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前立腺がんの語り

リンパ浮腫について事前に説明がなかったことを疑問に感じたが、医師はリンパ浮腫に関心がなく、がんが治ればいいと思っているような印象を受けた

ほいで、それもらってから、また、紹介状出してくれたお医者に行ったんよ。ほいたら、そのとき初めて、「先生こんな、リンパ浮腫と違うんかえ?」って言うたら、「リンパ浮腫です」って、まあ言うんやけども、「ほら、先生これ、どんなしたらいいんよ?」って聞いても、「どんなにしたらええ」っても言うてくれへんし。ほいで、その説明では、そのー「10人に3人ぐらいが、まあ、こういうもんが出るんや(*1)」というぐらいの話で、「ほいじゃあ、先生、これ、どんなしたらいいんよ?」って。ほしたらまあ、結局、矯正ストッキングっていうものが、まあ、インターネットに書いてあったんで、その書いたやつを、まあ、「こういうストッキング、先生、あるの違うんか」って言うたら、「そんなん…、まあ…あることはあるんやけども」ってその先生、言うて、そのー、詳しいこと、言うてくれやんのよ。ほいでそのー、「まあ10人に3人ぐらいかで、先に、そんなに説明することない、ようけないでしょう」っていうような言い方やしよ。ほいで、何となーくリンパ浮腫っていうもんは、まだそんなに何してないんやなっていうことで、まあ、したんやけどね。
ほうやってその時分はまだ、その先生にも、その浮腫っていう、リンパ浮腫っていうことにあんまり関心なかったようやねんな。うん。ただ、まあ、「がんっていうものを抑えたら、まあええやないか」っていうような、あら、考え方であったんちゃうかいなって僕から思うんやけどねえ。ほうやって、もうちょっとケア、やっぱり手術した後のケアっていうんか、そういうことをよ、もっと患者さんにね、言うてほしかったなっちって、まあ、言うたんやけどね。

*1 リンパ節を取る手術後にリンパ浮腫が起きる割合については、調査によってばらつきがあり、前立腺がんの手術後のリンパ浮腫に関する正確なデータはありません。

前立腺がんの語り

手術のときには説明がなく、足が腫れたときは転移したかと思い、びっくりしたが、家族がインターネットで調べてくれてリンパ浮腫だと分かった

それから、「手術をしよか」っていうことでしたんやけども、そのときには、浮腫とか何とかっていう説明は全然なかったんよ。ほいでまあ、リンパ浮腫も、リンパ節か、リンパ節も取るとか取らんとかっていうことも話はしてくれやらんだんけどね、うん。
そして、ちょうど丸4年たってからの7月の14日ぐらいに、ちょうど台風の後やと思うんやけどね。だから、ちょっとミカンつくっちゃったんで、倉庫がちょっと傷んだんで。ほいで、倉庫を直しに行って、梯子とかあんな脚立とかいうもんに乗って、いろいろ、まあ、ちょうど日中(ひなか)ぐらいかかったんかな。ほいで、昼戻ってきて、ひょっと汗かいちゃったんで、ちょっと、この服を脱いたら、足がものすごくぱんぱんに腫れちゃったんよ。ほいで、それでびっくりして、「こらまあ、転移してこんなになったんかいな」っていうことで。
ほいで、それから明くる日、その紹介状書いてくれた、先生んとこ行って、病院へ行って、診てもうたら、「こんなになったらなあ。なったんか?」っていうような言い方で、はっきりと説明してくれはんのよ。ほいで、「こら、おかしいな」って言うて、ほいで、それを妹があったんで、妹がインターネットを、まあ、あれはしてたんで。ほいで、あれ、会社か何ぞでインターネットか何ぞ、まあ、あったんやな。ほいで、それ、まあ、「調べてやら」って言うて。ほいでまあ、兄貴もインターネットの、何やしちゃるさけに、兄貴にも言うたら、兄貴もいろいろと、調べてくれて。ほいたら、結局、その資料とかあんなもん、送ってもうて。
ほいたらそこに、「浮腫、リンパ浮腫っていうもんです」っていうような、何かあって。ほいで、その中でいろいろと詳しいことは、やっぱり、書いてあったんで、ほいで、「ああ、リンパ浮腫やな」っちって。

前立腺がんの語り

勃起はしなくなった。医師からはバイアグラも勧められたが、年齢も年齢だし他の臓器に問題が起きたら嫌だと思い、使用はしなかった

それと、あとは…。まあ、あの勃起するいうんですかね。それが、やっぱりこうしませんので、先生から聞かれて、「勃起しますか」ということで聞かれて、「いや、しません」ということで、返事しましたら、「まあ一応、何かのもんを利用する方法もある…。まあ成果はどうか知らんですけど、ある」ということで、具体的な名前で言いますと、「バイアグラ、いっぺん使ってみますか」ということ、話聞きましたんですけど、まあ、年齢がある程度来てまして、もう利用すること、あまりないんで。まああと、ほかの症状出したいかんので、バイアグラは、使用してません。まああの、人によったら、利用されたら、またその、元気になるかも分からないけど(笑)。

