投稿者「dipex-j」のアーカイブ

障害学生の語り

事前に聴覚障害のことを大学に伝えたところ、英語のリスニング試験でいきなり、英単語の間のスペースを除いた英文を渡され、あとは全て他の学生と同じでとても困った

英語のリスニング試験はちょっともめましたね。はい。

――どんな感じに。

うーんと…、取りあえず、診断書を提出して…、どんな試験になるかっていうのが試験のそのときまで知らされてなくて、実際あった試験が、えーと、みんなと同じ部屋にいて、同じふうにリスニングの放送を聞かされるんですけどスクリプトが渡される、言っている内容のスクリプトが渡されるって試験なんですけれども、スクリプトがトリッキーで、空白が一切ないんですよ。
普通だったら、「I am」の「I」と「am」の間にスペースがあるところを全部それが抜いてあるスクリプトで、ちょっと私にはあり得ないものなんですけど、そういう試験の仕方で、いきなりそれだったのはびっくりしましたね。

――それは何ですか、間が空いていないっていうのはその、どういう、どうしてそうなるんですかね。

その試験の意図がよく分からなくって、今でも分からないんですけど、多分聞こえるって思っているんじゃないですかね。それでちょっと補助があれば音が理解できるはずだと思ってそういう試験したのかなと思っているんですけど、今でもあれはあり得ないと思います。

それまでは(リスニングの試験は)なかったので、特に自分でもリスニングの練習とかをしようとも、あの、頑張って聞いてもやっぱり聞こえないものは聞こえないんですね。それで、まさかそんな試験になると思わなかったんです。うん。特にリスニングの練習もせずに…、多分代替試験なのかなとか思って当日試験場行ったら(他の人と)同じ部屋ですし、びっくりしました。

――それはもう、どうしたんですか、それで。

あ、もう全然分からないので、それで多分リスニングの部分は全部駄目でした。それで一浪したかな。

えーと、1回目で駄目だったので浪人して、2回目はもう、またあの試験かなと思って…。まさか、また本当に同じ試験だとは思わなかったんですけど、また英語の試験のときは、そのまんま部屋にいてスクリプト、あの、スペースがない、ピリオドもないんですよ。
カンマもピリオドもないものを渡されてっていう試験で。
でも、まあ、1回経験したので、まあ、くるだろうなと思って見て、ぱぱぱっと単語読み取って書いて、リスニング終わる前に終わってました。

――問題、問題の、そういうときって、例えばリスニングの問題も、音で言われることがあると思うんですけど、(スクリプトに)問題は書いてあったんですか?

書いてなかったんですよ。だから最初の説明は多分なくて…、あれ、ちょっとまずいんじゃないかな、と思うんですけれども。うん。

障害学生の語り

面接では最初に自分で話し、言語障害のためにうまく伝わらない部分をパソコンで入力して伝えた

――特に面接のときに何か、えー、ご自身が障害があるからといって、そういうことをこう伝えたとか、何か配慮をお願いしたとか、そういうことってありました?

うん。車椅子を使っていてパソコンで、あの、まあ、勉強をしているっていうことは伝えました。
それで、面接の際は、パソコンを使って答えるっていうことをしました。

――じゃあ、あの面接官が、こう、質問をして、それでご自身はパソコンを使って答えるっていうかたちの面接だったんですか?

まずは、自分の言葉で話して、その上で、あの、うまく伝わらない部分を、入力しました。

障害学生の語り

肢体不自由のために、別室受験と時間延長などの配慮を受けた。拡大されたマークシート用紙が扱いにくく、2年目はクリップを持ち込んだ

――実際、ご自身はどんな配慮を受けて入試を受けられたんですか。

えーとですね、あの、まず、別室受験で時間延長と、あと専用の机、車椅子に対応できる机の配置というのがメインにものなります。で、あとは車で行かせてくださいだとか、あるいは、保護者の待機場所を用意してくださいっていった所がメインになるかなと思います。
あと、あと何だろうな。センター試験の場合はですね、えーと、マーク式の、試験が現在行われていると思うんですけど、少しマークをしやすいような形に、配慮をされますので、そこの配慮も求めた記憶があります。

