投稿者「dipex-j」のアーカイブ

前立腺がんの語り

IMRTの治療は順調に進み、入院中病室で仕事もしたし、病院を抜けて仕事の打ち合わせもしていた。元気なときには観光にでかけることもあった

あと、実際の治療のほうは、まあそれほどね…まあ順調に運びましたから、その治療の中身は、あんまり細かくお話ししても、あんまり意味がないかと思うんですけれども。まあ、手術受けられた方にはちょっと気の毒なほど、楽させていただいたものでですね。こんな楽な治療でいいのかなというのが、放射線治療の、まあ特徴と言えば特徴ですよね。当時は、私、たまたま仕事のちょっと忙しい時期とかち合うておりましたんですけれどもね。仕事の、事務所が大阪だったんですけれども、どうしても打ち合わせに出ていかなければいけないときいうのも何度かあったわけなんです。それ全部病院抜けてですね、仕事もやってましたし。最後締め切りの間際というようなときには、ざっと病室で机のような形を全部こさえて、まあ、パソコンもちろん置いてましたし、仕事の図面の束を置いて、ずっとそこでチェックやら仕事やとかですね、皆ずっと病室でしながら。結構…相部屋だったんですけれども、みんなそういうことやってましたですね。あとは、ちょっと元気なときには、近所、京都見物にも出かけましたし。ちょっと運動不足でしたから、大文字山登って帰ってきたりですね。そういうことで、割と結構気楽にさせていただいてました。

前立腺がんの語り

三次元原体照射を受けたが苦痛は全くない。機械のいかめしい感じに多少びびったり、動いてはいけないというのはあったが、わずかな時間だった

多少は音があるんですが、今、照射されてるななんていうことがうかがえるような、そんな音はないですよ。で、その治療室へ、私、患者1人しか入らないんですが、別室、隣の部屋からきちっとモニターをしてまして、絶えず声掛けをしていただきながら、モニターしてもらってるということですね。準備をして出るまでに、まあ、10分ぐらいかかるかぐらいなんですよ。で、実際に照射する時間っていうのは、秒単位じゃないですかね(笑)。よく分かんないですけどね。ほんのちょっとだけなんです。で、機械が、だから移動する時間がありますよね。移動して照射するという…移動して止まってたのかなぁ。時間が多少かかるんで。でもう、本当に入って、そういう治療台の上に横たわって、治療が終わって出るまでに10分前後ぐらいしか時間がかかりません。で、1日1回だけなんです。それを大体、うーんと…膀胱の中に入ってる尿の量に、位置が決められちゃうもんですからね。だから、大体決まった時間の、特に排尿後どれくらいの時間(に照射しなければならない)っていうふうな、制限があるぐらいで、あとは何も制限がないんですね。
照射中、前後、全く苦痛はありません。全くないですねえ。あの機械のいかめしい感じですか。威圧的な感じは、まあ、なきにしもあらずですけれども。それから、やっぱ動いちゃいけないですからね。ミリ単位でやっぱり照射の位置をきちっとこうやってるもんですから、動いちゃいけないっていう。まあでも、ごくわずかな時間ですからね…ということと。それからたった1人で、やっぱこれくらいの大きさの部屋で、大型の機械がたくさんあってというようなことがあるくらいで、心理的には多少はちょっとこう、最初のうちはびびったというかな(笑)。あったんですけど。もう物理的には全くもう、音響にしても、もうよほどMRIのほうがこたえました(笑)。治療そのものは全くね、快適ですよ。はい。

前立腺がんの語り

全摘術後に放射線治療(従来法)を受けた。膀胱を膨らませるため、水分を取る必要があったが、治療は痛くも痒くもなかった。定期券で通院した

あの、(放射線療法を)受ける…放射を受ける前に30分…前ですかね? 300CCぐらいのお茶でも水でも飲むんですよね。それで何か、膀胱を膨らませておくとかって。それで排尿しないで、と。その間は。それから照射するっていうことでやって、やりましたんですけどね。毎日通うのに、あの(笑)、定期を買ってね、それで通ったようなわけでございます。まあちょうど11月のねえ、7日から始まったかな。それで、12月の22日に終わって、あれなんですけど。まあ暮れの忙しい中に、一生懸命通ってね、やったんで。それでまあ、治療そのものは、放射線は痛くもかゆくも何もないんですけどね。

