ある国立大学の先生を紹介してもらっていました。で、まあとにかく行ってしまえと…意見だけでも聞こうと。その先生に治療を受けるってのは、ちょっと考えにくいけど…あんまり遠いんでね。でもまあ、意見は聞くぐらいいいだろうと思って、朝から出かけました。そのときに(別の病院で)セカンド・オピニオン受けようと思って(用意して)いたところの資料を一応、全部持って行きました。で、お昼前にですね、着きまして。資料とか情報…うーん、写真とかはそのときに見てもらったと思いますけども、診察を受けて。そのときにかなり詳しいお話をしてもらいました。今から思えば普通の、基本的な話なんですけども。一番、一つ心配してた(勃起)神経を残せるかどうかいう問題があるんですけど、それは「非常に精妙にやれば、残せるでしょう」と。それから、もう一つは「神経を移植して、もう片方にくっつけるという方法もできますよ」と。で、「放射線も基本的には、(手術と)同じぐらいの成果を上げていますから。それはもう選んだら結構ですよ」と。私の住まいの近くの大きい病院に紹介状書いてもらってもいいですしっていうことで、かなり詳しくいろんな話をしてもらいました。だけどまあ、やっぱり手術が一番確実っていうか…先生はかなり手術を勧めてました。で、最初にかかって検査してもらった先生の、実は先輩でもあって、そういうところも詳しく話をしてくれてですね。結局そのときに「ああ、この先生にお願いしようかな」っていうことを、ほとんど心の中で決めて。で、その先生はね「もし手術であれば、私は全身全霊でやります」と。「A(地元名)へ行ってできたらいいんですけど、設備が慣れてないもんだから、やっぱりこっちのほうが、自分のホームグラウンドでやりやすいんで」っていうふうなことをおっしゃって。「それはもちろんそうですね」と。基本的に。だからその時点でゴロっと変わってですね、手術の日まで一応決めてしまいました。
投稿者「dipex-j」のアーカイブ
もう(仕事の)予約をずうっと入れちゃっているんですね、私の仕事の場合は。企業研修の講師とかやっていますとね、ずーっともう予約入れちゃって、1年先まで入っているよ。そうするとね、まとめてですね、摘出手術だと1ヶ月。それからその先、おしっこがうまく止まらない、というようなことは、ちょっと耐えられないし、考えられないのですよね。そうすると、日常の仕事を続けていきながらというのはもう絶対考えなきゃいけない選択肢でした。そうすると、それでやれるのは何だろうか。そうなると放射線が出てくるわけですけども、うーん…じゃ、それを外から照射をしてもらう、位置決めをして…そうするとうまく時間がそれで合うだろうか。何十回と通わなきゃいけない。それがうまくタイミングよく取れるだろうかと。連続してね、毎日照射しなきゃいけないよということがありますのでね、それは最寄りの病院にはその設備はない。電車に乗ってしばらく行ったところの国立の病院にはある。でも…またそこで病院一つ増やすというのもね、ちょっと遠いじゃないか、みたいなこともあったわけですね。だからやはり、どうしてもというんでしたらば、それこそ引っ越しをしてもということになると思います。1ヶ月、2ヶ月、どっか遠隔地へ行ってもというのはあると思いますけども、ちょっと私の状況からしますと、もう全部そういう事情で「廃業しました」と言ってしまうか、中途半端に仕事を続けるということできない状況なわけですから。「廃業しました」はまだ言いたくない。とすると、数日仕事を休むだけで、そのまま社会復帰できる。平常どおり、今までどおり仕事を続けられることっていうのは大事だよね、ということなんですね、はい。