(マークシートに関しては、)かなりちっちゃい数字を塗りつぶすっていうかたちが通常での実施パターンだと思うんですが、私が受験した際はかなり大きめなマスに何かしらチェックをすれば、それをマークしたことを認めるっていうことに、なっていたので、マーク自体はかなりしやすかったんですね。
ただ、一方で、一つ一つのマスが大きくなってしまうっていうことがあるので、とても、あの試験の解答用紙の枚数が増えてしまうっていうことがあるので、僕、実は浪人をして2回センター試験を受験しているんですけど、2回目のときはクリップを持ち込ませてくださいっていう申請をして、クリップで解答用紙20枚ぐらいあるのを留めて、受験した記憶があります。はい。

障害学生の語り

入試の際は、全部の大学に、自分はろう者だと伝えていた。試験では、試験官が話す内容を紙に書いてもらい、面接ではゆっくり話してもらった(手話)

まあ、全部の大学には、前もって自分はろう者ですということを伝えてありました。ので、いろいろ支援をしてもらったんですが、面接のときは、分かりやすく口を動きをはっきりしてください、分からなかったら言うので繰り返し説明をしてくださいということをお伝えしました……。
実際に先生たちもとても気を使っていただいてゆっくり話していただいたり、口もはっきり動かしてもらったのでスムーズに話を、会話ができたことを覚えています。

――じゃあ、こうやり取りで特に、その聞こえないことで困るっていうことは、試験においてはそんなになかった?

そうですね…。
筆記試験のときには、まあ、試験官のお話も全て紙に書いて準備してくださっていて、面接のときの質問の内容は、何か難しいですよね、とても自分では不安があったんですが、先生たちもとても親切にゆっくり話していただけたので困るっていうことはあんまりなかったかなと思っています…。

障害学生の語り

20年以上前の当時は、点字受験を認めているところしか受験せず、時間も“点字受験イコール1.5倍の時間延長”とほぼ決まっていたので、事前に大学側と交渉することはなかった

まあ、基本的に学校に電話して点字受験をやってますかって言って、受け入れてますかって言って、もう受け入れてますっていうところしか受けなかったので。過去にたぶん前例がないところは、多分私が受けたとこはないと思うので、多分過去に受け入れがあったので、特にその何ていう、こちらから特に一生懸命いっぱいお願いするとかそういうのはなくて、もう、あの、前もって。
前もって来てくださいって言われたところは多分ほとんどなくて、もう当日受験の日に来てくださいって言われる感じで、行って普通に。
だから時間延長とかも、あの、今はね、何かいろいろ書式を出したりしなきゃいけないんですけど当時はそんなにうるQ:じゃあ、点字受験で、やっていますって言われたところに。さくなくて、もう点字受験イコール時間延長、イコール1.5倍みたいな、もう決まってた感じだったんで、もう、書式に従って申し込みをして、もう行ったっていう感じです、直接。

――じゃあ、点字受験で、やっていますって言われたところに。

もう準備も。だから、そういうところだから、もう準備もしてて、私は何も、だから、その特に私が動いて何か認めさせたとか、そういうのは何もなく、もう、やれますよって言ったとこにしか行ってないんで。うん。

障害学生の語り

聴覚障害があるが、高校まで普通学校で、配慮や支援について何も知らなかった。センター入試で初めて配慮のことを知って申請し、個別の試験でも別室受験などの配慮を受けた

あの、高校まで私、まあ、地域の学校に通っていたので支援の存在も全く知らなくって。だから、その大学を選ぶ基準に、何か支援室があるとか、そういうことは全然入ってなくて、ただ自分が勉強したいものがあるのかとか、そういうところで選びました。
それで何かセンター入試のときに初めて、障害学生の配慮っていうものがあるって知って、ちょっと興味本位で、配慮申請をして、センター試験は別室受験で、英語のリスニングはちょっと、何ていうんですかね、カセットプレーヤーで、を自分の好きな位置に置いて、好きな音量で聞いてっていう、受験をして。
で、大学のそれぞれの入試のときにも配慮申請をしてそれぞれの大学で決められた配慮措置をしてもらって受験するというところに至りました。

