投稿者「dipex-j」のアーカイブ

大腸がん検診の語り

食欲もあって体重も減らず、痛みのない血便以外には何も症状はなかった。大腸がんになると便が細くなるというがそれもなかった

―― あのー、まあ、痔で、痔と大腸がんはすごく、こう、隣あわせでね、分かりにくいっていうお話だったんですけれども、痔のほかに、何だか調子悪かったかなっていうことがありますか。

ないです。あのー、一切、食欲はあるし、体重は減らないし、痛みもないし、だからがんだとは思わなかったの。…仕事していても、別に差し支えない。体調はすこぶるよかったです。その、あんな大きながんがおなかん中あるのに、なぜそんなに食欲はあるし痩せないし。不思議ですよね。だから、僕はがんだとはついと思わなかったですね……。

―― おなかがはるとかそういうこと。

おなかもはらなかったし。

―― 快便で。

うん、あのー、便が細くなるっていうんですね。大腸がんの人はがんが、あのー、つまると。普通の便が出ていたんです。おかしいんですよね。あのー、でも、現実には、ものすごくでっかながんがあったんです。だから、その最初の内視鏡入れるまで、がんだっていうことは一切思わなかったです。

―― ということは、これもうほとんど自覚症状は。

ないです。あのー、血便だけです。…痛みのない血便ですね。

大腸がん検診の語り

大腸がんについては、便通の際に痛いとか詰まったなど、なんらかの症状があると思っていた。便潜血検査の結果もよく理解できていなかった

パソコンのモニターで、自分の大腸のその部分を見たときに初めて…何だ、あ、これがわたしの、うん、これがもうがんなんだなという意識を持ちましたけども。でも、動くにも全然差し支えがないし、食べ物にもトイレでも痛いとか、うん、たまっているとか、そういうのは、全然現象的になかったんで。ですから、心配する理由がないんですよね、自分としては。

―― 例えばね、その大腸がんのイメージっていうのは、じゃ、どんな感じでしたかね。これがあれば疑ったかもしれないなっていうことありますか。

うーん、うん、全然そういうのは考えたことがなかったですね。大腸がんなんていうのは、うーん、ま、症状があるだろうと思ったんですね。痛い、ま、痛いとかつまったとか、例えば。

―― 痛いとかつまった。

ええ、便が出てこないとか。そういうような症状があれば、自分であれっと思ったかもしれないけども、血が出たぐらいでは、全然びくともしなかったですし、潜血でプラスが三つだというのも、これが何だというイメージで無知がそうさせたことになるんですけども。

大腸がん検診の語り

症状が出てから受診する人には命に関わるようながんが見つかることが多い

実際に診療を行っておりますと、便潜血検査で陽性となって来る方が多いんですが、やはりいろんな医療機関から精密検査を依頼される方の中には、やはり症状が出てから、いろんな貧血が少しずつ出たり、便秘になったり、おなかが張ったりとかして医療機関を受けて、その精密検査として受けに来る方がいらっしゃいます。そういった方に非常に進んだ、命に関わるような大腸がんが見つかることが多いということをよく経験いたします。検査を行っておりますと、非常に進んだ大腸がんが見つかるというか、発見する機会が多いというのが現状です。

大腸がん検診の語り

食生活の変化で大腸がんは増えている。大腸がんになる人は男性のほうが多いが、臓器別の死亡率では女性のがん死亡率の1位を占めている

わが国では食生活の欧米化、肉食が増えてきているということから、これは明らかになっていますけれども、大腸がんは増えてきていると。現在のところ、1年間に大腸がんにかかる方が10万人。それから、大腸がんで亡くなる方がその半数の5万人と、じわじわとずっと増え続けてきているというのが現状です。特に男性・女性で比較しますと、男性のほうがやはりがんの罹患率は高いわけなんですが、臓器別のがんの死亡率を見ると、これは2012年のデータですけれども、女性では死亡率の第1位、男性では3位というデータがあります。だから、徐々に死亡率の上位を占めてきているというのがこの大腸がんであります。

大腸がん検診の語り

最近まで女性のがんの死因で大腸がんが一番多いとは知らなかった。乳がんや子宮がんの方が多いと思っていた(音声のみ)

―― でも、やっぱり婦人科系のほうが怖いっていうイメージありますか。

そうですね、あの、今、おっしゃったように、わたしも、女性のその、ま、がんの死因で大腸がんが一番多いっていうの、実は、最近まで知らなくって、あの、ちょっと驚いた次第です(笑)。あの、どうしても、その乳がんですとか子宮がんとかそういったことのほうが多い気でいたんですけれども、たまたま、その、ま、仕事の関係で、大腸がんが一番女性の中で多いっていうのを知ったときに、あのー、ま、意外でもあり、あとはほんとに、……そうですね、ほんとに、意外、意外でしたね。

―― うーん、あまり、今、もし、あのー、ま、生活なさっている周りの、あの、お子さんの友達のお母さまなんかで…乳がんとかはいても大腸がんはいなかった。

あ、いなかったですね。はい、そうですね、ま、たまたまかもしれないんですけれども、知っている中で、その女性で…そうですね、腸のがんっていう方は、…きっとほんとにたまたまなんでしょうけど、…いなかったので。でも、何か頭の中では、ほんとにもう…ほんとに、女性特有の…がんのほうがもう断然多いという。で、そちらはほんとに気をつけなきゃいけないっていう気はしていたので。はい……。

大腸がん検診の語り

いろんなブログを見て情報収集しようと思ったが、ほとんどが直腸がんかS状結腸のがんについてのブログで、上行結腸のブログはひとつも見つからなかった

―― そのとき、例えば、闘病記を見たりとかブログを見たりとか、…そういうことはしない?

