投稿者「dipex-j」のアーカイブ

乳がんの語り

過去の経験から病院・医師選びに慎重だったが、先生の目や表情という第一印象でピンときた

そのときに、先生に初めてお会いしたんですけども、そのときの先生のこう表情とか目とか、まあすごくこう自分にピンときたんですね。「ああ、この先生にやっていただきたいな」って思って。その前にちょっと、(子宮)筋腫の手術を何年か前にしたときに、ちょっと医師との疎通がうまくいかなくって、術後等もちょっと悲しい思いをしたことがあったので、病院とかお医者さん(選び)っていうのは自分にとって、すごい慎重だったんですね。
それで、そのときに、その先生の、(検査結果を)診て、「ああ、僕だったらこういう手術をしますけども、僕は。この乳がんは10年診なきゃいけないから」っていう言葉を言ったときに、「あっ、この先生は10年診てくれるつもりなんだわ」って、そのときに思いましてね。それで、「ああ、この先生に、分かんないけど任せましょう」って。

乳がんの語り

がんは生と死にかかわる病気だから、伝えると相手も反応に困ってしまうことがわかる。だから、話せないし、話してもつらさを分かってもらうのは難しいと思う (音声のみ)

 がんのことってあまり人に話せないんですよね、不思議なことに。子宮筋腫のことは、私が話したいか、話したくないかの問題で話せたんですけども、がんっていうのは話せないんですよね。だから、あのー、こう本当に限られた数人にだけ話しして、それで、本当に本当の気持ちをまた話せないんですよ。どうしてなんでしょうね。こう筋腫のときは本心を話したんです。「つらいのよ」とか、「こんなのが大変なのよ」とか。だけど、がんは「つらいのよ」って言えないんですよ。本当にほとんど間を同じような時期に2つの病気をまあ一度にやったようなもんですけども、病気ってこんなにも違うのかなと思いました。ええ。
 で、もう何で言えないのかなと思ったら、やっぱり言ってもしょうがないから言えないんですよね。で、それこそ生死と向かい合った病気だから、言えば相手は「大丈夫よ」とも言えないし、かといって、「元気出して」とも言えないだろうし、ただ、聞くほかないっていうのが分かるから、だから言ってもしょうがないんだって。だから、ただ、何というか、こう受け止めてくれるだろうと思う相手に話すことしかできないんですよね。言ったから、何か言ってほしいとか、慰めてほしいとか、そういうことも無理なのは分かっているから、そういう意味ではとても孤独な病気だなと思いましたね。

乳がんの語り

体力が落ちているので、歩くにしても毎日続けるのは大変。疲れをためないよう、夜更かししないで、最低でも夜5時間は寝るようにしている(音声のみ)

私もそれほど体力のあるほうではなかったので、それが今は、例えば一日何か行事があったりして、仕事ではなくね、子どもの行事とか、そういうので一日時間がつぶれたら、もう次の日は動けないですよね。で、睡眠時間なんか気を付けなければ、1年中いっつもだるくて具合悪い状態で。だから、歩くことから始めなくちゃなと思って一日3,000歩とか、5,000歩とか、何か歩き始めたんですけども、やっぱりそういうのが精いっぱいなんですよね、毎日やるっていうことになると。一日だけとかいうんだったら、もちろん1万歩でも歩けるんですけど、毎日続けるというのはやっぱり体力がないとできないことなんですよね。だから、今、本当にゼロからやっているような気持ちで。
あと、あの、体は消耗品なんだって、このごろつくづく思うもんですから、まあ若い子どもたちにね、「体は消耗品だ」って、私、口癖のようにこのごろ言ってますけど。だから、大事に使えば長持ちするし、荒っぽい使い方すれば傷むし、傷んだものはもう戻らないって。いくら今、お医者さんが治してくれるって言ったって、1回傷んだものは元には絶対に戻らないって。
睡眠時間には、なるべく(気をつけている)。でも、ついつい、もともとが夜更かし好きなものですから、遅くなりがちなんですけども、それでも最低これだけは寝ようとか。子どものお弁当を朝作らなきゃいけないので、朝、起きる時間がもう決まっているので、だから、夜寝る時間はもう最低この時間には寝ようとか。前は、「もういいや、今日は忙しいからちょっと夜更かしっていうか、明け方くらいまで起きて、その代わりお昼寝をすればいい」とかね、そういうふうに、睡眠時間のやりくりしてたんですけど、やっぱり夜は寝るものなんだなっていうことですよね。ええ。だから、まあ最低でも5時間は寝られるようにしようって、今はそう思ってます。

