投稿者「dipex-j」のアーカイブ

前立腺がんの語り

手術後も100%回復というわけではなく、排尿後の尿滴下はなくならない。尿を出し切るために色々工夫をしているが、骨盤底筋体操の効果をその中で初めて感じた

あの漏れるって言いましたよね、先生が。だけど、多少は漏れるんだよっていうことは言ったけども、私の場合はぜん、それが嫌だから、嫌ですからね、自分なりに考えたわけですよ、うん。

――工夫をされてるんですよね。

工夫します。そしてなるべく、あの…なんだ。膀胱の中を空にする。確かにあれ溜まるんですよね、全部は出きらないで。誰でも。それを全部、こう、下から上に向かってしごいて。あの 、立ってする、でしかもあの、壁に向かってかけるっていうのがね、一番出がいいんですよ、ええ 、
それ で、えー、(押して排尿してから)1分ぐらいですかね、とまたバルーンからカフへ、塩水がもどってきて閉まるわけですから。だから、その、なんていうんですかね、ですから、おしっこが溜まってる状況だから、まだ、あるなっていう感覚があった場合は、もう一度ポンプを押すわけですよね、そしてまた出す。それでしかも、あの…恐らくね、そんな程度でやると漏れが生じるから、ですから、あの私の場合はですよ、下から尿道をしごいて、上へ向かってね。で、全部出しちゃう。と同時にその前に何だ…。

――骨盤?

骨盤底筋の運動で、その、何回か出すわけですよ。それはなにも、正常な人ちゅうのは皆やっているわけですから、男の方はね。女性もやっているんじゃないかと思うんだよね、ある程度その、まだ、出す場合には少し、ぐっとしめて、全部、あの、おしっこ出しちゃうっていうのは。それ女性もやってると思いますよ、恐らく。それはですから、その運動をしてると、要するにシメがいいんだよね。バッと出ますから(笑)。そのためには、あの、今までその、なんていうのかね、あの2年半(骨盤底筋運動を)やってきましたけども、その、報いがなかったものが、今度また、この人工物が入れたものに対して、それが活躍してくれるわけです 。

前立腺がんの語り

尿漏れがひどかった時はお風呂にゆっくりつかれなかったし、買い物に出ると2~3時間に4~5回トイレに行かなければならなかった。手術後の今は地獄から天国に来たようだ

――ちなみにあの、尿漏れがひどかったときには、できなかったことっていうと、思い浮かぶものってなにかありますか。逆に減って…。

できなかったことは、お風呂に入らなかったこと。まあ、ゆっくりね、沈まなかったことと。うん、やっぱりパッドの交換ですよね。

――その、お出かけをするときに、その、どこか遠方出かけて。

もうパッドをね、必ず持参していかなきゃ、あの、いけないんですよ、ええ。

――ですよね、今はもう全然。必要がない。

ええ。もう常に自分の中に、もう、かばんを常に持ってますから、その中にパッド入れて、それで動いている。んで、終わったらまた、女房が(笑)かたまって持ってるから、3つか4つ持ってるんですよ。それまた一つもらって入れとくと、ええ。なにしろそれが一番、あの、気がかりでしたね 。
これはね、もう外出してもね、トイレに行きっきりですよ。まああの、どっか、この辺の、あの、なんていうんですか、あの。
「(同席者)イオンモールとかありますよね、うん。」
ああいうところへ行って、4~5回は行くね、2~3時間の間に。

――2~3時間の間に。

3時間ぐらいで、ええ。

――4~5回行かれる。

ええ。嫌になりますよ。だからまあ、先生 にもよく言うんだけども。先生、地獄から天国に来たようなもんです。だけど、それが慣れると当たり前になっちゃうんだよね、人間っていうのは。だから、もっといいことないのかなっていうふうに考えてんだけど、ね、うん 。

前立腺がんの語り

人工尿道括約筋を装着して1ヶ月は、体に慣らす時間が必要だったようで、その間は漏れっぱなしの状態。その後、機械が使えるようになると、パッドは要らなくなった

あの 、バルーンっていう、まあ溜まる場所があって、食塩、まあ、食塩水が。それとあの、カフっていうのが。カフであの、要するに尿道を締めるんですよね、あれは。締めておしっこ止めるわけですから。それとポンプとがあって、この三つが関連していて、それであの、要するにポンプを押すと、カフからバルーンの方へ、まあ風船みたいなもんですけど。バルーンの方へ食塩水が流れて、空洞になっておしっこが出ると 。
それ を挿入(装着)して1カ月はね、この体に慣らすんですね、この機械が。慣れていくまでに、だから、その間は漏っているわけですよ。で、その、機械がこう、体になじんでいく期間を取っているんでしょうね、1カ月。ええ。そこでもう嫌な…あの受け付けない人もいるんでしょうね、身体が。そういうのを見てるんじゃないのかなと私は思いました。ま、多分そういうことを(医師が)言ったのかもわからないけど。