―― バイアグラの使用で、ちょっとほかの症状が出ると困るっていうふうな、おっしゃってたと思うんですけど。

まあ結局それだけの、強さが、何かそういうふうの刺激を与える強さがあるいうことは、人間の体であるんで、やっぱり内臓的にいろんなこと、それを利用頻度によって起こってくんじゃないかと。やっぱいっぺん使うと、使いたくなりますわね、また。それで症状よかったら。そうすると、内臓的に問題起こってくるんじゃないかと。だったらもう、今さらこの時期になって、ほんなこと起こしとうないからやめとこういうことでやめました。

前立腺がんの語り

手術後の変化の一つとしては、前立腺を取ったあと、尿道が短くなり、尿道を締める筋肉が弱まった感じがする

―― はい。で、まあ、この手術、そのー、(前立腺を)摘除、取っちゃうっていうことですので、尿のほうとか、あと、性機能のほうに、こう結構、障害が残る方がいらっしゃるんですけども、その辺は、ご自身の場合はいかがでしたか。

まあ、手術後感じたことを言いますと、まず、やっぱり、前立腺を、うん?まあ2~3cmの大きさなんでしょうけど、切除した、外したいうことで、実際、尿道が短くなったいうことで、自分のあのー、実際の、あの尿をするところの部分が短くなったような感じがまず一つ。やっぱりこう、つなぐんですな、切って。いうことで、短くなった。
ほれが一つと、あとやっぱり、その前立腺部分の筋肉が、尿道を締めつける筋肉ですか。それがやっぱ弱まってるから、ちょっとこう、おなかが張ったりなんやしてきばったとき、ちょっと、少し漏れるいう感じは…。もう完全に漏れたいうんじゃなしに、ちょっと何かにじんで漏れるいう感じは(あります)、おしっこが。

前立腺がんの語り

自分は完全なインポテンツにはならなかったが、夫婦生活で困っている人は勃起を補助する器具を使うことも一つの方法だろう(音声のみ)

それで最後に、前立腺で手術をした場合、それから放射線を使っても、男性機能にはやっぱりダメージがあります。で、放射線のほうがそれは少ないと言われておりますが、手術の場合は私は先生からお聞きしたので、そうだろうと思うんですが、前立腺のところに勃起神経が2カ所来とるんだと。で、昔はもう遠慮会釈なくとにかく切った。というのは、前立腺がんというのは前立腺の真ん中にできるんじゃなくて、真ん中にこういろいろ障害が出てくるのは前立腺炎で、やっぱり縁のほうにこう出てくる。そうするとそういうところに出やすいので、それに考慮していると残ることがある。というあれもあって、昔は遠慮会釈なく切ったんですが、今はそこらへんをこう、ある程度こう、上手にやって、悪いところは取ってしまうという形ですが、ある程度残すようにする。2つはあるって聞きました。そのうちどちらか1つは残すようにするんだと言うんですね。私はもうインポテンツになるよと言われたけど、そこは必ずしも完全なインポテンツにはなっておりませんでした。半分ぐらい助かってると。半分ぐらい立ったんではなかなか役には立たんわけなんですけど、それでみなさんがお困りになるんだろうと思うし。それでバイアグラというのはある程度の効き目があるようですが、やっぱり完全でもないし。しかし完全な夫婦生活ということになるとある程度勃起力がないとダメ。そうすると、1ついわゆる、えっと、こう、それにこう助けるような形で、えっと、勃起するときにそこを真空にしまして、真空ポンプで空気を抜いてやって勃起を助けて、元を押さえるというふうな器具*1を、私の昔では売ってましたね。最近はそれは売ってるのかどうか知りません。必要がないのかどうかも、ちょっと最近の手術は良くなって、そこらへんのあれはそう必要ないのかっていうのもよくわかりませんが、いわゆるそういうふうな器具を売っているような店がありますわね、それに売っておりまして。それであればとにかく完全にはいきませんが、普通の生活は営めると。これは人間の基本のあれですから、特に我々の年ぐらいになるとまあ誰でもあれ(性的な欲望が低下すること)ですけど、50代の人とかそういう人がなった場合やなんかはもっと深刻だと思いますし、えっと、私が同じ入院しているときに、その人はもうほとんど80ぐらいになってましたけど、その人は近頃ちょっともう、そこらへんがしっかりしないんで、というようなことで嘆いておられるように、人間というものは生きている間はそういうふうな気持ちがきちっとあるものですから、それが普通の人間だろうと思うんです。そのためにはそういう器具があるということだけをお話して、今、売ってるかどうか、どこで売ってるか言われると私も困るんですが、参考のために。一応不自由でも大体役に立てるような形にはなるということでございます。