乳がんの語り

母がいろんな健康食品を送ってくるので、害がないと思ったものは使っているが、規則正しい生活になることが基本で、健康食品に頼っても無駄だと思う(音声のみ)

あの、私が特に見つけてきたわけじゃないんですが、母がいろんなものを送ってくるもんですから、だから、害がないなと思ったものは、「はい、はい」って言って使っています。ええ。で、これはちょっと変だなっていうようなものは、まあそんなものはあんまり送ってこないですけども、だから、食品の中に入るようなものとか、少々量をとっても、排泄されてしまうような心配のないものですか、そういうものを、がんに効くとかよく言われてますよね、ええ。で、もう母の気持ちなので、それは送ってきたら、高いものなの、分かっているので間延びさせながら、「まだある、まだある」とか言いながら、でも、ちゃんと、使ってます。ええ。
今、送ってきているのはフルーツの味噌みたいなもんですね、発酵食品で何年間か熟成させたものみたいですね。で、この間、何か、何ていったらいいかなあ…何か最近出てきているもので、昔は肥料なんか、家庭用の生ごみを肥料に変えるのに使ったそんなものがあるらしく、それが今、商品化されて…すみません、ちょっと名前は分かんないですけど、最近そんなのを送ってきてますね。それで、それは受け取って、まだ使ってないです。しまってあります。
私はとにかく不規則な暮らしを直さなければ、何をやっても無駄だろうと思っているので、まずそこからと思っています。それで、規則正しい生活ができるようになれば、体力が戻ってくると思うので、それで元気になって、で、普通の人と同じように生活ができるようになれば、こう前向きになってくると思いますし、そこから始まりかなと思っているので、その前に健康食品に頼ってもしょうがないかなと思っていますけども、ええ。

乳がんの語り

センチネル生検だけで、リンパ節は取っていないため、腕のほうは問題ないが、乳房切除した胸の違和感は残っている (音声のみ)

あの、幸いなことに、非浸潤がんなので、リンパのほうに行ったりとかはなかったものですから、リンパは全然取ってないので、センチネルっていうんですか、あの、幾つか代表なのは採って調べましたけど、だから、全然腕のほうの問題はないです。術後も、もうすぐに重いものも持てましたし、傷がつれるので腕上げたりするのが最初のうちは若干大変だったときもありましたけど、もうそれも今は全然ないです。
ただ、ちょっと思っていたのと違ったのは、こうやっぱりあるものを取ると、そこの部分が、麻痺したようなというのかな。だから、胸があったとこの平面のところは、今は多分こう、鉛筆の先みたいなので突っついても何も感じないですね。ええ、それは初めて知りました。そういうものなのだなと思って。で、えっと、それが入院中にそれに気が付いて、先生に「何か皮膚が感じない、何も触っても分かんないんだけど」って言ったら、「あ、その感覚はもう、一生だから慣れてもらうしかないし、少しは良くなるけども、でも、一生そういうものだよ」と言われたので、あ、そうかと思って。だから、そこはちょっと不思議な、今でもまだ慣れていないので、不思議な気がしますけど。だから、そうですね。でも、やっぱり人の体っていうのは、メスを入れて元に戻るっていうことはないんだなと思いました。

乳がんの語り

ワイヤー入りの下着はずれやすいのでワイヤーは抜いてしまった。メーカーの補整下着は合わないので、個人が自作している下着をネットを通じて分けてもらったりしている (音声のみ)

