そこで次は、手術に先立ってはもう大腸とかなんかみんな止めてしまってますよね、ものも入れてないし、点滴だけでしてますので、次はそれを動かすということで、いわゆる手術の後のガスが出るというのを待ったんですが、なかなか出ない。それで出たのは手術してから5日ぐらいですか、だからその間はおなかを温めると、いうふうなようなことを致しました。で、その手術で最後、あれですね、ガスが5日目ぐらいで出たとき、私も他に手術なんて今まで受けたことなんて何もありませんし、話には聞いてましたけど、ガスを、特に盲腸なんかやった時にガスが出ないで困ったとかなんとか言ってましたけど、私も困ったなあと思っておったんですが、俄かにやっぱり大腸っていうものは動き出す時はゴロゴロっていうような、えらい勢いでガスが動き出して、そしたらあれで大腸が動くんですね。そしてゴロゴロ、ゴロゴロ、ガスが出る。そうしているうちに、排便もあったですかね、しばらくしてね。そうして落ち着いたらもうお水を飲ましていただけるし、それからおもゆからおかゆというものに食べ物がこう変わってきまして。そして、1日か2日しましたらね、今度はあれは自分の人生の中であんなに、これも高揚するっていうか、元気がこう出てくるっていうか、あんなに食べ物を食べたら、生きる力が出来てくるというか、そんな気持ちになったのは初めてでした。で、体重はね、4kg落ちてました。それがご飯をずっと食べられるようになった時には、本当にこう力がもりもりというか、気力がこう回復してくるっていうか、すごい力ですね。そうして1週間も経ちましたら、食堂は、普通はまあそういう時は、食事をこう配ってくれるんですけど、食堂がありまして、そう大きな病院ではありませんので、そこでなかなかいいご飯を作ってくれるんですよ。そこで私は3階におりましたけど、もう1週間もすれば階段を下りてね、3階分下りて、でご飯を食べに行くというぐらいのことができるようになりました。
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そして、はい、取り出した物はって、取り出した物をこう見せてもらって、ここ、ここが悪かったんだよって言うけど、そこはちょっとこう、色が付いてるぐらいでね、こんなもので、そんなのかなあと、もう自分じゃあ思ったんですけど、そういうものを見せてもらって、まあどうやら人心地がついた。そしたらもう寒くなってきましてね、ものすごく。ガタガタ、ガタガタ、もう寒くなってきて。寒いので、看護師さんに言ったらもう、すぐ看護師さんが電気毛布を持って来て、体に巻いてくれて暖かくなった。そして落ち着いてきたら今度は熱が出てきました。その日と翌日ICUで泊まったんですけど、38度7分ぐらいのがまあ、2日ぐらい続きました。でもあの、確か先生がおっしゃってたのは、人間の体って良く出来てるもんで、やっぱり障害があると、やっぱり感染症にかかったらいけないですから、熱を上げて細菌なんかを殺すようにそういうふうにしてる。風邪のときもそうだからねと。むやみにやたらに温度を下げてもいかんと。だからそういうことになっているんだから、まあそう気にせずに、ということで、2日ほど入っておりましたら、熱も下がってきまして、自室へ、自分の部屋に帰りまして。
今度はもう、車(ストレッチャー)へ乗せられて手術室へ入りましたけど。手術へ…あ、その前に病室で、なんか注射をされました。どういう注射か、催眠剤なのか精神安定剤かよく知りませんけど、そうして手術室へ入る。手術台に寝かされて血圧計を付けられる。そうするとその血圧の数値がすっともう画面にこう出てって、「ああ、テレビで見てるようなもんだなあ」とのんきなことを思いまして、真っ裸にされてもですね、そして上の手術灯がピカーッとこう、強烈に光るのを見ながら、あーっと思っておりましたら、次はあの脊椎のところへ神経ブロッカーだろうと私は思うんですけど、神経を、痛みを止めるための何かこう、針みたいのを刺してこう、なんかその先に薬剤があるのかどうかよく見ませんでしたけど、そういうものを付けてくれました。そうしているうちにね、もう記憶がなくなっちゃった。もうスーッと記憶がなくなったんですが、その間の記憶はなくなったけど真っ暗。もう、何て言いますかね、映画でももう真っ暗な画面を見ているような、それだけしかないんです。そんなあれがあって、気がついたのはICUですか、そういうところへ連れて帰って、車(ストレッチャー)に乗せられて連れて帰ったときに、ひょっとこう見たら蛍光灯の光がぼんやりして、ああ、蛍光灯の光だ、ああ、僕は生きておったんだ、と思ったのがちょっと本当にちょっとこう嬉しくなりましたけど。そこでこうずーっと意識が(戻って)。だから手術自体はずいぶん早く済んだようです。4時間っていうのが麻酔をかけて(麻酔が)覚めるまでをいうのか、よくわかりません。しかし実際に手術をしている時間は非常に短かったと、あとで付き添いの先生がおっしゃっておられました。