前立腺がんの語り

手術した結果、浸潤が見つかり、放射線治療(従来法)のリスクについて説明をうけ、すぐにやってほしいとお願いした

手術をした結果、手術で取り出す前立腺を詳しく調べてみたら、浸潤があったということで、これについては先生もですね、MRIで見つかる人もおるし、見つからない人もあると。今回のMRIにおいては前立腺外に出てるという、浸潤しているという状態っていうのは映ってないと。これはやむをえないということで、それも私納得しました。それであの、そこでグリーソンスコアの9、というものがどういうものであるかも非常に詳しく説明してくださいまして、高分化がん、中分化がん、低分化がん、それぞれどういうようなものであるかということを。これにおいて対応するのは放射線を当てると副作用があると。非常に副作用があるし、1ぺん当てたところには二度と当てることはできない。そういうことでですね、慎重に選ばなければならないんだけど、どうするかということを言われまして、もし浸潤したところからがんがそこで転移していくことになっとるといかんもんで、早くやれば、むしろそっちのほうが…どっちのリスクを取るかということで、放射線をするということを選びました。それは、先生はそれぞれのリスクを話してくださいました。それでどちらを選ぶかということを。それで私はもう放射線のときも、すぐやってくださいと。例えば1週間2週間おいてでもいいよということをおっしゃったんですけど、よく考えてからってことをおっしゃったんですけど、「いやもう、すぐやってください」ということで、すぐ入院しとる最中にやってくださいました。そういう意味ではせっかちなところがあるもんですから。

前立腺がんの語り

知り合いが受けたIMRTを希望していたが、その人と比べるとPSA値が低かったこともあって、照射量の少ない三次元原体照射を勧められた

IMRTっていうのはね、やっぱりかなり浸潤の進んでいる、あるいはまあ、Aさん(ネット上の知り合い)ぐらいに…あの方は非常に、3けたか4けたですね、PSA値っていうのがね。私の場合は1けたですからね。3けた…3けたの数値で、しかもあの方も、私と一緒で、グリーソンスコアが極めて高いっていう状態だったんですよね。ですから進行も随分、私に比べて進行してたし、で、顔つきも随分悪いということで。照射量を、私の場合は、74グレイだったんですけれども、4グレイ増やして78グレイっていう照射量を(Aさんは)必要としたんですけれども。4グレイの違いっていうのはね、確かに大きいよっていうふうに言われましたです。結局はやっぱり、他の臓器に対する破壊。他の臓器を破壊する割合っていうやつですかね。これはやっぱり大きいっていうことを先生は心配されましたね、放射線担当の先生は。それで74グレイでとどめて。

前立腺がんの語り

再発した今、その選択が良かったのかは悩ましいが、当時は体にダメージが少ないことを重視し、男性機能の温存可能性もあるIMRTを選んだ

手術して、もちろん、痛い目をみながらして、それで結果として(がんの)組織が少しでも残った、いや、そこに残っていなくても、どっかにもうすでにリンパなり血液なりを通って転移しているかもしれない…というようなときには、手術も及ばないわけですよね。だから消去法でいったんですよ。(その治療を)した場合のリスク。だから、そうしたときに、体に対するダメージはどちらが大きいんだろうかとかね。あと、精神的なものも含めて、どっちをしたらいいんだろうかって。うん。
わたし自身のですね、つまり、男性機能を保持する、しないの(に関する)、ある意味プライドみたいな部分がやっぱりあって。で、IMRTという放射線治療を受けた。手術とIMRTの決定的な違いの部分についても、そういうことが触れられておりますよね。あとそれと、そういう…もちろん全部インターネット上なんですけど、欧米のほうで、これの治療が相当進んでいる、いろんな化学療法も進んでいるっていうのは何かっていうと、やっぱり、男性機能をいかに保持した状態で(治療を)するかというところを、最優先させているというようなことが、そっちこっちでもうすでに載っていますよ。わたしが告知受けたときは、そんなにまだ載っていなかったですけど。あれから5年近くたちますけども、相当今はその情報が多くなっています。それは何かというとですね、やっぱり、そのがんに立ち向かう、がんと共に生きる上での、人間の心理をですね。一番…まあ肉体的な部分もそうなんですけども。それよりも、精神的な部分を優先する…医療っていいますけども、心理的な医療のですね、重要さを日本の国の場合よりも欧米のほうが、ずっと人間性を尊重して取り組んでいると。だから手術が全てじゃないんだよって。

前立腺がんの語り

悪性度が高かったので、高い放射線量が当てられ、副作用が少なく、根治も期待できるというIMRTに賭けた

いろいろ調べましたけれども、やっぱりこれは放射線しか手はなさそうだと。放射線でも、同じ受けるなら放射線の種類にも何通りかあるということが分かってきましたので、受ける以上は、やはり高い放射線量が当てられて副作用が少ないという、そういうやり方にしか、やり方にかけるしか仕方がないだろうと。そういうことでずっと自分で見つけ出したのが、三次元照射の中でも各方向からの強度も一緒に変えられて照射ができるという…、IMRTという照射方法、強度変調照射ですね。それがやっておられるのが、まあ、数が、そうたくさんないわけなんです。今はだいぶ増えましたけれども、当時はもう関西では幾つか…数が限られてました。その中でも、私が訪ねたのがですね、たまたま京都にある大学病院ですけれども。IMRTをやっていて、かつ泌尿器科の先生と合同で患者さんを診るという、そういうシステムを採用しておられたと。当時としては非常に珍しかったですね。

