インタビュー時年齢:28歳(2019年3月)
障害の内容:内部障害(小腸機能障害による短腸症候群)
学校と専攻:大学・社会福祉(2008年度入学)

中部地方在住の男性。生後3日で中腸軸捻転のため小腸を17センチ残して切除し、それ以降ずっと、夜間に栄養点滴を行う生活をしている。社会福祉を専攻した大学ではサークル活動にのめり込み、とても楽しんだ。就職は、体力や福利厚生の面から公務員を選択し、現在は小学校の事務員として働いている。美味しいものを食べることが趣味。

プロフィール詳細

卓也(たくや・仮名)さんは、生後3日で中腸軸捻転という病気のため腸を切除し、小腸の長さが17センチとなった。小腸が短いと食事から栄養を吸収できないため、自宅で夜間に点滴で栄養を補う治療を28年間ずっと行っている。小・中・高は普通校で過ごしており、食事制限もなかったが、点滴用に体内に入れた管から感染を起こしやすく、1年に2,3回は感染で入院する生活だった。
高校3年の時大きく体調を崩しほとんど受験勉強ができなかったが、担任の先生から、AO入試で受験でき、人の役に立つ社会福祉が学べる大学を勧められた。障害があると福祉が隣にいるような感覚があり、また自宅から通える文系の大学だったので、そこを選んだ。
大学では3つのサークルを掛け持ち、特に聴覚障害の学生のためのノートテイクのボランティアのサークル活動にはのめり込んだ。もともと子どものころ、療養で自宅にいる時間が長く、父親からおさがりのパソコンをもらい、それに闘病中の思いを詩や小説にしてひたすら打ち込んでいたため、タイピングには自信があった。ノートテイクのサークルは、パソコンを使ってできるならと軽い気持ちで入ったが、入ってみると部員が1年生は一人しかおらず、何とかしたいと思うようになった。まず大学の全学生にアンケートを取り、活動のネックになっていることを把握し、それがどうやったら解消できるかを考えて、仕組みや環境を整えていった。結局ノートテイクのサークル活動は、自分の卒論にも発展し、要約筆記や情報保障を行っている全国の大学にアンケート調査を行って論文を書き上げた。このサークルは、自分が卒業する時には後輩が40名ほどいる大きな活動になっていた。他に2つのサークルを行っており、1つのサークルでうまくいったことを別のサークルで試すなど、大学生活はとても充実しており、勉強になることが多かった。
このようにサークル活動を熱心に行っていた学生生活だったが、大学3年の時には体調を崩し、1年間休学した。体の太い血管に管を入れて栄養を入れる処置を続けていると、徐々に太い血管が細くなり、点滴が入らなくなるという現象が起きるが、卓也さんも、それまでに何度かそのような状況になり、その度に使う血管を変えるという手術を行ってきた。だが大学3年のその時は、もう体の中に点滴に使える太い血管が残っていなかったため、心臓に直接カテーテルを埋め込んで点滴をするという、感染をしたら命にかかわる非常にリスクの高い方法を、苦肉の策で選ばざるを得なかった。
就職に関しては、自分は一般企業で働くのは体力的に厳しく、通院が必要なので福利厚生も重要と思い、公務員を選択した。働き始めてからすぐは、責任ある仕事に対するプレッシャーも強く、また、自分が体調を崩すと周りに迷惑をかけることが学生生活とは全く違うと感じた。体調を崩すのは仕方ないが、それでも周囲にとても申し訳ないという気持ちになり、委縮してしまうこともあった。
最近は、根治治療として小腸移植という選択肢が見えてきたので、その手術を受けることを考えている。ただ、まだ症例が少なくリスクもある治療で、休職期間が限られている中、治療を受けたあと今まで通りの仕事に戻れるかという不安がある。こういう体なので、自分自身で生活を支える技術を身につけておかなくてはと思い、模索中。そういう意味で学生時代の唯一の後悔は、お金を稼ぐことにチャレンジしなかったこと。就職して収入を得る以外に、もっと自由な発想で、お金を生み出す活動に挑戦出来たらよかったと思っている。
家族とは、節目節目でよく話をしてきた。母親からは「病気で生んでしまって申し訳ない」といったことを言われたこともあったが、その一方で、病気だから卓也さんを守らなきゃという態度でもなく、「あんたはなんとかなるでしょ」と信頼してももらっている。そんな関係性は、自分にはとても良かった。父親は多くを語らない人だが、後ろの方でいつもサポートしてくれており、精神的に大きな支えになってきた。
日常生活では食べることが大好きなので、仕事が終わったら美味しいものを食べに行こうと計画を立て、日々モチベーションを上げている。食べることで下痢などの症状が出ると予想されるときは、食べる日を金曜日に持って行き、土曜日は小腸と共にゆっくり休むという調整をしている。
また大学入学後に、患者会を通じて同病の人と交流を持つようになった。似たような病気の子どもや親御さんに自分の話をすることで、相手が将来をイメージできるようになることがあり、自分ができることはしていきたいと思っている。

私は: です。

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