――はい、はい。1カ月間は、じゃあずっと漏れっぱなし。

ええ、漏れっぱなしで。機械は入ってるけども 、

――お風呂の入れるようになったもの1カ月後くらいですか。

そうですね。はい。

――パッドが外せるようになったのもそれぐらい。

そうですね、ええ。

――ああ。ちなみに、今はもう一切パッドを使ってらっしゃらない。

ええ、使ってないです、ええ。

――ああ、そうですか。じゃあかなり大きく生活が変わられましたね。

まあ(笑)なんつうのかね、自分なりに、精神が非常に、あの、安定してきたような気がしましたね、ええ 。

前立腺がんの語り

手術後は痛みも何もなかったが、埋め込まれた人工物に触れる違和感が1ヶ月はぬぐえなかった

――でその、人工 尿道括約筋の手術のときにも。

痛みはないですよ、なかったですね、ええ。

――うん、全然不愉快な症状はなかった。

ええ。ない。ないけどね、触るわけですよね、触れば…ここを。それが慣れるまでは、あの、やっぱり、あの…違和感があるんですよね。

――その新しい装置が入ったっていう違和感。

空気っていうよりか、その人工物が入るわけですから。その違和感ていうのは、日が経つに連れてなくなってきますよ、ええ。

――大体どれくらい慣れるまで時間がかかりましたか。

あ、慣れるのですか。

――ええ、違和感が消えるまで。

違和感が消えるのは1カ月くらいかかったですかね、ええ 。

――で、あの、実際その人工物が入るっていうことで、違和感っておっしゃいましたけど。その違和感っていうのは、それは重さですか、形ですか、両方ですか。

形ですね。ええ。

――やっぱり、ちょっと自分の、その、ちょっと、すいません、あの、言い方としてあれかもしれませんけども、性器の形が変わったっていう感じありますか。

あのね、そこまではいかないけども、手で触るでしょ。その、人工物が手で触れるんですよ。それが、あの非常に、あの慣れるまで嫌だった、ってことですよね。

――うん、うん。触れるっていうのが、手で触れるっていうのが、あるなっていう感じが。

ええ、それはもう、ここのところのボタンを押して出すわけですから、まあ、ポンプをね、押してから。ポンプを押すと、まあ、カフに詰まっている、食…。

――生理食塩水。

食塩水ですね。あれが、あの、バルーンの方へいって、出てくるわけですから、おしっこが 。

前立腺がんの語り

妻のアイディアで女性用ガードルを使い、何とか居合道の稽古はできるようになったが、尿が陰部にくっつく感覚が嫌で、2年も経つとノイローゼ一歩手前になった

――あの 、通常男性用のパンツと、あの、ガードル、その、履き心地、違いってどんな感じだったんですか。

あのね、女性用のガードルでないとね、あの、男の場合ではふくらみがあるでしょ。それじゃあの、だめなんですよね。で、あの、ぴたっと押してくるやつ(笑)。ちょどそれが、あの、なんていうんですか、パッドがぴしゃっと、前に、あの…収まりますからね。それで、あの、それ全部受けるようになってから、助かりました。

――で、あの、ガードルでぴたっと、こう密着できるようになったので、ようやく、そのお稽古の方に。

ええ。運動できるようになったんですね。

――なって、んー。で、あのー、まあ、でも、随分、その、尿漏れに悩まされた期間っていうのは長かったんですか。

ええ。あのねえ、この、なんだ、えー…人工尿道括約筋ね、これにしてもらうまではね、あの、最初のね、まあパッドがありましたから。

――はい。

ですから、あの、まあ最初の1年、2年ぐらいはよかったんです。それからあの、だんだんやっぱり、それを…ここに、であのー、やっぱり、溜まってくると、あのー…そこにおしっこの液が、全体へくっつくわけですよね。で、それがずーっとついてるわけですから。それがだんだん嫌になってきて、まあ、ほんとうに。まあ、ノイローゼになる一歩手前ぐらいまでいきましたね、ええ。