あ、それは、見ました。あの、いろいろなブログを見て、あのー、ああ、ただ…ですね、あのー、えーと、一番最初の、あのー、内視鏡の検査のときに「横行結腸だ」って言われたんですね。そうすると、横行結腸のがんのブログは…一つしかありませんでした。……あのー、大腸がんでも、あの、ほとんどが直腸がんか S状結腸で、横行結腸は一つで、うーん、最終的には、あの、上行結腸だったんですけど。上行結腸のブログは一つも今のところまだ見つけていません。大体、大腸がんの10%ぐらいですか、上行結腸がんっていうの。…70%は、ほとんど直腸とS状結腸になってしまうので、いろんなブログとか見ても、ほとんどS状結腸か、直腸のお話で、横行結腸とか上行結腸っていうのは、あと下行結腸もあるんですけど、ま、ほとんどありませんね。

大腸がん検診の語り

大腸がんについての知識は実際になってみるまではほとんどなかった。周りにもあまり大腸がんの患者はいなかった(音声のみ)

―― 大腸がんになる前の、大腸がんについてのイメージであるとか、あるいは、ご存知だったこと、何かありますか?

いや、あんまりなくてですね(笑)。胃の時は、胃がん(笑)になりましたから、胃のことは勉強しましたけど。もう一つ、その当時ので、自分で、転移…あの、もう一つ、がんを…になるとは思いもしませんので。やっぱり、胃だけに(笑)、あの、知識はあれしましたけど。ですから、その大腸がんになるまでは、もう、大腸の知識はなかったですね。逆に…胃の検査の時に、女房が「大腸もやったら?」というようなことありましたけど、やっぱり、あの検査の、あの煩わしさというのを(笑)間接的には知ってましたから、それ、避けたとこもありましたけど。やっぱり、人間ドックで結果が出て、やっとという感じですね。

―― その、ご家族には、えーと、がんの方はあんまりいらっしゃらないということだったんですけども、例えば、会社の方であるとか、あの、近隣で、お知り合いの方とかで、大腸がんの方とかはいらっしゃらなかったですかね?

えーとね、食道がんとかも知ってますけど、あんまりね、大腸がんの事例がなくて。私も、そういう人がいたら聞いてたりしたんでしょうけど、結局、こう、インターネットなんかで調べて、えー、やった程度でしたね。

―― そうすると、その、検査を受けて、大腸がんっていうのがわかってから、色々、こう、調べられたんですね。

はい、そうですね。それこそ、泥縄でした。(笑)

大腸がん検診の語り

インタビュー08:プロフィール

関東地方在住。栗原さん(仮名)は会社員の夫と息子の3人暮らしで、短大を卒業してしばらく絵の勉強をした後、出版関連の会社に勤務している。以前の会社に5,6年ほど勤めた後、現在の職場(小規模な編集デザイン会社)に移った。以前勤めていた出版社では定期健康診断を実施していたが、現在の職場では入社以来18年ほど定期健診は行われてこなかった。もともとフリーランスの人々が集まって作った会社だったこともあり、健康診断等は社員の自己責任とみなされてきたが、近年になって経営体制が変わったのを機に、ようやく会社主体で実施するようになった。
数年前に乳がんに罹患した経験がある。その際は検診で見つけたのではなく、自分で気づいて病院に行った。現在は治療も済み、転移することもなく、3ヶ月に1度の通院だけでほとんど通常通りの生活に戻ることができている。もともとがん家系ではないため、乳がんもたまたま発症したのではないかと思っている。
大腸がんの検診に関しては、健康診断のときに便潜血検査のための採取用キットが送られてくるので、提出してなくてはいけないと思って一応やっているが、自ら進んで受けようとは思わない。会社に労務管理の専任者がいるわけでもなく、通知される再検査への応答は自己責任となっているので。栗原さん自身も再検査の通知を受け取ったが、病院に行かずに1年が経過する。単に「踏ん張りすぎた」ために血が出たのではないかと自己判断した。「要再検査」と言われてそのままにしていて、次の年の検査では何ともなかったという人も会社にいるので、自分も一緒だろうと思っている。以前出産時に痔になったことがあるが、やはりおしりのことになると恥ずかしいので、目をつぶっているようなところがある。また採取キットに関しても、便が出る日と出ない日があるので、検診の日に合わせて採取することが難しい。もっと手軽に検査ができる、簡単なキットがあればいいと感じている。