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前立腺がんの語り

術後の性機能障害について医師から説明を受けたが、がんを取り去ることを最優先したいと思った

――ご自身としては、性機能の障害について、どんなふうにお考えで、治療の前にどんなふうにこう説明を受けて、ご自身としては今どういうふうに思われてるのかっていう、その辺、少し詳しくお聞かせいただきたいんですが。

その、手術の前にですね、性機能の障害につきましては、主治医の先生から、説明を受けましたし、で、まあ、その先生は、その先生の上の方に、「(私が)どういうふうな回答をされましたですか?」と。で、それは、リンパ節を切るときに、どういうふうな切り方をするかということにですね、関係するんだ、いうことで。まあ私自身、初めからもう明確なビジョンを持っとりましてですね、やっぱり、がん細胞を切り取ることがやっぱり先決だということで、「必要あれば全部、リンパ節を切っていただいて結構でございます」と。で、そのときに例えば、勃起障害とかですね、それが起こる可能性は、まあ、極めて高い、極めて高いって、それが起こるのが当たり前だと、先生からは説明受けましたし、「それに対する、対応につきましては、先生にお任せします」と。で、まあ、結果論としては、これは娘から聞きましたけども、リンパ節の片方のところにはですね、そういう性機能にかかわる、神経のほうは傷ついてますけども、片方のほうについてはですね、まだ残しましたというようなことを、説明されたようです。ただ、もう60(歳)、まあ私のような年齢になりますとね、そういう部分っていうのは、これから、そんな必要になることは、まあ、極めてゼロに近いですし。それゆえにやっぱり、まだがん細胞が残ってるんだと、あるいはまだ不透明な部分があるんだということは、やっぱり思いたくなかった。従いまして、リンパ節も切るという決断をした次第です。

前立腺がんの語り

手術は怖かったが、完全に取れて、中がどうなっているかわかるのがいいと思い、その場で即決した

その担当医の先生に、「がんです。早期です。いろんな治療法があります」と言われた時にですね。まあ最初の日だったんですね、それで「一度帰られて、ゆっくりご家族の方と相談して、その手術にするかどうかを決められたらどうですか」と、もちろんその、優しくっていうか、「ホルモン治療もあるし、放射線治療もあるわけですけど、どうでしょうか」って言われたんですね。ただ僕は、手術自体は恐い。ただやっぱ手術は、せにゃいかんなって思ってたんで、ここで1回家に帰ると、もう出て来れなくなるんじゃないか(笑)っていう、弱い自分を知って、気付いていたんでね、ここは退路を断たないといけないなと思って、「先生もう手術します。もう手術で進めてください」って、僕言ったんです。そうしたら先生のほうがびっくりされて、「いいんですか」って(笑)。もうだからその日に手術の日を決めました。でも、まあ、退路を絶たんと、もう恐いでしょう、ずるずるいくといかんから、と思ってですね。

――すごく不安だったにも関わらず、やっぱり手術にしようと思った、その理由というか、これがあったから手術にしたっていうのって、何か?

うん、まあ、自分なりにあれしたの、今もう医学が進んで、放射線技術も進んで、手術と変わらないような効果が期待できるっては、まあ、知ってたんですけれども、「実際に取ってしまう、」で、「取ったあと、どういう状態になったのか見れる」、やっぱこの2点ですね。完全に取れる。で、状態…中が見れる、見れるでしょう、開いて。で、本当に周りに転移がないかもわかるし、取ったあとに中がどうなったのかもわかるしっていうのもあったからですねえ。そりゃあ、もう薬飲んだほうが治療自体は楽なんですし、放射線のほうが…まあ僕は当てたことがないんですけど、いいのかなとは思いつつ。そうやって踏ん切りましたね。

前立腺がんの語り

若いから手術のほうがいいのではないかと医師に言われ、自分も手術のほうがいいと思った

――その手術にするかどうかって決めるときは、奥さんであるとか。

うん、「2人。(奥さん)呼んで来てください」って言うて、行って、2人で晩に行って、うん。それで、「放射線もあるし、いろんなのがある。何にしますか?」いうて言われたけ、まあ僕は、「まあ手術のほうがいい」と、言うたんですけどね。他のことは言わんと。そしたら先生も「まあ、あなたは若いから手術のほうがええんじゃないか」いうて言われた。そしたら、みんな治ると思うたんですよね、僕は、うん。

――そのときは、奥さんとか息子さんは、手術っていう方針には賛成だったんですか?

うん、まあ賛成って、まあ子どもは(その場に)おらなんだけど、まあ賛成いうよりも、先生が「手術のほうがいい」言われたから、「それでよろしい」って。

前立腺がんの語り

小線源療法の後に手術はできないが、全摘した後でも放射線療法はできるので、手術で取ったほうがいいと思った

――もし、その治療(密封小線源療法)が当時からあったら、やってみたいというのはありましたか?