一 般入試のときは…、3つぐらい大学を受けて、大学によって本当に措置の内容はばらばらで。大学の中でも、あ、それはなかったかな。学科によって、ちょっと内容が、配慮内容がちょっとずつ異なったりはしてたんですけど、別室受験で受験してくれる、受験を認めてくれる大学もあれば、みんなと同じ教室に入って、で、文書通知、先生が話す、注意事項とかだけ、紙で教えてくれるっていう措置をする大学もあり、本当に大学によっていろいろ違うんだなって思ったのはあります。

障害学生の語り

大学受験に力を入れている高校(盲学校)だったので、入試の際の配慮申請にサポートがあって、センター試験も二次試験もいい条件で受験ができたと思う

そうですね、えー、入試については、私が通っていた盲学校が非常に大学受験に力を入れていましたので、高校側からのサポートもありまして、かなりいい条件で受験ができたと思います。
えっと、大学入試には、センター試験と、それから学校別の入試がありますけれども、センター試験はセンター試験で、特別な配慮が必要な場合は申し込む必要がありますし、学校は学校で個別に申し込む必要がありました。
センター試験については実は、あの、募集要項の別紙というものがありまして、そちらで、特別な配慮が必要な場合はその別紙の要項を取り寄せまして、必要な配慮を申し込むという、形になります。
センター試験側としては、視覚障害に対しては確か、ある程度の試験時間の延長、それから、マークシート形式から、直接、解答用紙に数字を書き込む形式への変更、えー、それから問題用紙の拡大などが、例として提示されていました。

ただ、元から用意されていたメニューである、問題用紙の拡大コピー、それから、マークシート解答、私は、色盲ですので、薄い字で印刷されているマークシートはもう全然読めないんですね。なので、マークシートから、大きく、大きい四角が、こうずらっと並んでいるような、形の、解答用紙の使用、解答用紙に直接字を書く。
で、実は、別紙の要項に、解答用紙の大きさの見本が載っておりまして、その中から自分が見やすいものを選ぶというような形だったので、ま、選んで申し込んだというような感じだったと思います。
それから、えーっと、当然、問題用紙が大きくなると、紙、何て言うんだ、拡大コピーしてもらうと紙が大きくなりますね。そのA3の紙をですね、ベラベラめくって、こう、作業、問題を解くわけです。そしたらもう、普通の、大学入試センター試験だと、ニュースの映像で見るような大教室の狭い机じゃ、とてもじゃないけど作業ができないということなので、A3の紙を2枚も3枚も広げて、バサバサ作業をしても大丈夫なような大きい机を用意してほしいというような要望も出して、受け入れていただきました。

障害学生の語り

病院の先生に、(聴覚障害があることで)大学に行くなら理系がいいと言われたが、自分の興味は政治学だったので、選択を誤ったとは思わなかった

私、ずっと、中学校ぐらいのときから、政治に興味があって、で、政治学の研究者になりたいと思ってたので、なんで高校からもう既に政治学の研究するために大学行きたいと思ったので、学部も政治学を学べる学部に行きたいと思って、日本では法学部が多いので、あと政治経済学部とかはありますけど、まあ、法学部に絞って大学行こうとしました。
で、やっぱ研究するからには、研究環境がいいトップレベルの大学に行きたいなと思って、そうやって大学選びました。うん。
で、1回で合格できなくてやっぱり一浪したんですけれども、一浪するときもやっぱり、その研究するからにはちゃんと研究環境が、整っているトップレベルのとこに行ったほうがいいと思って、それで浪人して大学受験しました。

――分かりました。もともと何で、何でもともと政治学を勉強したいなって思ったんですか。

何か、説明付かないんですけど、結構小学校ぐらいのときから国会ごっことか、新聞読んだりして、何かあと憲法を友達と一緒に、同じ年の友達ですけど、小学生同士で憲法を作ったりして遊んでて、何か昔から政治に興味があって、で、そのまま興味が途切れることなく中学、高校ときたので、うん、今も政治の話とか楽しいですね。

うーんと、そもそも学部を選ぶときの話になるんですけど、やっぱり病院の先生に「大学行くなら理系がいい」って言われたんです。うん。で、何でだろうと思って入ってから分かったんですけれども、取りあえず法学部の授業へ行って先生がひたすらしゃべっているので、それ全部聴かなきゃいけないからすごく負担が大きい。
そこ大人数の授業なので、先生が個々の学習を見てくれる理系だと研究室に所属したりして面倒見がいいけれども、法学部はそんなのなくて、ゼミも所属しなきゃいけない義務とかもなかったので、それで、あ、そういうことだったのかって大学入ってから、なぜ理系を勧めたかを分かったんですけど。
でもやっぱ自分の興味は政治学だったので、まあ、選択を誤ったとは思わなかったですけれども、やっぱ法学部は、聴覚障害者には結構きついかなと思います。

