投稿者「dipex-j」のアーカイブ

前立腺がんの語り

尿漏れになることは医師から聞いていたし、本でも読んでいたが、実際なってみたら思った以上に気になるものだった

まあ、一番、まあこれで嫌なことっていうと、やはりこう尿漏れっていうのがね、一番、やはりいつも清潔にしていなくてはいけないんですけど。もう、やはり尿漏れが非常に訓練しててやったんですけど、尿の漏れがやはり出終わった後に、ちょうど尿が、あのー、滴が垂れるようにちょっと出るんですよね*1。それが一番、自分が気になることなんですけどね。それが、まあどの程度のあれか、私も「尿漏れがある」ということだけを聞いてましたんですけど、それが実際自分がそのことに関して自分がなってみて、やはりそれが先生や、何かその本を読んで書いてあるのを読んでみたりなんかしたよりも、やはりまあいろいろ個人差があると思うんですけどね。うん。やっぱりそれがすごーく、気になる……ことが多いですね、やはりねえ。ええ。まあそんなことなんですけどね。

――うーん。実際そのまあ説明を受けてたけども、その尿漏れに関しては、その説明は受けていたんだけども、その実際にやってみるとなると違った。個人差はあるんだろうけども、その本で見るのと説明をただ受けたときのと、実際にそうなるのでは、やっぱりだいぶ違って…

そうですね。その尿漏れというのはですね、どうしてもですね、やはり手術をして膀胱と尿管(尿道)を一緒につないでしまいましたもんですから、その尿漏れっていうのは、その手術に関してはどうしても切っても切れない、まあ、そういうふうな、現象が出てしまうということは先生から言われてましたんですけど。それは、やっぱし、最初、まあ尿漏れってそんな大して、そんなに強く考えてなかったんですけど、実際に自分がなってみると、やはり非常にやっぱし、こう気分的にね、あのやっぱり良くないし、もうやはり、それさえなければ本当に、一番いいんですけど、やはり 。

*1 このような症状は、「排尿後尿滴下」と言い、尿道の中に尿が残っていることが原因で起こります。排尿後尿滴下に対しては、排尿後尿道をしごく(屈曲部を根本側から指で押し出すようになぞる)とよいと言われています。

前立腺がんの語り

手術前に医師から尿失禁について大した説明はなかったが、他の患者からも聞いていたので、特別驚きはなかった

――手術を受けられる前にその手術の方法とか、そういったものの中に、その手術後の副作用のこと。例えば、その尿失禁が出ますよとかっていうお話は、お医者さんのほうからはありましたか。

いいや、副作用につけてはね、たいした説明はなかったですけども。

――その手術後に、尿失禁がありました…。

いや、いや、それは、それほどは、副作用ということには、入らんですわ。何だ、尿漏れちゅうことは。もう最初、手術する前から、漏れちゅうことは、聞いちょりましたけんね。ほとんどのそげね、あの先生が、ほかの患者さんからも聞いちょったですわけんね。その尿漏れちゅうことは。まあ、先生からも聞いちょったですけん、まあ、知らんことは、そげんでした…あの、気には止めちょりませんでした。

――ああ、じゃ、手術後に、その尿漏れがあっても、特に驚きはなかったっていうわけですね。

ああ、別段にね。はあ。

前立腺がんの語り

手術して前立腺を取り除いたら、がんはなくなるし、PSA値も上がることはないと思っていたので値がなぜ上がるのか理解できなかった

完全に、手術して、それが前立腺を取り除いた後に、PSAの検査しても、PSAの値が上がるということはないと思っていたんですけどね。まあ、前立腺のそれを取ってしまっても、やはり何か、前立腺がやはり、癌のできているところが、表面のところよりも少し顔が出ているっていうか、ミカンが破れたような感じのあれで少し、表に出ているようなところが見受けられたので、やはり前立腺を全部取ってしまっても多少糜爛(びらん)で、外に、それ(がん)が目に見えないものがあるかも分からないと、前立腺は全部切除して摘出で取ってしまったんですけど、やはり、そういったものの組織、目に見えないものがあるかも。それは、目に見えないものは取れないということで、そのことが言われたのが一番頭にずっと残っていたんですけど。
もう取ってしまえば、それでもう完全に前立腺とは縁が切れたのかと思っていたんですけど(笑)。うん。ですけどね、やっぱし少しずつそういったPSAも上がってきて。それでこれから先、ねえ、どのようにしてやるのかなと思って、ちょっといろいろ、ま、私も心配して、家族も心配してましてね。それで、まあいろいろちょっとやはり迷っておったんですけどね。

