから先は受けるかもしれない。
けれども、相手はがんなので、早期発見すれば必ず助かるというものではないだろう。便潜血検査をした人の方が長生きできるといっても、自分にそれがあてはまるとは限らない。検診をしなければ死んでしまう、受けたら生きられるというのなら、多少無理してでも受けるだろうが、それほど劇的な効果はないと思っている。
また、大腸がん検診のデメリットをあげるとすれば、偽陽性の際の不安感と、精密検査で行われる内視鏡検査の侵襲性だろう。内視鏡検査で苦しい思いをしたり、死んだり、という可能性は若干のデメリットなので、そのことで気が重いのかもしれない。自覚症状が出てから病院に行って、手遅れであれば手遅れで、手遅れでなければ助かる、それでいいという気もする。治療についても、完治を目標に無茶な手術やがん剤治療をしたいとは思わない。便秘になるなどの通過障害で苦しくなったら、それを通すための手術はしたいが。
がん検診一般に対する不信感もある。大腸がん検診はエビデンスのある優等生といわれているが、他のがん検診の中には過大評価されているものもある。検診を受けて1人でも助かればそれは良いことであり、積極的に勧めていく、というのは科学的な態度ではないと思う。限りある医療資源を使って、それなりに効果があるとリサーチした結果が出て、実施されるのなら良いが、日本の場合はそうではない。検診をすれば助かるという情緒的な論理は非科学的である。一度広まってしまったら、仕事として関わる人も多いので(効果がないとわかっても)やめられなくなるという側面もある。検査を受けることのメリット/デメリットを吟味した上で受ける人は多くはないだろうから、情緒的なものに流されやすいマスコミの影響も受けるだろう。
ただ、国立がんセンターのホームページには検診のエビデンスについても公開されており、一般の人たちにも情報がわかる時代になってきた。もうちょっと世の中も進歩しても良いと思っている。
関東地方で暮らす山下さん(仮名)は現在、夫と二人暮らし。近くに住む娘が一人いる。山下さんはこれまで二度、大腸がんの診断を受けている。一度目は60歳のときであった。その3年ほど前から、便秘や下痢、便が細くなるなどの自覚症状があり、がんかもしれないと思ったが、受診せずに放っておいた。自分の母親がちょうど同じ60歳のときに胃がんと診断され、全摘手術を受けたが、その後、転移を繰り返しながらも90歳まで生きた。そのこともあり、「がんになったらなったときのことだ」という考えがあったからである。しかし、医療者の親類から受診を強く勧められ、仕方なく検査を受けたところ、初期のがんが見つかり、内視鏡で切ってもらった。
内視鏡による手術ということもあり、体への負担もほとんどなかった。術後、一度だけ検査を受けたが、その後はずっと「ほっぽらかし」の状態だった。しかし、最初の診断から10年経った頃にひどい下痢と出血があり、病院を受診したところ、がんが見つかってしまう。親指大に大きくなっており、その場で切除はできないということで、入院して手術を受けた。また、このとき潰瘍性大腸炎も見つかった。がんについては、既に70歳を過ぎていたこともあり、「まあいいわ」とあまり気にしなかったが、潰瘍性大腸炎は原因も分からず、しかも全腸性ということで、こちらの方が山下さんにとっては深刻な問題であった。
二度目の大腸がんの診断を受けた後は、潰瘍性大腸炎のこともあり、一年に一度は内視鏡検査を受けなければならないと言われている。しかし、近くの大きな病院で二度検査を受けたが、いずれも痛くて入らず、結局最初に通っていた遠方の病院に移って内視鏡の検査を受けている。
検診については、コレステロールや中性脂肪など、日常的に気をつけておかなければいけないものについては自治体の検査を受けているが、がん検診は受けたことがない。もちろん、検診を受けて安心できるという人は受ければいいと思っている。しかし、高齢になってからのがんに関しては、手遅れのものは手遅れだし、そうでなければ、治療をしないでそのままにしておいてもがんで死ぬより、寿命の方が先に来るかもしれない。むしろ、積極的に治療をして、入退院を繰り返したり、抗がん剤の副作用で苦しんだりするよりは、徐々に弱っていった方がいいのではないかと思っている。
また、若い人の検診については、小さながんが早期に発見されて治ったと喜んでいる人もいるが、もしかしたらそのがんはそのままにしておいても進行の遅いがんかもしれない。実際、自分の周囲にも、若い頃に子宮がんと診断されたが、手術を拒否して、今も元気に暮らしている友人がいる。また、がんが見つかっても、若い人の場合、進行が早く、あっという間に亡くなってしまうケースが多いとも聞いている。したがって、医療者や予防医学に対しては申し訳ないが、若い人にとってがん検診がそれほど有効であるとは思えない。
辺見さん(仮名)は公務員として勤務していた。職場では毎年健康診断が実施されていたが、便潜血検査はオプションだったので受けることはなかったし、受けるようにという指導もなかった。異変に気づいたのは、朝排便の後にティッシュペーパーに茶褐色のものが付いた時だった。これまでそのようなことはなかったし、尋常ではないと思い、当日かかりつけ医を受診した。その場で、総合病院を紹介され、救急外来にかかった。そこでは、問診、触診、血液検査をしたが、私から距離をおき医師同士がうつむき、小声で話している様子に不穏な空気を感じた。入院が決まり、CTや内視鏡検査を受け、ステージⅣの「直腸がん、多発性肝転移」と診断され、リンパ節への転移も伴っていた。
がんと告知された時は、実感はなく受け流してしまった感じだった。直腸のがんと肝臓のがんを切除し、抗がん剤治療に取り組むこととなった。しかし、抗がん剤治療中にも関わらず、再度肝転移、肺転移が確認され、治療薬を変えて様子を見たが、がんは縮小せず外科手術を行った。それでも職場復帰を目標に頑張り、一度は復帰したものの、復帰後3ヶ月で再び肝臓と肺に転移した。治療は長期にわたり、仕事を休む必要があったため退職を選択した。術後、排便も健康な時とは違い、日常生活での困難を感じている。病気のことは同僚や上司に特に隠すことはなかった。
直腸の手術の他、肝臓と肺の手術も合わせて計7回の外科手術を受けた。頻繁な入退院を経て、がん患者が置かれている状況はとても厳しいと感じている。がん治療の費用は高く患者の経済的負担も大きい。2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代を考えると、国や地方自治体はがん撲滅のためのプロジェクトを作るなど、一刻も早く真剣に取り組むべきだと考える。辺見さん自身は、忙しい中でパンと牛乳だけなど食生活をおろそかにしていたことが、がん発症の大きな要因だと思っている。
今は自己管理で再発しないように工夫した食生活を実践している。検診を受けることもそのひとつであり、検診を受ける時間はとられるが、たった1日か2日で1年分の安心が得られるのであれば、有給休暇を取ってでも積極的に受けるべきだと思う。
がん患者への支援や予防など国としてやらなくてはいけないことは多々あるが、現場の医療者は本当に頑張っている。医療者を疲弊させないということも、よりよいがん医療を実現するためには大切だと思う。