*1 陰圧式勃起補助具のこと

前立腺がんの語り

勃起神経は温存しているが、パイプカットした状態で、射精が出来ないと後から聞いた。考えてみればしょうがないと思った

―― うんうん。それでとにかく(勃起)神経は温存されて、で、それが、ご自身にとってはすごく大事なものとして、2つの心配されていた中の1つであったということなんですね。

うん、うん、そうですね。ただまあ尿管を切っているわけですし、精嚢を取っとるわけなんで、状態としたらパイプカットした状態ですよというのは言われましたね。じゃ、どうなるんですかって言ったら、普段とは恐らく変わりませんからって言うから、ああそうですかって。で、別に変調もないし、ま、いいんだなと(笑)思ってますけどね。

―― パイプカットというのは、もうちょっと詳しく聞いてもいいですか。

結局、精嚢で作られるわけですね、精子が。で、それが溜まって射精で出るんですけど、も、それは尿管(尿道)を通って出るわけです。けど尿管(尿道)を切ってしまっている、で、ま、繋げてはいるんですけど、精嚢を取っとるから、溜まらない*1。そこを通らないのか、もう通らなくなったんだ。あ、そうですよ、切ってしまっている。もうパイプカットと一緒ですね。だからパイプカットと同じなんですよということで。

―― その、機能的には残ってない、性機能としては…?

だからもう、いわゆる子どもが作れない状態ではあるわけですね、射精しないから。

―― それについてはそのご自身では手術を受ける際にそういうふうな、まあ副作用というか、そういう後遺症になってしまうっていうのは承知の上で受けられたということですね。

いや、パイプカットはあとから聞きました。あとから私が質問したのか。ただ、うん、インポテンツに、一時期ですね、なる可能性があるということと、尿失禁は事前にあったんです。

―― その、まあ射精ができなくなるというお話は、じゃああとから聞いたわけですね。

そうですね。

―― うーん、それはお聞きになったときはどういうふうに感じましたか。それはあの聞いてなかったから、大分こうびっくりされたことでしたか。

いえいえそれはしょうがないことですし、考えてみればそれはそうだなって思いますから、だから、だから、例えば私がまだあの、若くて、子どもを作ろうという予定があれば、あれですが。まあそれがあれば、医者も事前に言っていたんじゃないでしょうかね。で、医者も私が家内を亡くしたということをもう知ってましたし、そういうことで、まあ年齢が年齢ですから、まああえてご説明がなかったのかなという気はします。ただインポテンツになる可能性は言われているわけですからね。

*1精子は精巣で作られ、前立腺や精嚢からの分泌液と混じり、精管(後に射精管)を通って、精液として尿道へ排出されます。前立腺がんの手術では、前立腺とともに、精嚢、前立腺が付着している部分の尿道を切除し、残った上下の尿道を繋いで尿が流れるようにします。つまり精巣は残っているので、精子は作られますが、精液となって排出される通り道がなくなります。

前立腺がんの語り

勃起障害のことは妻にも伝えている。子どももいて用事も済んでいるし、初めのうちは焦ったときがあったけれど、そのうち慣れて諦めた

―― うん。奥さまとは、そういうこう、性機能の障害、勃起障害が起きてるっていうことに関しては、お話し合いをされたんですか。

はい、しました。

―― どんなふうにお話されたんですか。

まあ、「用事は済んどるけえ、もういいじゃろ」(笑)。子供、ちゃんと育ってますんで。

―― ああ。割と、手術受けられたのも57歳ですので、お若い時期でいらっしゃいますよね。あんまりそういうこう、「もう用事は済んでる」っておっしゃってましたけど(笑)、ご自身にとっては、そんなに大きなダメージではなかったんでしょうか。

うん。ちょっと初めのうちは、ちょっと焦ったときがあったんですけど、そのうちもう慣れましたもう。もうあきらめました(笑)。

前立腺がんの語り

術後、勃起神経は全部取っているし、性的な欲望もないが、夫婦生活に影響はないと思っている

―― あとは性生活とかそういった部分では影響は出てきますか。

っていうか、それはもう全摘ですから、もう全部神経も取りましたので、はい。そういう欲望も全然ないですし。

―― そのことは家族の生活というかご夫婦の生活というかに影響ありますか。

それはないと思っとります。

―― そうですね、病気になったということで、自分自身のイメージっていうか、例えば男性性とか、そういうことについて何か影響を受けたっていう感覚はありますか。

男性性?