いやあ。やっぱりな、さっき言ったように、だから、それ(小線源療法)が駄目だって、(その後で)全摘ができるっていうなら考えたかもわからんけどさ。全摘してこっち(放射線療法を)やれるって言うんだからさ、さっきも言ったように、こっち(手術)を選んだんだからさ。もしかそういうあれ(小線源療法)をやって、ちょっと、やっぱ、(PSAの)数値が上がって、したら全摘しましょうかっていうのは、駄目だって言われたから。わたしは、(小線源療法は)しなかったと思います。

――そうすると、本当に根治をめざすという感じですかね?

うん、そう、そう。だから、リスクじゃなくて、バアーンと取った方が、ある程度いいですよと、それは、一つぐらいはリスクがあるかも分からんけどね。まあ、いろいろ今言ったような、勃起ができないとかさ、尿漏れがあるとかさ、そういうのは、あるけれどって言われたけど。いや、それは関係ない、というふうに、バンと全摘にしたんですよ。確かに、手術したから、大変ですけどね。全部取っちゃうから。

前立腺がんの語り

どの医師でも自分のところでやっている治療法を勧めるだろう。新しい治療法も含めて第三者的判断をくれる場があったらいいと思う

セカンド・オピニオンというのは、やっぱり重粒子線の出身の方だったら重粒子線につい軍配上げるんでしょうね。だからセカンド・オピニオンってなかなか難しいと思うし、あんまり充実してない…非常に充実してないねというふうに思いましたね。もう少し充実させてもいいんじゃないかなと。というのは、僕は何で小線源に傾いたかといいますとね、アメリカは重粒子線全然やってないんですよね。小線源専門なんですね。で、日本の常識では、小線源はごく初期の段階、重粒子がその次の中間的な段階、その上だともうちょっとほかに、いろんな方法はあるけれども、というような話になってくるようですね。だからそういう意味で、アメリカがいわば小線源一本と、恐らく全摘もやるんでしょうけど、というようなことをいいますとね、小線源ってかなり信頼できるんじゃないかなと思うんで。それから、ほかにもいろいろ新しい治療法が出てきてるようだし。その辺のところを客観的に「おまえの段階だったらこれがいいよ」「君だったらこれだよ」というようなね、第三者的な判断をしてくれるところがあってもいいんじゃないかなという気がするんですけどねえ。

前立腺がんの語り

セカンド・オピニオンの細胞診断で「がんではない」と言われ助かったと思ったが、意見が分かれたので、もう一度生検を受けることになった(テキストのみ)

「どうしますか」と。「手術しなさい」と。そのとき64歳でしたから「期待余命が10年以上ある人は手術がゴールデンスタンダードですよ」と言われて、「手術しなさい」と言われましたんで「そうですか」と。「ちょっと考えさせてください」と言って。で、セカンド・オピニオンしようと思って。今度はA大(大学病院)に行ったわけですね。それでA大に1回、Cセンターのプレパラート…プレパラートというのは、細胞をね、細胞診を取ってきた見本ですね、「細胞の見本を借りてきてください」と言われたんで、借りにいったわけですね。で、見たら「いや、これはがんじゃありませんよ」と。「前がん症状で、がんじゃありません」と。「試しに日本で前立(腺)がんのその細胞を見る一番権威の先生がB大(中部地方の国立大学)におられますから、そこへ送っていいですか」ということで送ったわけですよ。まあ、そしたら同じような意見で「がんじゃありません」と返ってきたんですね。おお、助かったなと。だけどA大ががんじゃない。B大もがんじゃない。だけどCセンターはがんですと断言しとると。手術しなさいと。まあ、半々の意見に分かれたわけですね。ですから念のために、じゃあA大で1回「これだったら、あなたも納得いかんでしょう」と、ね。「こっちと、こっち判断が違う。白黒が付かないでしょう。ですから、うち(A大)でももう一回やられますか」と。「うちでもう一回針生検して、大丈夫でしたら、白になれば気持ちもすっきりされるでしょう」と、そうやって言ってくれたんですね。

前立腺がんの語り

セカンド・オピニオンでは「5年生存率2割」と厳しい意見を聞いたが、別の医師から根治の可能性が半分あると言われ、こんなに違うのかと思った

一番いろいろ話お聞きして、ああ、こんなに違ってもいいのかなという具合に思ったのがですね、セカンド・オピニオンでは、あなたの5年生存率2割だというようなことを言われて、そこの(フォース・オピニオンを聞いた)京都のほうの病院では、いろいろな説明聞いて最後に、まあこれ、治癒の可能性ですね、根治の可能性がまだ半分ぐらい残ってますよ、と。だからしょげないでやりなさいと。半分治ると言われたらですね、私は、多分もう私、5年で2割いうたら、早けりゃ2~3年後には死んでるんじゃないか(笑)と自分では思うてましたものでね。非常に…それだけでもう、まあ有頂天というほどじゃないでしょうけれども「ああ、こんなに違うことがあるんかなあ」というぐあいに感じましたですね。