だから、胸って2つあって1つだから、そういうふうに下着が作られてるっていうのも、なくなって初めて気が付いたんです。だから、例えば「寄せて上げる」下着とか、ああいうのもまあ付けてみたんですね、中に入れて、でも、寄せるっていうのは両方あって初めてバランスが取れて寄せられるんですよね。片っ方だと、横に動くんですよね。こう、ずずっと。だから、ワイヤー入りっていうのが何の意味もなくなっちゃったんです。だから、ワイヤー入りの下着を使うためには、逆に胸の下のゴムの部分をきつくして、そこで締めなきゃいけないんですよね。だから、普通の胸の人は両方の胸で締まって支えるものなんでしょうけど、ワイヤーの部分で。それをこう胸の胸囲で締めて支えなきゃいけないとなるとやっぱり苦しいですから、もうそれはすぐにあきらめて、それで買ってきた、昔使っていた下着なんかのワイヤーを、全部穴を開けて抜いてしまいました。うん。
それで、一番大きなメーカーの相談室に行ったんですけども、やっぱり合うものがなくて、それでまあかえって、例えばその辺にあるストッキングなんかを丸めて使ったりとか、そういうほうが使い勝手が良かったりするんですけども、でも、それだと今度どうしても動くから、で、やっぱりサイト探したら、同じような悩みの人が自分で手作り下着を作って、で、それがとても良かったから、お分けしますっていうサイトがあって、もう本当に良心的なお値段だったので、ただスポンジをこう丸く形を作って、スナップでブラジャーに留めるような簡単なものなんですけども、それが使いやすくって、それを使っています。でも、やっぱり時々重さが欲しいときもやっぱりあるんで、そういうときはヌーブラっていうんですか、今、ありますね。若い子が使っている。あれが1個ずつ分かれるので、その片っ方を2つ入れれば結構重さとか、大きくなったりとかしますし、片っ方だけのときはそんな、あの、反対側のこう、胸の、何ていうんだろう、状態にもよるんですけどね、反対側がこう、ブラジャーの状態では大きく見えるときとか、そういう下着を着けているときは2個重ねたり、リラックスしているような下着のときには1個だけ使ったり、別にちゃんとした補整用のパットじゃなくっても、何でも、何でもいいんだなとこのごろ思っています。

乳がんの語り

ドキドキしながら「温泉デビュー」したが、あっけにとられるくらい誰も関心を示さなかった (音声のみ)

実は、最近温泉へ行ったんですけど、「温泉デビュー」なんて言って、まあ笑いながら行ったんですけど、実際のところは結構ドキドキもので大丈夫なのかと思っていたんですけども、同じその病院で手術した人なんかが「温泉へ行くんだったら堂々と入りなよ」って言われてて、「あの下手に隠したらね、人は見たくなるもんなんだからね」とか言われてて、だから、まあそれは確かにそういうこともあるなと。でも、もちろんそうじゃない、やっぱり隠したいのも分かるし、いろいろ複雑な思いでいたんですけども、何てことはなかったんですね。何か本当にあっけにとられるくらい何てことはなくって、別に誰も関心を示さないですよね。
で、もちろん「あれ?」と思ったとしたって、私が気にしてなければ、はたもそれほど気にしないんですよね。だから、ああ、何だと思って。だから、私が気にしないっていうことが一番重要なんだなって思いました。だから、ああ、これで60になっても温泉旅行は行かれるぞと思っていますけど。

乳がんの語り

術式について手術前日まで迷っていたが、主治医に80歳になったときに後悔しない方を選ぶよう言われ、自分の気持ちが整理でき、全摘を決意した(音声のみ)

そのとき(手術前日)に先生が一言、まあ私がもうすごい悩んでいたもんで、同じ病室の人たちも、何かハラハラして見てたような感じの、とにかく悩んでいたものですから、で、先生が「あなたが80歳になったときに後悔しないほうを選びなさい」って言われたんです。それまで、事実を事実としてしゃべるだけ、質問したことに的確に答えてくれるっていう、そういうこう無駄口を利かない先生だったんですけども、最後に一言「80(歳)になったときに」っていう言葉を、まあ無駄、先生がしゃべった無駄口らしい無駄口ってそのぐらいしか私は記憶してないんですけれども、それがすごーく頭の中に残って。だから、その当時46歳ですから、80になった自分を想像できないんですよね。
で、80になるまでには、もちろん50代の自分、60代の自分って考えていって、60代ぐらいになったら、温泉に行って、友達ととか、まあ家族ととか、そんな楽しみも持ちたいなって、やっぱり思ったときに、全摘したら、その楽しみを満喫できるのかなって思って、で、80までこう10年ぐらいずつ、こう段階を追って、自分で想像してみたんですけども、やっぱり一番気になるのは、その旅行に行ったときに楽しめるのかなっていうことだったんですけども、でも、反対に言えば、そのぐらいだったんですよね、気になることが。
だから、てことは、私は別に全摘することに対しての違和感はないんだなって自分に確認して、だから、ほかの人に見られることが嫌なだけなんだなっていうことが分かって、で、80になったときに、もしほかの人に見られることが嫌だっていう後悔だけだったら、今、ここで全摘してもきっと大丈夫だろうと思ったんです。