―― 自分の男らしさとか、そういう部分に対してのイメージが変わったっていうこととかありますか。

いやそれは。

―― 特にないですか。

いやあ、それは、わからない。まあ前立腺を取ったから女性化したかもわからんですけど、よくわからんです。

―― 自覚としてはない。

ないですね、はい。

前立腺がんの語り

性機能障害のことは術前に聞いていたし、別に気にしていない。若い人なら考えるかもしれないが、自分は元気に活動しているし、変わった感じはしない

うーん、性的障害はね、は、手術する折にも聞いとったし、それから神経を切るから別にもうどうもないし、と思った。うん、僕は。それより放射線のほうが恐かった。です。そう、うん、他をやられると思ってね、うん。だけど放射線のほうがええかったんかもしれんけどね。だから、その勃起障害とかなんとかいうより、あんなんもう神経切ったらもう全然なんにもないんじゃから、うん、か、関係ない。うん。神経切らなんだらどうしようかこうしようかってなるけどね。神経切ったらもう全然関係ないし。うん、はよやからいい、別にどうでもないですよ。

―― そのへんのことで、その、ご自身にとってね、まあ前立腺って男性にしかない臓器なので手術をしたっていうことで、男性としての自分のイメージ、男としてのイメージっていうのがこう手術前とあとで変わったりっていうことはありましたでしょうか?

いや、僕は、変わらん。うん。もう、今まで通り、うーん、元気に遊んでいますからねえ。あの遊ぶいうんか、運動してますから、うん。まあ手術じゃから、これだけ切っとるじゃから、腰を曲げるには、これちょっと痛いけどね。うん。もう真っ直ぐ向いて歩くんならできます。何でもできる(笑)。重たいものをこう持ち上げるのはちょっとできんし、急にすぐ立て言われたら立てれんですよ。あとはもうあまり故障はありません。うん。

―― じゃああまりこうご自身が前後で、手術前後で変わられたっていう感じはないっていうことですかね。

うんうん。あまりないなあ。うん、いろんなまあ情報が入っとったから、うん。それでまた、あと、行ったりして話しよるしね。まあ僕らとまあ同じぐらい、もう70、80ぐらいの人もおられるんで、いろんな人がいろんな話を、まあそういう話をするから、うん。別にいいです(笑)。若い人ならな、ちょっと考えるかもわからんけどな、うん。

前立腺がんの語り

できるけどしないのとできないのでは精神的に違うと思い、勃起神経温存を選んだ。術後すぐは多少よかったが、今は役に立たず、諦めていても、やはりさびしい

まあ……、女性の前で言いにくいけど……。男性自身の、あのー、元気がなくなった。もう……、ね、あんまり役に立ち、もう年齢的にももう役に立たんようになる時期なんだけど、でも、まだ年上で元気な人もいるしね。だけえ……。もちろん若い人でもね、こればっかりは個人差があるんやろうけど。まあ、それがさびしいかなぐらいのもんだな。うん。
それはもう、生殖器の一部を取っとるわけやから、それはもう生理的になくなるもんなんで、だから、それはもうあきらめてはおるけども。
ただ、可能性としては半分残ってたんだけど、手術したときは残ってたんだけど、結局……。早い人で3カ月。だから、「3カ月から1年ぐらいで、元に回復、元通りに回復しますよ」っていうことだったんだけど、回復は多分していると思うけど、年齢的にもう、自然にもう、減退状態に入ってるから。だからもう自然現象で、うん、なくなってきてるっていう状態なんで、どうすることもできないでしょうね、これは(笑)。
これはもう、手術……したから、結果的によ、したから、せんからって、あんまり関係なかった。でも、全摘の場合は、完全にもう機能が、あのー、排尿以外の機能、なくなるっていうから、多少……、何ていうの。残ってるんだけど、実際には役立(やくた)ってないから、まあ、どうでもいいやっちゅう感じになるだけでね。うん。
やっぱ全摘すると、気持ちの上では、あれ、どうせ年齢的に駄目になる…なんだけど、あのー、何でもそうだけど、できるけどしないのと、できないのとの精神的な違い。うん。する能力、それから力。スポーツにしても、勉強にしても、何でもいえると思うんだけど。だけど、しないのとね、したくてもできないっちゅうのとのギャップってあるじゃない? そのー、差がね、あったんで、「全摘はやっぱりちょっと待ってくれ」だったんやね。
だけえ、それは一応、精神的に、のほう、大きいから、正解だったと思う。半分残して、神経残したっていうことはね。でも、全然、役立(やくた)ってないけどね(笑)。現実にはね。うん。

―― うん。でも、お気持ちでは、やっぱりすごく大事な部分だったんですよね。

うん。男としては大事だと思うね。

―― はい。

うん。この事実いえるのはそれやろうな。