前立腺がんの語り

入院中は、仕事の面では良い部下に支えられた。家族が毎日見舞いに来てくれたのは励みになった

まあ、苦労っちゅうことはなんいですけど。たまたま、小っちゃな会社ですけど、いい部下って言ったらおかしいですけど、いたもんだから、電話ではやりとりしましたけどね。そういう人がちゃんとやってくれたから、無事終わりまして。まあ、(交通事故で)首の(治療で入院した)ときもそうですよね。まあ、終わりました。首の場合は2ヶ月ですから。そのときもその人に任したから、まあ一応、「こうだこうだ」、「どうだ状況は?」ってこう聞いていましたけど。そういう人たちがいたんですよ。それとあと、先ほど言っているように、家族が毎日、見舞いに来てくれたのが、やっぱり、ある程度自分なりの、この励みになったというか。退屈でぼけっとしているよりね、やっぱり、下のほうに行って喋ったりして、わたしのことですから、おしっこが漏れるのに、点滴の「相棒君」をしょってね、カーディガン着てね、構内をブアーッと歩いて(笑)していたんですよ(笑)。そういうぐらいしてね、あれしないと、やっぱり頭おかしくなるから、うん。やっぱり、病室に入っていれば、病人になっちゃうからと思ってね、できるだけもう、今言ったように歩いて、そして、何でもないときには、外に行くというふうに自分でして。一緒に歩いたりしてね…してたんですけどね。それが一番の励みですね。

前立腺がんの語り

おなかの傷は5ヶ所で、小さい傷だったので、痛みは少なかった

――実際、腹腔鏡で手術されると、傷の大きさってどの程度になるんですか。どの位置にどれくらいの大きさになるかっていうのを教えていただきたいんですが。

おへそのところに5cmぐらい。これが一番大きいです。なぜ大きいかと言いますと、カメラがそこに入るからです。で、おへその横、ちょっと横に、2cmぐらいの…2.5cmぐらいの傷があります。これは、前立腺を中から取り出す部分です。そのほかに小さな、1cm…1.5cmぐらいの切り傷というか、切ったところがあります。それが1、2、3カ所…あ、4カ所ですね、ありまして、それは体の、切り傷のような感じでして、そこから手術に使う、いろんな道具が中に入っていくということのようです。

――術後、2日目からもう歩き始めてたっておっしゃっていたんですけども、痛みはいかがでしたか。

あ、それはもう、看護師の方、医者の方からも常に聞かれるんですけど、僕は痛みはなかったですね。ただ、それはそうではなしに、例えば咳をしたときとか、笑ったときは、あるいは咳をしたときには、ちょっとこう、痛みはありますけども、通常、寝てるときに、あるいは歩いてるときには、そんなシャープな鋭い痛みは全くなかったということです。