乳がんの語り

生検では非浸潤がんであり、医師は温存を勧めた。いろいろな可能性を考え、温存か全摘か、手術当日の朝まで決められなかった(音声のみ)

私の場合は、まあこれ結論として、えーと、3.5センチの範囲に広がっていたんです。ただ、しこりをつくるタイプのガンじゃないので、しこりではないんですけども、と、まあ決して小さくはないと思うんですけども、だから温存か、全摘かっていうのは、非浸潤がんの可能性のある場合は、本当に分かれるところだって。
これも私、インターネットで調べたんですけども、普通の浸潤がんでしこりになるタイプのものであれば温存という選択肢が、もう今は当たり前なんですけども、非浸潤がんの場合は全摘をすれば限りなく完治に近づくっていうか、理論上は完治っていうふうに私は調べたんですけれども。だから、全摘を選択することで、がんではなくなるかもしれないのが非浸潤がんなんです。だけど、温存を選んでも別にこう予後の、生命の危険度というのは増すわけではなくて、問題はないというふうに言われているんですけれども、その温存することによって、乳房内再発が起こる可能性が出てくるわけで、その乳房内再発したから、こう全身に散るとかそういうことではないんですけども、そのときに、また普通の浸潤がん、命にかかわるような浸潤がんが少し出る可能性もあるわけで、そしたら、もう理論上完治という結論はなくなるんですね。だから、非浸潤がんを全摘すれば理論的完治っていう結論があるけど、温存をした場合、その結論はもしかしたら、ほんの少しの確率だけど、(完治する可能性が)永遠になくなるということもあるのが、もう本当にそこが一番悩みました。
だから、できれば温存できれば、それはそれに越したことはなかったんですけども、こう心配している両親とか、夫の顔を見ていたらやっぱりそういう心配から私自身も解放されたいけど、家族も解放してあげたいなとも思いましたし、子どもたちも安心していられるだろうと思いましたし、まあでもそれよりも何よりもやっぱり自分の気持ちが一番ですけども、だから本当に、温存しようか、手術の当日の朝まで決められなかったんです。

乳がんの語り

手術は納得できるところで受けたかったので、いろいろな人の話を参考にした。最後はその医師に会って信頼できそうだという自分の勘を大事にした (音声のみ)

最初のお二人は手術をするなんて考えもしていなかったから、何にも考えないでかかったので、でも、まじめに手術をしようって思ったときに、子宮筋腫って一度手術をしているものですから、手術っていうものがどういうものかって、まだ、傷跡もまだはっきり生々しくあるような状態だったので、身を持って感じてたところがあるので、その、こう納得できるところをやっぱり選びたかったので、診断してくれたその筋腫の手術をしてくださった病院の先生ももう快く書類とか全部出してくださって、まあ自分の納得できる、患者の意思を尊重してくれるというんですかね、そういうところも、今は、こう自分のところでやりますというような姿勢ではない、そういうものにも本当にありがたいと思いました。だから、自分で選べたんです。患者の会の人たちにも相談したりして、それで、やっぱりここのこの先生がいいっていうような、やっぱり話もいろんな人から聞いて、それで、そこに行って、それで先生の顔を見て、もしもこの人、相性が悪いっていうか、そういうふうに思ったらやめようと思って、それで予約を入れていったんですけども、やっぱり医師と患者っていうのは、まあ子宮筋腫のときも思いましたけど、非常に相性っていうのがあるもんなんだというのを感じてたので、その先生だったら信頼できるなって感じたら、でも、本当にまあ5分ぐらいしか話をしない中でそれを決めるわけだから、こう第六感に頼るしかないんですよね。言葉尻とらえたりとか、そういうことではなくて、印象とか、そのそういう、こう勘を大事にして決めようと思っていたので、とてもその病院の先生は必要なことしかしゃべらない方で、余分なおしゃべりもしないし、厳しいことをパッパッていう方だったんですけども、でも、私には嫌な印象は全然残らなくって、で、言われたことも厳しいけども、正確なことだったんですよね。甘いこととか、あいまいなこととかは、一切言われなかったので、私はそこに信頼を感じたので、この先生にお願いしようと思って、で、そこにお願いしますということで頼みました。