――ああー。

2年ぐらいまではね、なんとかあの、最初のその、嫌な部分がなくなったから、それで、稽古もできてたけども、やっぱりそれがだんだん2年ぐらい続いてくると、やっぱり、あの、なんていうのかな、あの…まあ、常におしっこが自分の体に接触しているわけですから、周りにね。だから、それがまあ、ほんとにあの、辛くなりましてね 。

前立腺がんの語り

重い尿漏れがあり、骨盤底筋体操を毎日座禅するときに200回やっていたが、尿漏れは全く改善されなかった

それ (骨盤底筋運動)をやれば止まると自分では思ってたんだから。それをやるしかないって言われたけども、それをやれば止まる、なら毎日毎日やりましたからね、ええ。

――毎日毎日運動されてたんですね、骨盤底筋運動。

ええ。あの、自分はあの、座禅もするんですよね。そのときにね、その前に、その、自分であの、肛門を締める運動をね、200回ばかりやって 、そしてあの、まあ座禅を終わるわけですからね。ええ。

――200回。

ええ。

――ああー。座禅っていうのはどれくらいの、その、頻度でやられるんですか。1日1回、それとも。

1日1回です。

――ああ、じゃあほとんど毎日。

毎日やります。

――ああ、それでも、やはり全然改善しなかったんですか。

しなかったですね、ええ。

前立腺がんの語り

ロボット手術で12日間入院、退院後はすぐ仕事に復帰した。気になるのはくしゃみや咳の時の尿漏れだったが、それも半年ほどで、あとは普段通りの生活だった

―― で、その、まあ、退院されて、で、あのー、割とこう、まあ12日間ということでしたっけ。その12日間というその入院期間、病院にいらっしゃって、で、お仕事にはいつごろに復帰されたんですか。

あ、もう退院してすぐです。

――お体の調子どうでしたか、そのころは。

別に、ですから、あのー、まあ、気になるのはその尿漏れというだけですよね。だから、あの、やっぱりくしゃみをするとか、せきをするとか、そういうときにちょっと漏れるということはあるんですよ、どうしてもなんですけど。だから、その感覚だけが気になるだけで、あとはもう普通ですね。

――1カ月たったらそれもなくなって、ほとんど。

えーと、いや、1カ月過ぎても、せきをしたり、あのー、すると、何か力入れたりするとちょっと漏れます。

――ああ。その感覚はちょっとおありなんですね。でも、基本的には…。

それも半年ぐらいですかね。

――半年ぐらい。ああ。じゃ、あの、本当に年月が過ぎるほどに徐々に徐々に回復していってっていう。

そうですね、そんな感じですね。

――じゃ、あの、お仕事のやってらっしゃる中で、例えば、その、尿漏れがあるからこれはちょっと今は控えたほうがいいなとか、手術直後だからこれはやめたほうがいいなっていうふうに、何か生活上工夫されたこととかは。

特になかったですね。

前立腺がんの語り

ロボット手術を受けるまで、4か月ぐらい待つ必要があった。転移がないのはわかっていたが、待っている間に転移したら困る…という気持ちだった

―― で、そして、そういう流れで、「じゃあロボット手術を受けます」っていうふうに決められて、実際にロボット手術を受けるまでの、その間の期間っていうのは、待つ時間というのはありましたか、それともすぐ手術という形になったんですか。

いや、そのときね…手術、まだあの…手術室が全部満タンでっていうことで。ええと、4か月ぐらい、あの伸ばして、もう8月いっぱいはもう、いっぱいになってますからってことで。「じゃあ9月ですね」って。で、9月にしてもらったですけどね。だから、「手術してください」、「手術しましょう」っていうことになってから、どれ、4か月ぐらいあるのかな。うん。