前立腺がんの語り

腹腔鏡でおなかの中を見るため、ガスを入れてお腹を膨らませた。術後に少しずつガスが抜けていったようだ

でまあ、腹腔鏡といいますのは、ガスが、おなかの中に入って、おなかを膨らませて、そこにテレビカメラ(の付いた内視鏡)を入れて、で、先生がテレビカメラを見ながら手術されるということなもんですから、おなかの中にガスが非常にたまってると。まあ私自身、正直どういう感覚か分かりませんが、その後も、看護婦さんは8時間おきにすべての臓器がうまく、ファンクション(機能)してるかというチェックをされます。と同時に、臓器とその皮膚の間に空気が、たまってると。実際にたまってるようで、ぷよぷよとしてるようですが、それをおなかのいろんなところにマジックでぽっぽっと点されまして、それが膨れてないか、あるいはそれがずっと治まっていってるかどうかというのを常にチェックされるということと、臓器、胃とか直腸とかその辺が全部動いてるかどうか、このチェック。それから尿の色等をチェックされていきます。
で、先ほど申し上げましたように、もう3日目から普通の食事を取っておりますので、栄養剤とか水分とかいう、そういう点滴は全部抜かれてしまいます。で、従いまして、残ってますのは、手術からのこう、一つの管と、それから尿と、この二つだけになります。で、手術の後の(血液などを出す)管も、4日目ですかね…ぐらいに、もう抜かれまして。先生の話によりますと、その傷口はボンドで、こう留められてると。だから、そういう手術のステッチの跡はなく、ボンドで、のりでこう閉められてるという、そういう感じです。

前立腺がんの語り

腹腔鏡は試験的な形ではあったが、執刀医は経験があり、任せることにした。お腹に大きな傷がなく、術後の痛みは少なかった

結局、従来切除する…撤去すんのに、おなかを切って、大きく切って、あと切ってしますもんですから、まあ後遺(症)が、切り口とかそういう後遺(症)が残るいう方法やけど、「今回、新しい手法ですかね。手術方法をしてみようと思う」と。「それはまあ、試験的な形になるんですけど、やってみますか? 」という、お話を聞きましたもんで、私、説明を受けた段階では、そう難しい…難しい言うか、問題になるようなもんでなしに、経験された方…かなりの件数を今まで全国でしておられるということで、「ほんなもう、私らは素人でございますんで、先生も(そう)言われるし、そういう関連(の説明)もお聞きしとるのでお任せします」いうことで、腹腔(鏡)手術いうんですかね、で手術したわけです。

――不安な気持ちとかなかったんですか?

うん。ただまあ、ほかの病状では腹腔(鏡)手術いうの、もう聞いていましたもんでね。ただ、従来みたいにばっさり切ってするんじゃなしに、穴開けてやるいう…ちょっとこう楽な気がしましたもんで(笑)。

――ばっさり切るよりは、穴開けるほうがいいだろうという、そういう判断で、全部おなかを開く開腹ではなくて、腹腔鏡を選択された?

はい。で、まあ、現在、カメラもそういう中の…こう進歩してますんでね、拡大してかなりの技量で、そういう手術ができるということも、いろんな本で知識を得てますんでね、そんなに心配はしてませんでした。

――実際、その手術が終わった後は、割と回復が早かったということだったんですけども。

早かったです。

――痛みのほうは?

全然ないです。

――大体どれくらいで歩けるようになりました?

2日か3日ぐらい目にはもう一応、尿の袋だけぶら下げて、将棋しに行ったりね(笑)。

前立腺がんの語り

手術の方法(会陰式)について、手術時間が短いと聞き、家族とも相談して決断した

結局ね、お腹から切ったら、(前立腺まで)距離が長いですから、切る。まあ、あとから考えてみたら、お腹から切ったほうがよかったかなとも、思ったですけどね。もう、その時点で、お尻からが近いけん、近いけん、早いこと、手術して帰られればというあれがありましたから。それでまあ、自分の選択としてそれだったということですけど。

――お医者さんのほうからは、切り方について、手術のメスの入れ方について、どんな説明があったんですか?

まあ、どうっていうかな。これも今、おしりからのほうが早いけん、まあ時間も短いしな、前から(恥骨後式で)切るとちょっと時間が、かかるというようなことで。そういうこともありまして。

――先生のほうから勧められたという感じなんですか?