私は入院したことも手術をしたこともなかったんですね、今までね。だから手術ということ自体が非常に恐かったんです。がんの恐さよりも手術の恐さがもう先に立って、先生にもう、どういうふうな手術なんでしょうかとか、自分自身でも、前立腺がんの全摘の手術ってどんなものなのかって勉強もし。本を読んだり、いろんな人に聞いたりもしたんですよね。で、やはりやっぱり恐い、全身麻酔やってそのまま(笑)もう子どもみたいなんですけど、もうそのまま目が覚めないんじゃないだろうかとか、あー、手術はうまくいくんだろうか、痛いだろうなとか、そんな不安ばっかりだったんですよ。
で、これはあるアメリカの人が書いた、まあ、がん全体の本だったんですけど、手術に、を決める際には遠慮なく、ドクターに質問をしていいですよって、いろんな項目があったんですね。で、その中で、ドクターに対して、あなたは同じような手術をどのくらいの経験があるんですかという質問をしていい、って書いてあったんです。で、私もあーなるほどな、と思って、非常に失礼なんですけどね、ちょうど担当の先生とまた診断のときにお話があったときに、もう思い切って聞いたんですよ。「先生、失礼ですけど、私も非常に手術に対して不安です」と。「で、聞くと非常に難易度が高い手術だと、聞いておりますので、お尋ねしたいんですが、先生はこのような手術をどのくらい経験されたか教えてください」って聞きましたら、先生、やはり真面目にこう質問したからでしょうか、非常に、真面目な態度でお答えになったのが、「私は同じような手術を今まで100回以上しています。で、月に1回は執刀していますよ」というお答えをすぐいただきましたね。で、私ももう、そこで決めました。「わかりました」と。「じゃあ私も安心ですから、ぜひ先生に手術は執刀してください」ということで、手術に臨むことは出来たんですけどね、やはり間際まで恐かったですね(笑)。ある程度安心はしましたよ。「僕の先生は何回も経験がある人だから、安心なんだ、安心なんだ」っていいながら。
そして、まあこれは僕の、親しい人のアドバイスですけども、「手術まで決めたのならもう本を読んだり、いろんな勉強はもうしないほうがいいよ」と。「そのまま体を預けて、手術に向かったほうがいいよ」ということなんで、私ももう本を読むこともやめたし、あとは先生の指示に従って、いわゆる自己血液の貯血ですか、あれをする程度でしたかね。それで、まあ手術に臨んだということでしたねえ。
まあ、一番心配するのは、やっぱり麻酔の在り方でしょうね。麻酔でいろんな症状、出る場合があるという話、聞いたことがありますんでね。まあ、脊髄とかこう、後ろに(背中の方から麻酔)したりしてますんでね。
麻酔して、そのまま目、覚めんとか(笑)。まあそういう、大きなことやけど。結局、全身にするから、やっぱり人によったらそういう症状起こるかも分からんでな。ほんで脊髄の、腰のほうからするやつもありますんでね。だけんやっぱりこう、あんまりええ状況の場所の、注射じゃないですからね。やっぱりこう、そういう心配はちょっと…。まあ、ええやろ思って、だから言ったんですけど。今、麻酔なんかも、手術のときにかなり、麻酔薬、麻酔する人のことをやかまし言う時代ですからね。で、それ一番多いんじゃないかな、麻酔いうんが。手術自体は、今もう、要らんとこを切って取るいうのは、もういいカメラが大きくあって手術しやすいみたいな感じになってますけどね。
開腹手術しますと、8時間ぐらいかかりますよ、ということで、私、糖尿病持っとったもんで、血糖値がごっつい高いんですよ。で、それで、内科の先生、まあ内科のほうへ糖尿病は行くわけなんですけど、「これ(血糖値)は精神的なね、ショックでね、上がってるんです。一時的にはどうにでもなるんです」みたいな言い方をするんですよ。で、「どうでもなるってどういうことですか?」って言ったら、「インシュリンを打つんです」ってね。インシュリンを打つと、下がるらしいんですよ、希望の値までね。で、「それ、自分でやりますか?」って、まあはじめ、内科の先生がおっしゃった。私は長いこと、インシュリンやる気もなかったので、「いや、看護婦さんにやってください」ということで、まあそれは順調に下がっていったんですけど。1週間長く入院、血糖値を下げるために1週間先に入院させられたんですね。
で、あと手術前に執刀医から手術の説明というのを受けましたけども、極めて大雑把なものでですね、私には妻と子どもたち夫婦二組とが一緒に聞きましたけれど、まあ手術は4時間ぐらいかかりますと。前立腺っていうのはおなかを切ったら一番底にあって、その周辺は血管がいろいろあって、出血がしやすいんですと。だからそういうふうな中でやりますからというふうな話でしたね。そして、まずは麻酔というのはほとんど事故はありませんが、事故がある場合がありますと、それは事前にはわからんのです、というふうな話でした。そして、まあ先ほど言った出血の場合でも、前立腺の位置がまああの、膀胱の先にこうあって、大腸のところに引っ付いておる。だから大腸のほうに触診の場合は(指を)入れて、前立腺は触るんですから、そこらへんに入っておりますから、大腸にメスが入ってしまった場合は大出血を起こしますと。こういうふうな、非常に恐いような話ばっかしを大体されました。それからあと、非常に少ないけど、3%ぐらいは、尿がもう、だだ漏れだというふうな状態に陥ることもありますと。というふうな大体話だったですかねえ。もう質問することはあまりできなかったし、細かい医学知識はないし、ああいう場合は非常に悪いことばっかしを言うような、一般的には…じゃないかなと思うので、起こりうることについて、まあそういう説明を受けて、いよいよ手術ということになります。