前立腺がんの語り

2年間ホルモン薬の注射を受けていたが、うっとうしくなって除睾術を受けることにした。1週間ほどの入院で済み、簡単だった(音声のみ)

――これはあの除睾術ですかね、あのー、手術で取ってしまうという、その除睾術という…。

はい、そうです、そうです。それをあの、2年前ですかね、やって、やりました。一々注射すんのもね、同じことなんですよ。あのー、注射せなくてよくなりますし、で、これ、どっちみち治らへんですからね、と自分で思いますしね(笑)。

――どっちみち治らないというのは?

うん、あの、あの、どっちみち、この女性ホルモンを打って、続けて打っていくんですから、で、年も年ですから、そんなことはもうええやんかという判断で。でも、注射すんのもうっとうしいからということで、もう先生も、「ほんならそれのほうがええやろう」みたいな感じでしたから、もう簡単にできるからというようなことで、簡単だったです、本当に1週間でしたからね、入院はね。

――入院は1週間。

ええ。

――で、あの、割とこう除睾術、取ってしまうっていうのって、割と多くの方が、あの、ちょっとそれは避けたいっていって避ける方も多くいらっしゃるんですね。男性機能とか男性らしさを残したいっていう意味もあって残す方もいらっしゃるんですけども、ご自身が、その、あえて選ばれたというのを、ちょっと少し詳しく聞かせていただけませんか。

それねまあ、早計であったかどうか知りませんけれども、もうあの、煩雑だったとか、あの、あれね、(薬価が)10万円するんです、あの注射ね。だから、(自己負担額は)3万円でしょう。まあ、お金的な問題はあんまり問題なかったやろうけどもねえ。やっぱり、あのー、まあ、じゃまくさいないう、じゃまくさいな思いましたね、もう。どっちみち一緒やったら、もうね、あの、ええ。まあ、自分はそう思いましたけどね。

前立腺がんの語り

スポーツをやっていても、攻撃的な部分や競争心に対するホルモン療法による影響は全く感じない。それには個人差があるように思う

――男性として何かご自身のイメージとか、その辺のことで。

それはね、全く感じませんね。攻撃的な部分はちゃんと出てきますしね。ゴルフなんかやってても、何かしてても、競争心だとか、もっと遠くへ飛ばそうとか、もっとこうというのは影響全くないですね。はい。
ただ、私スポーツクラブ、毎日のように行ってるんですけどね、今。スポーツクラブで一緒にゴルフやってる仲間でも、何人か私よりあとにね、前立腺がんになって。そして、私は精神的な衰えなんだと思うんですけど、「もうダメだ」的にね、やらなくなっちゃったりね、スポーツクラブにも来なくなったり、とかっていうのがその中に何人かいますね。でも2、3年してまた顔出したりしてる人もいますからね、やっぱり個人差なんじゃないかと思いますね。

前立腺がんの語り

ホルモン療法中、妻から「女みたいに細かいことばかり言う」と言われたが、自分ではむしろ優しくなったように感じていた

えー、ホルモン剤のほうの、うーん、効果のほうがね、えー、出てくるんですよね。少しずつね。すぐには出てきませんけど、やっぱり、あのー、何ていうんでしょうね。かみさんいわくに「あんた、女みたいになってきよるよ」と。「細かいことばっかり、近ごろ言いよるよ」と。「えっ、そんなことないよ」っていうようなことでね、話しよったんですが、何となくね、やっぱり1年間もホルモン剤飲みますとね、自分では分からないんだけど、内面的に何か変わったみたいだったですね。かみさんいわく。うん。「何か知らんけど、いらいらしとる」とかね、「細かいことばっかり言っとる」とか言ってましたね。はい。

――ご自身では、そんなに自分が変わったっていう意識はなかったんですか。

ええ。あのー、肉体的にはね、あのー、分かりますよね。だけど、精神的にね、人間が少し変わったなっちゅうのは、全然、自分で分かりませんでしたけど、確かに考えたら、細かことにえらい……、ね、言われてみれば、確かにそうなんですね。こまんかことに気付き出したっていうんでしょうかね。うん。これは、ちょっと不思議やったですね。はい。言われてみれば、「ああ、そうかな」っていう気がしましたね。

――何かこう、やる気が失せるとか、闘争心が失せるとか、そういうことはあんまりなかったですか。

えー、そうですね。闘争心っていうのは、あのー、もう年が年ですから、元々そんなになかったわけですが、自分としては、大変優しくなったような気がしよったんですよね。こまんかことに気付くんじゃなくて、優しくなったっていうふうな気はあったんだけど、あのー、何となくそこら辺は、気分的な問題はありましたね。ええ。