まあ半分、勧められたというか、家族も、どげんっつうですかね…まあ、早いが良いけんな、というようなことで、お尻からが良いんじゃないか、親戚のもんも家族も、意見いうものを、お尻のほうからが良いだねえか。それもわたしが、平成17年に手術しちょりますわけ。その頃から、初めて今のお尻から切るようなことが、始まったじゃありませんか。その(平成)16~17年ぐらいからじゃないかと思うんですけど。それで結構、早いこと退院して、あとから何ともないっていう話が、大勢おられて、お尻からのほうがええじゃねえかというようなこと、家族とも相談して、まあほんなら、そうするかって、最終的には、わたしが決断したようなことですけど。

前立腺がんの語り

手術した翌日から立って歩いた。自分では立てるつもりだったが、最初はふらついた。痛い時は必ず教えてくださいと言われ、薬で痛みはなかった

――手術のときには、14日間の入院を必要とされたということですけども。

ええ。

――ご家族かどなたかが付き添われた?

2日間くらいですね。手術した次の日からね、まあ、立って一応、歩きました。

――そのときは、お体の具合とかは、どうだったんですか?

やっぱりね、自分は、ちゃんと立てるつもりだったんですけども。やはり、看護婦さんにね、支えられて、やっと立って。まず、そうですね、5メーターくらいですね、それから、10メーターとか、徐々に一応、訓練いたしまして、あと次の日からもう1人でできるようになりましたね。はい。

――最初は、立つのはできるつもりだったけども、なかなか立てない?

ふらついてね、ふらつきまして(笑)。

――痛みはいかがでしたか?

痛みはね、やはり、何年か前は、痛いときはある程度我慢しなさいという話だったですけども、今の医学は違っていまして、痛ければかなり、あの苦痛をともなうので、「痛いときは必ず教えてください」と言われました。だからあの、全然、そういう意味では、痛さなんかありませんでしたね。

前立腺がんの語り

術後に喉の痛み、便秘、傷の痛みを体験した。自分の場合は尿道をつないだ部分が腫れてカテーテルを抜いた後、尿が出なくなった

手術は全身麻酔をやりまして、約5時間かかりました。5時間っていうのは手術室に入って出てくるまでですね。で、ですけども、手術中は全身麻酔ですのでまったく何もわからない。目が覚めたときは終わっていたということで。で、今は非常に昔と違ってですね、手術が終わった後も脊椎にですね、麻酔薬をずっと送り続けるというのが付いてますので、まったく痛みは感じませんでした。ただおなかにチューブが入り、それから尿もチューブが入ってと、こういう状態でしたので、非常にベッドの上では大変でした。それからもう1つですね、全身麻酔をするときに、パイプをですね、喉に入れるんですけれど、呼吸を補助するために。それは皆さん経験するらしいんですけど、喉にパイプが当たって、喉をやられるもんですから、咳が出るんですね、終わったあと。その咳をするとおなかが非常に痛いと。その苦しみが非常に大きかったです。それから、それが終わってから、3日目、4日目から、今度便秘になりまして。便秘になって、おなかに力を入れると痛いもんですから、まあ、うまく出せない状態ということですから、そういうことで非常に便秘に苦しみまして、最終的には薬とか浣腸っていうことで、出したんですけど。そのあとは尿が出ないという現象が起きました。尿が出ないというのはこれも力が入らないのと、それからお医者さんがおっしゃるには、尿道を繋いでおりますが、そこの膨らみがあるということと、それからやはり手術をしたばっかりなもんですから、浮遊物がいっぱいあるわけですね。それが繋いだところに溜まっちゃうということで、尿が出なくなると。出なくなるとおなかがパンパンに張って、おなかも手術したあとが非常に痛いわけですね、それで。それで溜まって、仕方なくチューブを入れてもらって、出すと。これの繰り返しでしたと。ただ、運が良かったことに普通尿漏れが、皆さん起こるんですけど、私の場合は非常に少なくて、後遺症も非常に少なかったです。

――そのおなかが痛いというのは、切ったところが痛いということですよね。

はい、そうです。

――どのくらい切るんですか、おなかは?

私の場合は12、3cm切りました。別に普通にしてると何も痛くないんですけど、咳をしたり、それから便をしようとして力むとき、こういうときは痛いです。