診断時:71歳
インタビュー時:77歳(2008年11月)

北海道在住で、妻と娘の3人暮らし。糖尿病で長く通院していて、ついでにPSA検査を受けるようになり、2002年にがんと診断された。放射線治療を希望し大学病院を受診したが、経過観察で10年は大丈夫、との医師の言葉を受け、待機療法を選択。以後6年間、値は7.5前後で落ち着いている。定期的に通院していたからこそ早期発見できたのだと思い、PSA検査を勧めてくれた医師に心から感謝している。

プロフィール詳細

S.Aさんは、約40年間公務員として勤めあげ、定年後はのんびりと日々を過ごしていた。30代に糖尿病を患い、以来ずっと内科に通院し続け、定期的に血液検査を受けていた。ある日、いつものように検査を受けると、普段より採血の本数が1本多かった。あとから主治医に「お年だから、やっておいた方がいい」と言われ、初めてPSA検査を受けたのだと知った。それから定期的にPSA検査も受けるようになった。そのうち、次第に数値が高くなり、2001年には5を超えた。生検を受けてみたが「疑わしい」と言われただけで、がん細胞は見つからなかった。家系に、がんにかかった人はいなかったので、自分はがんにかかりにくいと思っていた。疑わしいといわれても「がんじゃないだろう」と、どこかたかくくっていた。ところが翌年5月、2度目の生検で、がん細胞が見つかったと言われた。「嘘だろう」と驚いた。と同時に恐怖も感じた。しかし主治医が「前立腺がんは成長が遅い方だから、十分に対応できる」と説明してくれたので、死が目前に迫っているわけではないのだとわかり、恐怖感は半減した。幸い転移もないと言われた。
治療は、放射線療法かホルモン療法で、と言われた。どちらを選びますかと聞かれ、放射線療法にしますと希望を伝えた。放射線治療が受けられる大学病院を受診し、担当医にこれまでの経緯を話し、希望を伝えると、「あなたの希望はわかるけど、10年くらいは経過観察で十分」と言った。確かに自分で見ていても、この1年でPSA値はそんなに上がってはいなかった。何回も聞かされていたので前立腺がんの進行は遅いという知識もあった。それに加えての医師からの説明だったので、なるほどと納得できた。むやみに副作用のある治療を受けなくて済んだと思いほっとした。
年月がたつにつれ「前立腺がんの進行は遅い」という実感がますます深まり、恐怖感も和らいでいった。現在6年が経過して、平均寿命まであと2年となり、本当に主治医の言った通りだなと思う。PSAも一時10ぐらいまで上がったが、また下がってきて7.5前後で落ち着いている。今は、前立腺がんであるという認識はあるけれど、普段は念頭から消えてしまうぐらい安心している。恐怖感は全くなくなった。かえって老化現象のほうを心配に思う。
2007年、狭心症で心臓のバイパス手術を受けた。これも糖尿病の検査で、毎月1回通院していたから早めに治療を受けることができた。前立腺がんも同じで、内科に定期的に通院していたからこそ早期発見でき、経過観察で過ごすことができているんだと思う。気を利かせてPSA検査をしてくれた主治医とは10年来の付き合いだった。その医師には感謝しても、し足りない。そういうふうに信頼できる医師、病院との付き合いが大事だと思う。

私は: です。

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