投稿者「dipex-j」のアーカイブ

英国人の乳がんの語り

自分も子どもの頃に同じような経験をしているので息子には真実を話した

私の息子は12歳、そう、当時は11歳でしたね、彼には本当のことを話しました。彼は利口な子で私たちが隠し事をしてもすぐわかってしまい、憤慨するのです。私自身、母からは手遅れになるまでどれほど病気が悪いのか知らされず、そのことで憤慨したというような経験がありました。それで、私は彼に対しても率直に、誠実に話せば、はじめからきちんと受け入れてくれると思ったし、隠し立てして後から非難されるということもないと思ったのです。実際、彼は素晴らしかったわ。すぐにわかってくれて、「良くなるためなら何でもする」と言ってくれました。そして普段はしなかったような家のこともいろいろ手伝ってくれました。彼は怖がっていて、私の目をじっと見つめながら「ママ、死んでしまうの?」って言ったときは辛かったわ。私は「そうよ、でも今ではないわ」って答えたの。誰でもいつかは死ぬし、ずっと生きている人なんていない。それが人生なのですもの。彼は知る必要があったし、私も知らせることが必要だと思いました。知ることが、知らせないよりも、彼に悪影響を及ぼすとは思いませんでしたから。

英国人の乳がんの語り

自分が診断を受けてから、自分以外の女性の家族のことが心配になった

私には孫娘達がいるのだけど、彼らによく言っておきたくなる言葉があるわ。それは、「しっかりと自己管理をしなさい」って言うことね。私は娘の健康管理に対しても目を光らせています。彼女は煙草を吸うので、そのことでひどく頭を悩ませているの。でも、それは娘が選択することで、私の問題ではないけれどね。娘は喫煙が引き起こすいろいろな問題も知っているのだから、その上で彼女が喫煙を続け、そうしたいのであれば、仕方がないわね。あくまでも彼女の選択であって、私の決めることじゃない。私が「たばこを吸ってはだめ」なんて言う立場にはないの。娘には本当に身体には気をつけるように注意しましたけど、先程から言っているように、それは彼女の選択なの。

英国人の乳がんの語り

子どもたちが、母親が病気になったことを怒っているようで、どうやって病気について話せばよいかわからなかった

そうね、子どもたちは・・・・. よく考えれば、具体的に言えば、心の深いところで動揺している、と言わざるを得ないわ。しかも、同時に非常に怒っていた、私が以前の私ではないことに、ひどく怒っていた。私は、子どもたちの怒りに向き合うのが一番難しいと思ったわ。というのも、子どもたちはわたしのガンの話を信じることができずに、健康であることを望んでいたから。息子はとても助けてくれたけれど、Aレベル(大学入学許可試験)受験の時だったので、その話をするのにはいい時期じゃなかったわ。すっかりおちこんでしまって、聞いたときには泣きじゃくったわ。それから、息子は確かに、前より攻撃的になったと思うわ。まるで攻撃することで、自分を守っているかのように。
それが他の人々にとって悪いことなのかどうかは分からないけど、もし自分がガンになったら、いつもそのことを考え、ガンのことにかかりっきりになると思うの。でも、違うの。
子供達のことは心配でした。子供達は動揺してしまうので、ガンのことを話題にして欲しくないの。話すことも、触れることもだめだから、患者はとても難しい立場に置かれるのよ。

英国人の乳がんの語り

父親に自分の病気の診断を伝えることは容易ではなかった

翌日、いえ、3日目だわ。私は血液検査に行ったの。主人と娘がついて来てくれました。3人で話しながら歩いていました。私は「お父さんにも誰にもまだ言わないで」と言ったんです。「ゆっくりと、だんだんにわかることなんだから。わかるでしょ、(知っても)心配するだけだから」とね。そして、病院の待合室で血液検査の順番を待っているとき、父がそこにいるのを、病院にいるのを見つけました。父は糖尿病外来に来ていたのです。(乳がん外来とは)すぐお隣だったので、そこに父が座っていたの。父を見つけたときは、胸が張り裂けそうなくらい辛くて、泣き叫びたくなったわ。でも自制して、やっとのことで挨拶はしたのだけれど、父をまともに見ることはできませんでした。父の顔を見たら泣き出してしまうとわかっていたから。それから、私は血液検査を受けに行きました。行く前に主人には、「父にはちょっとだけ話して。でも私の前で話すのはよして頂戴」と言いました。

英国人の乳がんの語り

娘の代わりに自分ががんになればよかったと思っている母親を慰めてあげた

初めて母に私が乳がんに冒されている事を告げたとき、母は泣き崩れてしまいました。それはきっと、彼女の罪悪感からきたものだと思います。彼女が私について行ってやれなかった事もあるでしょうが。そして、もしこの病気が遺伝的理由によるものならば、母は自分の方が先だと考えたと思います。私の祖母も曾祖母も乳がんを患っていたから、明らかに次は自分だと。一世代乗り越してしまったようですね。自分がガンに罹るべきだったと感じていました。私は母に「ねえ、そんなこといえないわ、私が乳ガンになってしまったのが遺伝子のせいかどうかはっきりしていないのだから」といいました。
誰を責めるべき人がいるかどうか分からないし、誰の責任でもないのだから私は誰も責めないのは確かです。どうにもならないことだし、乳がんにかかったからには、もうそれに対処していくしかないのです。
おそらくそう考えることが母を少しは落ち着かせたと思います。