今度は入院前の、手術前のいろいろな検査を受けました。詳しい血液検査であるとか。動脈の血の検査もするんですね。動脈は普通チョコッと簡単にこうやれば血が飛び散りますから。動脈の検査をしたり。
それから、これは最初からこの段階では前立腺がんの、いわゆる前立腺の中だけにあるものだけだという考えでやってましたけど、それを検証するために骨シンチをやりまして、骨盤とかそういうとこへ(がんが)飛んでないかというのをアイソトープですかね、あれを使って調べる検査を受けたり。それから内臓をCTで、ずっと主な内臓を調べて、なんか飛んでるものはないかというふうに調べて。まあみんな異常はなかったんです。
それから、胸の検査を受けて、心臓のほうの、私は少しちょっと若干、上室性の期外収縮っていうか、上室性の期外収縮っていうのはそういう性質が悪くなくて、普通、少々収縮はあったってなんともないというものなんですけど、思い切って心臓の検査をやってもらいました。エコー(超音波検査)で心臓の動きを調べて、それから24時間のホルター心電図を取ってもらって、「ああ、十分です。特に異常ありませんから、手術には問題ありません」、というふうな診断を受けて。
それから特にまあ輸血のことは私ちょっと神経使ってまして、変な血もらったら困ると思ったんで、自己血を採らせてくれということで、400ccを2回採りました。そして800ccを溜めまして、だんだん手術の日までにそこらへんを準備することが出来ました。
先生からは、今の状況であれば、事前にはですね、神経は取らなくていいと思いますと。だから、残すようにはできると思いますということだった。で、術後、先生の説明で「神経ちゃんとほとんど残しておりますから」っていうことがありましたね。だけどまあ1年ぐらいはまだ、あれですからねってことでしたけど。
――まだあれですからというのは?
まだその神経がこう、どういうんですか、ガーっと切ったわけですから、残しとっても、繋がるまではまだ機能はしませんよ、という説明でした。
――その神経の温存に関しては、主治医の先生のほうから残せますよという提案だったんですか、それともご自身で残して、残すんだったら残してもらいたいというお話をされたんですか?
私のほうからまず、残してほしいという提案…じゃない、お願いはしたんですね。そしたら先生も「この状況であれば、恐らく大丈夫だと思います」ということでした。
――やっぱり、勃起神経を残すということは、すごくご自身にとっては意味のあることではあったんですかね。
そうですね、やっぱりそれと尿失禁と、この2つはやっぱ心配でしたね。周りの人からも、「インポテンツになるよ、いつまでもおしっこが垂れ流しになる可能性もあるよ」っていうのは聞いてはいたんですよ。で、もちろんその質問も担当の先生にしました。「インポテンツのことも可能性はもちろんある」ということ。で、「垂れ流しは、まあまずありません」と。「今までも、私の患者ではもうずっと生涯っていうのはありません」と。「まあ1年なり2年なりというのはありますけど、それは治っていくものですよ」という説明でしたから、そしたらいいかなと。ま、今までなかったやつがあるということはゼロじゃないわけですからね、ま、それはなったらなったでしょうがないわけですから(笑)。
まあ結局、インポテンツっていうんか、ああいう、結局なるんやっていうことですわ。ほいで、まあ、「ケアとしては、またいろいろと、相談してくれたらええんやけども」っていう先生のお話もありましたけどね。
――その辺、やっぱり前立腺がんって、生殖器にかかわるものですから、治療の選択のときに、そこをすごく気にされる方もいらっしゃると思うんですね。
ええ、そのときね。結局、「夫婦でいっぺん、話しなさい」っちゅうことで、ちょうど半時間ぐらい、「部屋で2人で話せえ」っちゅうて、先生、出ていっとよ。ほいで、その中で、先生の話では「もうそんな、あかんようなるのやったら、もう手術せんと、注射でもう(男性ホルモンを)抑えるような注射が、ええ注射があるんで、もうそれでするって言う人もたまにあるんで、よく相談しなさい」って、先生、出ていってもうたんよ。ほやけど、もうそんなんやったけど、もう取っといてもらうっちゅうことで、手術に踏み切ったんです。
――ご夫婦でお話しされてっていうことなんですね?
はい、そうです。
――やっぱりそれは、どっちかっていうと、手術で取るほうを優先された?
はい、そうです。