診断時:22歳 
インタビュー時:53歳(2017年8月) 

関東地方在住の男性。妻と子ども二人。最初は慢性膵炎と診断されたが、1年後にクローン病の診断がついた。最初は病気を隠して就職したが悪化して退職。故郷にUターンして地元の会社には病気を開示して就職したので、今は色々配慮してもらっている。何度も狭窄で手術をしたが、今は落ち着いている。早めに人工肛門にしたが、その後で子どもも授かったので、不便なこともあるが、全体的には人工肛門にしてよかったと思っている。

プロフィール詳細

 大学3年の終わり頃、下痢と発熱が続いて近くの総合病院に行ったところ慢性膵炎と診断された。しかし膵炎と診断した医師も疑念を抱いていたのか、1年後に大腸内視鏡検査と小腸の造影剤検査を勧められ、その結果クローン病だということがわかった。治療法としてはサラゾピリンと食事療法だったが、友達と焼肉やハンバーガーを食べるのが楽しみだった大学生時代に、低脂肪、低残渣(*1)の食事療法はとても堪えた。その後生物学的製剤(*2)などよく効く薬が出てきたが、これを使うと治った痕が狭窄になるということで、自分には使えなかった。

 その後大学を1年留年して卒業し、学習塾に就職した。学習塾だと午後から出勤なので午前中にこっそり通院できると思って、病気のことは言わずに就職した。しかし、そのため会社からは配慮はしてもらえず、また同僚にも話していなかったので普通に仕事が終われば飲み会に誘われたりして、食事もから揚げなどの油ものを何食わぬ顔で食べたりしていた。また夏期講習などは朝から授業があったり、1月2月ころは受験指導で残業が続いたりして、無理が重なり、ついに4年目に体調を崩してしまった。このまま病気を隠して仕事を続けることはできないと思い、その会社を退職した。

 その後故郷にUターンして地元の会社に就職した。今度は病気のことを開示して面接を受け採用してもらったので、今でも勤めているが、今までに病気が悪化して2か月、3か月入院した時も、早めに業務の調整をして、「早く良くなって来い」と送り出してくれた。

 一方病気のほうは小腸に狭窄ができやすく、腸閉塞を起こすと、その部分を切除する手術が必要になり、現在までに5回ほど手術をしている。2回目の手術の時には人工肛門を作り、4回目の手術の時にはおなかの中に残しておいた直腸部分も摘出して恒久的人工肛門にした。人工肛門にした理由はQOLの改善ということで、排便を我慢しなくていいということは大きい。もちろん慣れないうちは装具がはずれて漏らしてしまったり、温泉に入るときに気を使ったりということはあったが、慣れてしまえば特に問題はない。また人工肛門にする前と、した後で一人づつ子どもをもうけることもできたし、全体的に考えれば人工肛門にしてよかったと思っている。

 この病気は10代、20代の若い人がかかりやすい病気で原因が解明されていないために一生付き合わなければならないかもしれないが、今はいい薬も出てきているのでうまく病気をコントロールすれば普通の人と同じ生活、同じ人生が歩めると思う。自分では病気だから何かができないということはなかったので、悲観的にならず強い気持ちで明るく生きてほしい。

*1 低残渣食:消化吸収されない食物繊維を多く含まない食物
*2 生物学的製剤:レミケード、ヒュミラなどの抗TNFα製剤

私は: です。

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