私の場合はね、IMRTという照射方法といいますのは、当時はそれぞれの医療機関で皆、決められたあれがなくてですね、私の受けたところは保険扱いだったんです。それで、高精度の照射というのはそういうIMRT以外にも、あと粒子線なんかが考えられるんですけれどもね、陽子線とか、あと重粒子線もありますけれども…炭素ですね。まあ、それはもう、日本でも数が比較的限られるということと、粒子線は兵庫県のちょっと奥のほうに1つ、兵庫県粒子線センターいうのがありますけれども、それは当時としましては、やはり陽子線で280~290万、重粒子線で300万強、それだけの費用が、その治療だけでかかるわけですよね。ですからやはり、そちらしか助からないというような、はっきりしたケースだったら、もちろんそちらへ行けばいいんでしょうけれども、もう結果がほとんど同じだというんでしたら、やはりまあ、そこまで無理ができる人はそれはそれでもいいんでしょうけれども、私の場合はそこまで、別に金持ちの部類じゃありませんから、そこまでするつもりはなかったし、いろいろ内容を聞いて、IMRTで十分だということも分かりましたので、そういう形にさしていただいたと。
あの…手術をする前には(ホルモン療法も)選択肢としてあったんですけど、若い人がホルモン療法をした場合、再燃した場合、なんていうか、平均余命が長いですから、そういう面からいくと、そういうことも考えて決断しなさいよということをおっしゃいますので、やはりまだ私としてはあと20年は生きたいと思ったものですから、要するに私も70を過ぎていたらホルモン療法を取っていたと思うんですけど、まだ60歳だったもので、手術をやりました。
で、NHKの「きょうの健康」の前立腺がんのところを見ると、いろいろ例が出ていて。やっぱり日本は、どうも手術が標準治療。アメリカなんかは小線源治療が放射線治療の主流だけれども、日本はまだ手術が主流だと。なぜ手術が主流だというと、放射線で治療をやっちゃうと周りの細胞が皆、殺されちゃうよね。再発(再燃)時に、手術に切り替えようと思っても、手術じゃもう周りの細胞がいかれちゃっているんで、繋ごうと思っても繋げられないんだよ。尿道と尿道を繋ごうとしてもなかなか繋げられないということなんです。まず、手術が先行ということになっている。ホルモン療法というのがあるけども、これは完全に治るわけじゃなくて、ただ延命ということで。まあほとんど治ったと同じぐらいの効果になりますけどね。これはやっぱり、手術をするんじゃないといけないなと思って。
全摘かな、それとも放射線かなと言われたんですよ。「どっちか選んでください」って言われたんです。「先生、そんなこと、選ぶったって、わたしそんなこと…分かりません」って言ったんです。「どっちがいいですか」って言ったら…全摘の場合はこういうリスクがある。放射線はこういうリスクがあるというふうに説明受けて、自分なりに考えて、やっぱり全摘のほうが、わたしなりにいいと思ったもんだから。放射線やったら、いろいろと支障がありますよね。どういう…自分なりに勉強したんですよ。それだけの強い放射線がいくから、尿道が固まるとか腸があれする…直腸が穴開く可能性があるとか、いろいろリスクをね、聞いたもんだから。「やっぱり、これ全摘のほうがいい」ということで。まあある程度体力あったから、当時は。
んで、どうするかということになったんですが、私は「とにかく出来るんであれば、すぐ手術をして取っちまいたい」と言ったんです。そしたら先生がね、「いやー、この年でね、手術も100%じゃないから。もしも不十分だったら、あとね、結構大変だよ」って言うわけ。だから大事を取ってね、手術をしないでやっていったほうがいいだろうということで。で、手術をしないで治療するということになった。で、さっき言ったね、注射と錠剤の服用を続けるということで、きっちりした病人生活がね、そんときから始まったわけなんです。
えーと、そのときはまだね、手術に伴うプラスとマイナス、マイナスの部分の理解がまだ十分じゃなかったので、なんで本人がやりたいって言うのにね、やってくんねえんだろうという気分はちょっと、強くありましたね、うん。んで、だんだんね、いろいろ勉強していくうちに、あー、これは手術は、なかなか実際は大変なんだと。で、特にそのあとね、私の割とすぐあとなんですよ。天皇さんが同じ病気に。大変な人が仲間になってくれたと思ってね、ええ。こう強い関心を持ってね、あそこでは最高の医療スタッフと技術でね、どういうふうに捌(さば)くんだろうと思ってね。しかし必ずしも、あれですね、満点っていうか、理想通りではなかったのかなというふうに見えますね。また、1回で解決しなくて、報道によるとね。じゃあ、おれと同じように今はカソテックスでも飲んでんのかなあ? と思ったりして。まあそういうのを見たら、またね、ああ(手術を)やんなかったのも、やっぱり1つの見識なんだなあというふうに今は思えていますね。ただそのときは、まあ何となく、煩わしいもの、面倒くさいものは、どんどん処理しちゃったほうがいいという、こう…せっかちなとこがあったもんですからね、そういう気持ちはありましたね。取ってくれればいいなと。
