インタビュー時年齢:30歳(2020年10月)
障害の内容:聴覚障害(中途難聴)
学校と専攻:大学・工学部(2008年度入学) 大学院・情報工学(2012年度入学)

関西地方在住の男性。10歳のときに難病と診断され、目や手に若干の不自由はあったものの、大学までは日常生活に障害を感じることなく過ごしていた。しかし、22、3歳の頃から聴力が低下し始め、ここ3年ほどで聴力低下が進み、対面で話すことが難しくなってきた。大学時代から情報工学を学んでいたが、病気の進行を食い止めるような医学的な研究に情報工学を生かしたいと考えるようになって、大学院に進んで、現在は研究所でヒトや細胞に関する研究を続けている。

プロフィール詳細

淳也(じゅんや・仮名)さんは、10歳の時に難病の診断を受け、右目の視力低下や上肢に不自由があったものの、大学に入るまでは日常生活で特に困ることもなく過ごしていた。しかし、22,3歳のころに持病の治療で手術を受けたのを境に、ゆっくりと聴力が低下してきた。最初は大きな部屋での授業やミーティングの時に反対側にいる人の声が聞こえないということがあったが、少し不便だと思うだけだった。
 それがこの3年くらいの間に1-2段階聴力が低下して、狭い部屋のミーティングでも話が分からなくなったり、相手によっては対面で話していても聞き取れなかったりするようになってきた。意思疎通に問題が出てくるので、現在の職場では会議の際には、所属部署の補助業務をしている人にパソコンを使ったノートテイクをお願いしている。ただ、専門知識を持っているわけではないので、打合せ内容が専門的になるとタイプミスが出てきてしまう。自動字幕生成機能のあるウェブ会議システムもあるが、組織のセキュリティ上のルールでそのシステムは使えないといわれてしまうと、自分としてはどうしようもない。ただ、職場自体が病気を研究しているところなので、障害に対する配慮はされている方だと思う。
 大学は工学部の出身で、当初は情報機器を活用することで、障害のある人をアシストするような研究をしたいという思いが強く、しばらくはそういう研究をしていた。しかしそのうちに、情報機器を使った障害の補助も大事だが、病気というのはどんどん進行してしまう場合もあるので、障害と病気は違うものだという認識を持つようになり、情報工学の力で病気の進行を食い止める方法が拓けたらいいと思って、今はそういう研究をしている。
 自分の研究は研究室で実験をするというよりは、コンピュータを使ってプログラムを書いたり、解析したりする作業がメイン。聴力障害はコミュニケーションが問題なので、一人でやる作業では困ることは少ないが、実験室で冷蔵庫のドアが開いたままになっていてアラームが鳴っても聞こえないので、一人で実験したあとはエラーが出ていないか一個一個の実験機器を見て回らないと不安になる。
 今はビデオ通話が主流なので補聴器をつけている上からヘッドホンをつければ7-8割は聞こえるが、対面だと例えば会議室での会話などはほとんど聞きとれない。この先聴力がさらに低下すると当然できないことが増えていくと思う。例えば大勢の人の前で授業をするといったことは難しいので、今後仕事を探していくうえで、普通に聞こえる人より選択肢が限られるのかな、という漠然とした不安もある。
 そんな中で、今回インタビューに協力することにしたのは、障害があっても頑張っている理工系の学生の体験談や配慮してもらえる方法があると知ることができる場ができればいいと思っていたから。病気や障害があると落ち込むことも多いと思うが、「捨てる神あれば拾う神あり」で、助けてくれる人はいるので、そういう人達と協力しながら、希望をもって生きられる社会を作っていけたらいいと思う。

私は: です。

(アンケート結果の扱いについては個人情報の取り扱いについてをご覧ください。)

認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
寄付という形で活動をご支援くださる方を常時大募集しています。

ご支援
ご協力ください

モジュール一覧