インタビュー時:65歳(2014年12月)疼痛期間:23年 診断名:腰椎椎間板ヘルニア(術後腰椎癒着性クモ膜炎)および右下肢末梢神経症。

北海道在住の女性。椎間板ヘルニアの手術後3年目に突然両足に激痛が出て歩けなくなった。各種のブロック治療を受けたが効果がなく、14年前から医師と相談・調整しながら塩酸モルヒネを使い始め、5~6年ぐらい前より日常生活を何とか送れる状態を維持している。患者会では痛みを仲間と分かち合うことができ、上手に時間を使って楽しむことを学ぶことができた。

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プロフィール詳細

木崎さん(仮名)は、42歳のとき椎間板ヘルニアの悪化により下半身が動かなくなり、手術を受けてしばらくは落ち着いていたが、術後3年目に突然足が動かなくなって、激痛が出た。硬膜外ブロック、内視鏡下硬膜外腔洗浄癒着剥離術を受けるが効果がなかった。50歳のときに、今までに感じたことのない激痛が出て、寝たきりの生活になった。大学病院の麻酔科に入院して、持続硬膜外麻酔、神経根ブロックなどの様々なブロック治療を試しに受けたが、これも効果がなかった。

51歳のときに、大学病院で塩酸モルヒネの処方を初めて受けた。以来10年以上飲み続けているが、痛みが和らいだと感じられるようになったのはここ何年かのこと。飲み始めたときは吐き気の副作用がひどく、薬をつづけた方がよいかわからなかったが、少しずつ良くなってきた。モルヒネに対しては、当初、アヘン患者などのイメージがあったが、最終的にはモルヒネを使って良かったと思う。

塩酸モルヒネの処方に関して、「モルヒネしか飲んでいないのはおかしい、他の薬と合わせて服用すべき」「慢性痛患者の通常処方の3倍以上の量を飲んでいる。そんな人の診療はできない」という医師がいる一方、「安全で用法さえ守ればいいものだから」という医師もいて、医師の考え方が様々であるということに戸惑い、困惑した。モルヒネの処方をしてくれる医師がいなくなることはこの先大きな不安である。

痛みががまんできる限界を超えると、「痛みが全身に広がり、胃も痛くなり、内蔵が痛くなり、顔まで痛くなり、痛みが体中を駆け巡る」感覚になる。全身まで広がる痛みは何ともいえない痛みで、涙がぼろぼろ出てくる。痛みが強いときは、「下半身はいらない、のこぎりで切って捨ててしまいたい」と思う。神様にお願いしたいくらい、痛みを鎮めてほしいと思う。

週1回のペースで開催されていた患者会に約9年参加していたことがあり、痛みを和らげるための情報交換や、家族にも痛いと言えないときに「痛いね」と言い合える仲間がいることで、「頑張れる、痛みが半減する」と思えた。痛いのが死ぬまで続くのなら、痛いことばかり考えないで、上手に時間を使い、楽しんだ方が良いと思えるようになった。

マッサージ、鍼、お灸、整体、テーピング、骨盤矯正、アロマセラピー、漢方(エゾウコギ、高麗人参)などあらゆる補完代替療法は試してみた。数日は効果があるが、すぐに痛みがでるため、今思うと「全然意味がなかった、お金がもったいなかった」と思う。

痛みが出てからも経理事務の常勤仕事をしていたが、治療8年目に座っていることができなくなり、退職を余儀なくされた。子供や母親と同居していた時期は、短期間のパート仕事をしていたが、現在は障害年金や、家族の仕送りで生計を立てている。


※1 硬膜外神経ブロックとは、背骨の中で脊髄を守っている硬膜の外側の隙間に針を刺して、局所麻酔薬を入れることで(神経根に麻酔がかかり、痛みの感覚を脳に伝達する神経の動きを一時的に遮断し痛みを抑えます)また、収縮している血管を緩め、血流を良くすることで慢性の痛みを和らげると考えられている治療です。一般のブロック注射よりも神経を麻痺させる効果が穏やかですが、薬効が切れた場合に痛みが再燃し強まることもあります。

※2 内視鏡下硬膜外腔洗浄癒着剥離術(Epiduroscopy)とは、おしりの近くの仙骨裂孔から硬膜外腔に細いカメラ(内視鏡)を入れて硬膜外腔の癒着を剥離(はくり)し、目的部位への薬液投与を確実にします。脊髄神経や神経根の圧迫がとれ、血流が良くなることや脳脊髄液の通過性を良くすることなどで慢性の痛みを和らげるとされている方法です。先駆的医療で、2016年より一部の病態に対して保険が適用されるようになったばかりなので、施術した経験を持つ医療機関やデータはまだ限られています。

※3 外来での硬膜外神経ブロックの効果が不十分だったり、通院が難しい場合に、入院して硬膜外にカテーテルを入れたままにして、持続的に薬を注入して痛みをコントロールする方法。

※4 レントゲンで透視しながら、特定の神経に直接針を刺して薬を注入する方法で、どの神経が痛みの原因になっているかを特定することができ、手術の方法を決めるための検査に用いられることもあります。


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