そうなりますと、次はどんな治療を行うかというようなことになるわけですけれども、お医者さんのお話では、まあ、私のようにある程度体力がある、そして限られたがんで、取ることが可能だということになると、「全摘出手術を行うべきだ」というふうに強くお勧めいただきました。まあ、「それが一番、完治する道である」というようなことだったんですけども。私自身はどうしても、そのまあ、肉を切らして骨を断つような手術ですから、どうも抵抗がありまして。私の今後の人生を考えたとき、これだけ大きな手術をして、必ず深刻な後遺症が出ることはもうはっきりしているわけですから、そういう後遺症を抱えながら生きるのがいいのかどうかということで悩んだ結果、最終的に、この通り申し上げましたような、ブラキセラピーを私の治療ということで選ばせていただきました。
ええ、やっぱり排尿障害だとか、性(機能)障害とかっていうこともさることながら、まあ、いろんな方に聞くと、ちょっとかなり体力的に無理が起きていたり、体調がよくないという方が多いようですし。これから残り少ない人生、そんなもん抱えながら、生きていきたくないなというような気持ちが強く、実はありましたね。
そのすぐ近所に、手術をされた方がいらっしゃったんですよ。まあ今でも元気でいらっしゃるんですけど。その方の話を聞いたら、もう手術をしたんだけども、ちょっと失敗して、もう一回やり直したって言うんですよね。もちろん、もうだいぶ前になりますからね。そうするといわゆる、勃起の作用する筋肉*ですかね? そういうのも皆取ってしまって、もう全然面白くないって言われるんですよね。まあそれはそうだし。確かに、そういう、もし…何ていうかね、われわれがよく言われるのは「もう年で、そんなものは使わないからいいじゃないか」って言われるんですよね。だけどそれはね、使う、使わないの問題じゃないんですよね、やっぱり。男としてステータスっていうかね、まあ元気で、私は男なんだよっていう、そういう…何ていうか、そういうものがやっぱりあるんじゃないかと思うんですよね。
*勃起神経のこと
それでまあ多くの方…今、インターネット見ますと、やっぱり全摘出手術が一番多いですかね。そんなことで、それがいいじゃなくて、それしかないよというふうなことで、言ってみえて。決してそれも悪くはないとは思うんですけども、本来あるべきものをとってしまうということは、やはり私としては不安だったですし。また、手術となると、前立腺の場合は、特に血がたくさん出るといいますかね。何か手術には、たくさんの血液もいるらしいですし。それから一時、いつごろだったか分かりませんけども、腹腔鏡を、素人っちゅうかね、練習替わりにやって事故死(というの)がありましたね、確か。それで亡くなってしまったようなこともありますし。とにかく結構、全摘手術というのは、患者に負担が多い手術だと。特に高齢者になると、その手術もできないということも載っていますしね。そういう点では、特に「切らずに」ということで…小線源、それもがんセンターで、小線源はやっているみたいでしたけども、「うちでは駄目だ」ということでね。それでまあ、全摘手術しかない。それで私が何とか、切らず(に済む)方法ということで、HIFU(を見つけた)。でも、これは保険が利かないということですもんでね、その点、ちょっと考えたんですけれども。やはりまあ、(がん)保険からも少しおりるし、まあ、なるたけ私はやりたいということで、まあ家内とも相談してですね、それにしようということで。それで(東海地方の)病院ですけれども、そこで先生にも「大丈夫」という許可を得たもんで、それでやったんですけどね。