―― 5月とか4月ぐらいに手術しましょうって話になって、実際じゃあ手術を受けられたのが9月とか、まあ夏の終わりぐらいって感じ。

そうです。ちょうどそのころに、私の仕事の方も、ブドウの収穫が一段落するということで。

―― 待ってる間のお気持ちとか、どんなふうに過ごしてらっしゃたかっていうことちょっとお聞きしてもいいですか。

あの、あれは普通に、仕事とか何とかは普通にやってましたけどもね。気持ちの上じゃ早い方がいいなって…なんて言うかな、骨に転移しちゃまずいよとか、なんとかっていうそういう話はよく聞くから。前立腺がんってわかってからは、テレビでやるあの番組の中でも何でも、あの…例えばあの将棋の米長さんがああなっちゃったのも、これあの、なんか骨まで行っちゃって、骨まで転移しちゃってこうなったよと。で、そういう話は聞けば「俺は、俺のは、どうなってるなあ」ちょうどその、検査で検査であるってわかった時点で、○病院でもいろんな検査してくれましてね。「まだ転移してません。どこにも転移してません」ちゅうあれはあったんだけんど、「でも1か月たてばどうなるかわからんじゃんな、2か月たてばどうなる、手術までにどっか…(笑)転移したらば困るなあ」と。そんな気持ちの方が強くて、早くできんもんかな(笑)っつうのはあったですね。

前立腺がんの語り

保険診療であったのと、農協の共済保険に入っていたので、金銭的な負担は「この程度ですんだか、よかった」という程度だった

―― ロボット手術を選択されて、経済的なご負担どのくらいなものだったか、どういうふうに感じられたかっていうこと、教えていただけますか。

ええ。まああの…あれははっきり言って、俺の場合は農協の保険にも入ってますし。あの、「あれ、これだけで済んどうか」っというふうな感じでした。ええ。

―― なるほど。農協の保険の方にも入られてたんですね。

ええ、ええ。そういう感じで実際、この病院から町役場の方へ行くのは、相当な金額だと思うけども、私の払った金額は「ほうか、よかったなあ。この程度でいいなあ、よかったなあ」というような金額でした。

―― その、がん保険の方に入られてたんですね?

え?

―― そのがん保険の方に入られてたってことですね。

いや、がん保険じゃないですけども。

―― あ、違うんですか。医療保険みたいなものですか、農協から。

ええ、私ども農協の生命共済っていうのがあるんです。ええ。あれをもう、若いときから入ってるんです。ええ。

―― ああ、それでじゃあ、自己負担はほとんどないような状態で治療が受けられたっていう感じなんですかね。

うん、ほとんどでもないけどね。農協からくるのはあとになって、書類を出してから、あの戻って来るもんで。

―― ああ、じゃあ一度とりあえず支払ったあとに、あとからお金が戻って来るっていう形なんですね。

「これだけかかりましたよ」ってあれを出せば、ほしたら…ええと何割だ、2割ぐらいかな?…もっとかな、ああもっと少なかったかな? それにしてもあれだ、「ああ、これだけで済んだか」と、こういう感じでした。

前立腺がんの語り

ロボット手術は2011年当時、先進医療で130万かかった。翌年保険適用になり、知っていればと思ったが転移の心配もあるし早めで良かったとも思う

―― あの、経済的な負担が、あの、どれぐらいあったかというところ、あの、もしよろしければ、どれぐらいお金がかかったか。

これは言っていいんでしょうね。あの、えーと、手術代が、あの、130万ぐらいです。その当時。で、えー、保険の適用はありませんと。で、それ以外に…ロボット手術そのものが130万ですね、それ以外にいろんな治療とか薬の投入だとかありますよね。それはもちろん保険。それらが全部仮に保険でも金額もかさんでも、あの、高額医療補助制度(※高額療養費制度)がありますね、治療費の。あれに適用すれば、あの、1年間に私の場合で15万ぐらいで打ち切りなんですね。で、結果的にはですから130何万かかりましたけどね。

―― その、ロボット手術の部分で、お金がそれだけかかったということ。

部分がほとんどです。ほとんどです。ただですね、ここはもう、あの、あれなんですけど、私は12月に手術しましたね。ところが、翌年の4月にロボット治療も保険の対象になったんです。私はその手術時には知らなかった(笑)。だから、まあ、終わってしまった話ですからね。

―― それ、でも、お聞きになってどう思われました?

はは、これは、まあ、仮にそれ知ってたら、4月以降にずらしたかもしれないですよね。

―― あ、可能性はありましたか。

いやあ、それは例えば、4月になったら保険適用になりますよと言われれば、じゃあ4月まで我慢しましょうかっていうことにはなりますよね。半年ぐらいっていうか5カ月ぐらい。ただ、そのことによって転移したかもしれないということを考えればですよ、まあ、これはいいんだろうなと。

―― 早目にできたのも良かっただろうと。

早目に取っていいだろうなと。