英国人の乳がんの語り

家族があまりに動揺していたので、彼らと話をする気になれなかった

私が最初に乳がんと診断されたとき、家族はこれ以上ないくらい動揺していました、そのことで私はやりきれない気持ちになりました。実は2年前に妹が他界したばかりで、今度は私が乳がんで乳房切除したことで動揺して、それは彼らにとって受け入れがたいことだったのです。いつも誰かしらが電話を掛けてきては、電話口で泣くので、そのことが私を悩ませました。しばらくの間私の心は傷ついたままでした。みんなが私に電話をかけてくるたびに、私は動揺してしまい、そのことがいつも心の負担になっていました。そしてとうとう、夫に嘘をついてくれと頼むようになったのです。「もう、私は寝ていると言って」、「もうこれ以上、彼らとは話をしたくないわ」
そして、夫は電話口で「彼女は今寝てるんだ。ちょっと頭痛がするらしい。」などといつも言ってくれました。家族が、私を動揺させるので、夫はいつも嘘をついて対応してくれていたのです。

英国人の乳がんの語り

人によって、反応や対応の仕方は異なっており、中にはこちらが驚くような反応や対応をする人もいる

家族や友達の反応のなかには、予想しなかったようなものもありました。看護師をしているほうの姉は、臨床経験があるからとても強いだろうと思っていましたが、実際はとてもうろたえてしまいました。涙もろくなって、すぐ泣いてしまうんです。もうひとりの姉はもっとしっかりしていました、すくなくとも見た目には。一人になったときはどうだったかわかりませんが。
父は、私ががんになったという事実をとても話題にしにくかったようで、当時そのことで私もつらい思いをしましたが、病気への反応は人それぞれなんです。それぞれの対処のしかたがあるわけで、私たちはそういうことも受け止めないといけません――つまり、病気との向き合い方は人によって違うもので、あなたに対してのふるまいは、もしかするとその人の本当に言いたいこととは違うのかもしれないということです。彼らは、あなたのために、病気と対峙し、できるかぎりのサポートを与えてようとしてくれているのです。

英国人の乳がんの語り

自分の病気を同僚に伝えてくれるよう上司に依頼したこと、それによって周囲から多くの支援を受けられたことについて、説明している

私は初回の診察に行ってから、直属の上司に電話をかけて癌だったことを伝えました。すると彼女は「みんなに何と伝えて欲しい?」と言いました。私は「みんなには胸部の感染症だと伝えて下さい」と言い、2度目の診察までそれで待ってもらいました。それから翌日の診察の後、私は○○(上司の名前)へ確認の電話を入れました。上司は「みんなには何と伝えてほしい?」と言いました。私は「本当のことを伝えてください」と伝えました。さらに「何も秘密にする必要はありません。いずれ分かる事だし、私は隠せませんので」と言いました。そういうことで、仕事に復帰した時、実際に仕事に戻ったのは金曜日だったのですが、私のデスクに沢山の花束が置かれていたのです。もう、本当に感激して涙が出ました。「職場の人たちは最高です。みんな本当に親切で、よくしてくれて、私にいつもと何ら変わらなく接してくれました。それが嬉しかった」。私もある程度はいつもどおりに行動できたと思います。生活や仕事など、必要なことは何でもやっていました。

英国人の乳がんの語り

自分の診断を聞いた人々の反応に、なぜ驚かされたのか話している

患者のサポートについては提言しなければならないことがあります。私がサポートを期待していた友達が私を避けるようになり、とても傷ついたことがあったからです。それを受け入れるのは本当につらいことでした。私がいったい何をしたの?がんになったのは私のせい?でも、その逆もありました。心を砕いてくれるだろうとは夢にも思わなかった人々が、とても素晴らしかったのです。夫の職場の人たちは、面識もないのに、すべての面でよくしてくれました。ほとんど行き来したことのない近所の人が、洗濯やその他すべてのことをすると申し出てくれました。周りの人たちのリアクションは両極端でした。つまり、ほとんど知らない人が一生懸命に頑張ってくれるかと思えば、助けて欲しいと期待している人からは優しい言葉も励ましのカードもこない、そういうものなのです。聞くところによると、サポートグループの中でしたら、それはごく普通のことだそうです。何の助けも差し伸べてくれない人がいれば、そばにいて助けてくれる人もいます。

英国人の乳がんの語り

周りの人に真実を伝えることの利点とそうすることで友人や近所の人から得られた支援について話している

周りの人に隠すのは、意味がありません。私は小さな村に住んでいるので、そう確信しました。入院する前、主な知り合いに、何故自分が入院するのか、何の治療を受けるのかをはっきりと知らせました。だから、くだらないうわさが出回ることはありませんでした。
「知らせたい人には誰にでも話して良いわよ。黙っているのは意味がないことよ」と言いました。 結果として、大きな支えを得ることが出来るのです。
 私の部屋は、ガンにかかったことのある方もかかっていない方も含めて、大勢の方達から頂いたカードで一杯飾られています、これは大きな励みになりますよ。