診断時:50歳
インタビュー時:51歳(2019年2月)
関西地方在住。住宅メーカー営業職。2017年12月に高リスクがんと診断され、翌年5月ロボットによる全摘除術を受けた。術後の尿漏れが想像以上につらく、「ペニクランプ」を含む試行錯誤を重ねて、術後2ヵ月で回復した。その頃「取り残し」によるPSA再発を伝えられる。丸山ワクチンやマイクロ波なども試したが中断、11月に救済的放射線療法を受け経過を観察中。二人の子どもはすでに自立し、妻と二人暮らし。

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プロフィール詳細

A.Kさんは2017年12月頃、尿意のひっ迫感が気になってかかった近医で、念のためと勧められたPSA検査の値が40、その後の生検で高リスクの前立腺がんと診断された。ずっと健康だったAさんには全く寝耳に水の出来事で、他人事のように響き、まるで実感が湧かなかった。現代の医療ならきっと治るだろうと淡い期待をもちながら、実父が自分と同じ年齢で肝臓がんで亡くなったことを思い、死の恐怖が次第に強くなっていった。

翌月紹介を受けた大学病院を受診した。果たして自分は治るのか?見通しを教えてもらいたかったが、生存率やステージの説明ばかりで、恐怖はぬぐえなかった。最初は言葉にならなかったが、それでも1週間もすると怖さに慣れたのか、気持ちが少しずつ落ち着いてきて、ひと月後には職場への説明を一通り済ませていた。

治療法は手術しかないという担当医の勧めのまま、ロボット手術を受けることに決まった。5月まで順番待ちと言われたが、その間がんが広がりはしないかと気が気ではなかったし、術前のホルモン療法のため、商談中だろうが睡眠中だろうが前触れなく襲ってくるホットフラッシュはつらく、大変な日々だった。

また、本当に手術でいいのかという迷いもあった。担当医からは、放射線療法での根治は難しいと聞かされていた。だが入院数日前に、高リスクでも放射線で十分根治できると耳にした。専門医に問い合わせると、迷っているなら手術を中止してはと提案されたが、すでに休暇に入っていたため今更の調整は難しいと思い、悩みつつも手術に臨むことにした。

手術時間は予定を超え8時間にも及んだ。転移のリスクがあってリンパ節郭清をしたと聞かされた。長引く入院に会社への気兼ねを感じたが「しっかり治してきて」との言葉をもらい、時間とともに仕事への懸念は薄れていった。だが、尿漏れの心配は募るばかりだった。術後5日目にカテーテルを抜いた直後から、全く尿意はないのに、ひたすら流れ落ち続ける尿をみて、自分の身体でないような感じを覚えた。不安で何度尋ねてみても「回復には半年から1年、それ以上かかる人もいる」という説明だけ、看護師から骨盤底筋運動の冊子を渡されたくらいで、具体的なアドバイスはもらえなかった。

退院直後は1日にコップ一杯ほどの量の漏れがあり、営業という仕事柄、この半分以下にならないと仕事への復帰は難しいと感じた。パッドの扱いや計量方法を試行錯誤しつつ、骨盤底筋運動や縄跳び、ヨガなどあらゆるものを試し、少し改善が見られてきた頃、町医者に「ペニクランプ」を教えてもらった。使用中は全く漏れなくなる画期的な器具だった。おかげで予定より早く職場に戻れることになり、およそ2ヵ月後には漏れ自体ほぼなくなった。担当医にも驚かれるほどの回復ぶりだった。

その一方、PSAは術後2ヵ月で4まで上昇していた。ショックだった。手術で取り残しがあり、術前のホルモン治療の効果が切れ、数値が上がったのだろうと言われた。うわの空で心の準備もないままホルモン治療が始まった。放射線も勧められたが、他の方法を試したかったのと、副作用の排尿トラブルが頭をよぎり、即答できなかった。

わらをもすがる思いで必死に情報を集め、自らの身体で実験するような感覚で、丸山ワクチンやマイクロ波を受けてみた。だが、いずれも即効性を期待できるものではない。医師の強い勧めもあり、数か月後には放射線治療を受ける方向に気持ちが動いていた。
ただ担当医から「どこでも同じ」と聞かされていた救済的な放射線療法も、情報を集めてみると施設で線量が異なることが分かった。セカンドオピニオンで70グレイ照射する施設を見つけ転院し、11月からおよそ2ヵ月間、仕事の合間に毎日治療に通った。今(2019年3月)はその結果を待っているところだ。

病気を得て、妻お手製の「抗がん弁当」とスロージョギングが毎日の習慣になり、初めてしみじみと、命には限りがあるのだということ、健康のありがたみを感じた。「あと10年生きる」と覚悟した今、未来への不安はない。前立腺がんの先輩にネットを通じて出会い、快く相談に乗ってもらった。生かされた命と自分の経験を、彼のように人のために役立てることが、悔いのない充実した10年を過ごすには不可欠だと思う。好きなことをして人生を楽しみながら、誰かのためにできることを探していきたい。

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