障害学生の語り

知らない言語に触れるのは新鮮で、もともと英語が得意だった。また社会や歴史も幅広く学びたいと思い、リベラルアーツを選んだ

――結局入られた所は何を学ばれたんですか。どういう専攻でいらしたんですか。

英語専攻を、英語の所に入りました。あの…、僕、元々英語が好きだったので…、英語専攻の所へ入りましたね。
でも、そこの学部は英語学部というわけではなくて、あの、理系も文系も学べるリベラルアーツ学部っていうとこだったんですよ。そこに、入学して、そこで、英語とかを学んだっていうかたちですね。

――ご自身は、どうして英語がお好きなんですか。

うーん。元々英語が、英語を習ったときにできたというか、得意だったっていうのもありますし。あとは何だ、やっぱり、英語のほうが何か、何か楽しかったんですよね。そういう話、話したりしているのが、知らない言語は、新鮮だったんですよ…、知らない言語を学んで、それを使うっていうことが。
なので、英語を勉強したいと、思いましたね。

――分かりました。ご自身は英語を学びたいと思って、でも入られた所はリベラルアーツだったから、もうちょっとこう幅広い科目選択とかがあったんでしょうか。

そうですね…。英語以外にも、あの…、英語以外にも勉強したいことも、あったので。
例えば、何だろう…、社会のことについてとか、そういう、理科のことについてとかも、ちょっと学びたかったし、そういう歴史のことについても学びたかったので、そういう理系・文系にとどまらないところがいいなと考えて、リベラルアーツにしましたね。

障害学生の語り

当初は数学を勉強したかったが、入学後の独り暮らしやサークル活動を通じて社会や人の多様性を勉強したくなり、医学を専攻することを決めた

(専攻を医学に決めたのは、)幾つかの理由があって単純な、こうだからこうっていうことでもなかったんですけれども。えー、1つ目は独り暮らしの影響だと思うんですけれど、先ほども言いましたように、その、すごく狭い中で、やりたいことは何って聞かれて、自発的に出てくるものが限定されていたっていうところがあると思うんですが、そこで数学っていうのが出てきたんですけれど、あの、独り暮らしをして初めてこう社会というんでしょうかね、いろんな人にもまれる経験を初めて。
多分、他の子たちは幼稚園や小学校でするような経験かもしれませんが、初めてこう社会と直接関わるという、親なし、親を媒介とせず関わるという経験をしたことが、とても新鮮なことで、まあ、いいことも悪いこともありました。
こう通りすがりの人に、例えば「税金泥棒」って声を掛けられ、こう罵倒される。で、ガーンってショックを受けるんですけれど、夜な夜な集まるその仲間たちの会にそれを議題として挙げると、みんなが必死になって次にそういうことを言われたときにどうやって切り返すかを考えるという。

もう一つは……、大学1年生の後半の頃に、えーと、そのさっき言った、その人権関係のゼミでですね、あの…、学園祭で模擬裁判というふうな法律、法学部の学生が多いゼミでしたので裁判のお芝居みたいな、出し物でやってたんですね。
で、その年、私たちが担当する年は、えー、聴覚障害を持っている方の刑事事件、実在した刑事事件、蛇の目寿司事件という事件を題材に模擬裁判をやることになったんですけれど。で、この蛇の目寿司事件を取り扱う、取り上げるに当たり、こう、ただやるんではなく手話を付けようと、情報保障としてですね、手話を付けようという話になりまして、で、急きょ手話勉強会を立ち上げたんですね。

手話 サークルで学び、で、急に何ていうんでしょう、世の中にはきっと聴覚障害だけじゃなく一見見えない障害っていうものが山ほどあるだろうなという。人知れずこう持っている違いというものがたくさんあるだろうなと思って、何ていうんでしょう、人体のダイバーシティーというか、人の体の多様性みたいなものを勉強したいなっていうふうに思った最初のきっかけが手話サークルでしたね…。