前立腺がんの語り

以前よりだいぶ浸透したけれど、医師の方からセカンド・オピニオンを積極的に勧めて欲しいと思う

日本のお医者さんは、わりかしプライドが高い人が多くてですね。自分の治療が人に批判されたりするのを嫌がっている。そういうことは正しいことかもしれんけどね。それは、自分は間違いないと思っているから、その治療をやるんで、それは正しいかもしれんけども、本当に正しかったらね、そんだけプライドがあるんだったら、ほかのお医者さんに診てもらっても全然間違いなきゃどうってことないでしょうと。そういうことを僕は言ったような気がします。だからできるだけセカンド・オピニオンをしてもらうように、患者さんに、主治医の人は勧めてくださいと。

前立腺がんの語り

セカンド・オピニオンを受けてみたいけれど、どこがよいかわからないし二股かけていると感じる。今の先生も悪くないし、どこでも同じだと思う

先生のその醸し出す雰囲気もあるんでしょうけどね。まあそういうふうに何でもかんでもこう、気さくに話してくれる先生だとね、ましてやそのセカンド・オピニオンですか、「じゃあ、もう一声聞いてみたい」なんて思わないんだろうと、はっきり言って思うんですよ、実際のところね。ところが、じゃあどこへ行けばいいかってのもあるだろうし、じゃあその先生が果たしてどうかっていう不安もあるだろうし、まあどっちみち託したんだから、まあいいやって済んでいるっていう部分なのかな、うん。別に悪い先生でもないんだろうし。もう託すしかないだろうっていうのが実感ですね。でも聞いてみたい気持ちはありますよ。はっきりね、この病気はこうで、こうで、こうで、余命を何年で、なんてね、言ってくれる先生のほうがいいのかとか思ったり。さっきも言ったように、ずうっとじゃあ、このままなのかあとかね。いつまでこんな、あれしてんのかな、なんて。そのうち思いますよ、っていうのね。ていうか、それをちょっと思い始めてきたってこともあるんでしょうけどね。どうなんだろう…そういう二股ですよね、いわゆるね。そういうこと自体はいいものなのかなあ。あんまり考えたことはないけど…聞いてみたいなあと思ったりはしてるね、うん。

――何だか裏切るようで悪いとか、そういう意味ですか。

それもありますね、何かね。「信頼してないのか」なんて言われそうだとかさ、それはありますよね。やっぱりね。うん。

――例えば大都会だと病院がたくさんありますよね。

そうそうそうそう。

――そこが違う部分だったりしますか。

ありますね、やっぱりね。やっぱりこの辺の医療が、地域医療が充実してないっていうのが、やっぱりあるんでしょうね。今、話題じゃないですか。どこへ行っても医者が足りないって、ねえ。果たして次に行ったところが、その道の権威だとか、それも分からないし。根底には医師に対する信頼なんて、根本からないのかもしれない。それは分からない(笑)。私自身は…うん…誰でも同じかなということで済ませているのかもしれないですね。

前立腺がんの語り

セカンド・オピニオンをどこで受ければいいかは難しい問題だが、系列の違う病院、違う治療法を行っている病院に行った方が良いように思う

同じグループといいますかね、同じ大学出身で同じような治療法をやっているというところは、セカンド・オピニオンを聞きに行っても、その意味というのがね、あまりはっきり…薄いわけですよね。だから、違う治療法をお持ちのところ、例えば1軒目で手術を勧められたというなら、2軒目では放射線が得意なところとかですね。そういう具合に、違う分野の得意分野をお持ちのところを、やっぱり探して行かれないことには、せっかくのセカンド・オピニオンでなかなか話がうまく得られないですね。皆、例えば手術でも内視鏡が得意だとおっしゃる先生にとっては、自分の内視鏡は絶対自信持っておられますからね。やはりそれが、自分のやり方が一番だと皆さん、得意な先生ほどやっぱりそういう思いいうのが強いでしょうから、わざわざ紹介するときにでも、セカンド・オピニオンどこで受けたらいいんでしょうかいうて、そういう聞き方をすれば、お医者さんいうのは、やっぱりね、紹介先のお医者さんをわかって誰々様いうて書くわけですから、自分の知ってる人のほうが書きやすいわけですよね、お医者さんの立場としては。知らないところにわざわざ紹介状書くよりは。だから、大概自分の知ってるところに書かれるほうが多いんで、そうなると意味がうんと薄くなってきますからね。やっぱり、別にセカンド・オピニオンというのは、お医者さんは直接ご存じないところでも皆、そういう診療情報提供書をまあ書いていただけるし、それはそうしなければいけないというのが、それはお医者さんの仕事ですから、ご遠慮なく皆、自分でこの先生がいいだろうと思ったら見つけてきて、その先生あての紹介状を書いていただくと。それは堂々とお願いすればいいと思いますね。