投稿者「dipex-j」のアーカイブ

英国人の乳がんの語り

なぜ乳房を失っても、傷跡を見ても、不安にならなかったかを話している

傷跡については問題ありませんでした。私は手術室看護師です。一般の方とは違います。傷跡は仕方のないものですから、気になりませんでした。私は両側の乳房切除術を受けたわけですが、乳房を失って悲しいかと聞かれたら、正直な答えはノーです。私にはこの60、70年間、乳房がありました。私自身と同じように若々しかったその乳房も、もう役目を果たしました。乳房がなくても私は一人前なのです。乳房を失ったことは、大きな問題ではありませんでした。パッド入りブラジャーをしているのは、そうしないと服を着たときにおかしいから、ただそれだけの理由です。それ以外のことは、本当に全く気にしていません。

英国人の乳がんの語り

乳がんの手術後、自分の体を見ることにためらいを感じていたが、時間の経過とともに気持ちが変化したと話している

担当医は「手術後の傷跡を自分の目で見るように」勧めるのですが、自分ではみることができません。あちこちに手術で縫合した痕があったからですが、私は「いやだ」と言いました。傷跡を見るたびに「ひどい!」と、嘆かずにはいられませんでした。夫には背中を向けて寝ていました。お風呂に入るときも、自分の姿を見ることができません。ただ、スポンジであちこちを洗うだけで、みることはできません。1ヵ月たってもまだ見ることができずにいたのです。
手術後10日後に抜糸したときでさえ、私は自分の体を見ることができなかったのです。それでも術後1ヵ月ごろから自分の体を見始めるようになりました。鏡に映った自分の姿を見て「これまでみたことのないような変な姿で、ひどく醜い形」と嘆きました。そこには乳房は1つしかない女性の姿が映っているのです。
しかし、時間の経過とともに私は人工乳房をつけた自分の乳房に違和感を感じなくなり、鏡を見ながら「どうせ誰も知らないのよ」、「素敵よ」っていうんです。「でも、いまは私、結構幸せなのです。私はとうとう2つの乳房を切除しまったけれど、以前のように夫に対して恥じることはなく、彼に背中を向ける必要もなくなりました。事実、彼も「君は素敵な傷跡を持ってるね」といってくれ、今はもう何も悩むことはなくなったのです。

英国人の乳がんの語り

快復してからは、個人的なことや家族との関係にもっと時間を割きたいと思うようになった

本当に、母の歳位まで生きると思っていました。事故やなにかでない限り、若死にするなんて考えもしなかった。今では、前よりは死を身近に考えるようになりました。
私ぐらいの歳になると、ともかく人生の最後を考え始めるものです。中年の女性にとっては自然なことね。そうね、仕事も終わりに近づいているの。
終わりに近づいている。子どもたちは大きくなって、家を去り、それぞれの家族をもつ。もう、私は注目の的ではないわ。
死は確かに現われているわ。死はそこにあるの。でも、それはそんなに悪いことではないのかもしれない。死は私に、人生に飛び込んで、人と一緒にいたいと思わせてくれるの。今までよりも、確かに友人たちと仲良く過ごせるの。本当に不思議ね。そんな風に努力しているわけではないのに。
そうする必要があったの。それは、死を自覚することのプラス面のひとつだわ。このことについて話すときには、とても感情的になるの。というのも、確かにそれは、このおぞましい状況から得られるとは考えもしなかった贈り物みたいのものだから。
同時に、嘆きや悲しみは、私の人生を深めてくれたと感じています。そして、友人たちと一緒にいたいという気持ちのせいで誰かが夕食に誘ってくれるととてもうれしいわ。

英国人の乳がんの語り

乳がんになった後で妊娠した喜びと、人生に対する前向きな気持ちについて話している

でも化学療法を受けたとき、妊娠できなくなる可能性があるって忠告を受けて、すごく気持ちが乱れたわ。たとえそうだとしても、妊娠できるかどうか知りたいといつも考えていたの。だけど病院の人たちが「ええ、おそらく妊娠できないでしょうし、治療によって更年期が始まる可能性があります」と言ったとき、私の更年期はもうすぐにでも始まるように思えたわ。そして2年前、いいえ今から3年前になるんだけど、まったく思いがけなく、妊娠したわ。妊娠の経過はとても順調で、出産もうまくいって、今では2歳になる小さなかわいい男の子がいるの。この子はとても綺麗で、愛嬌があって、しかもとっても健康よ。いけない、こんなに自慢しちゃった、たたりがないようにおまじないの言葉を言っておかなきゃ、「touch wood」。
この子を何から何まで愛しているの。それに、(咳をして)失礼、この子になんとか母乳を与えたわ、片方の乳房からしか母乳をあげられなかったけれど。この子ったらほんとにすばらしいの。私はとても幸せだし、前向きになれたわ。絶対に人生はいいものよ。乳がんの診断を受けてから今では10年ぐらい経つけど、乳がんから解放されたと言われてから年月が経てば経つほど、気分はもっと良くなっていくでしょうね。

英国人の乳がんの語り

自分が楽しめることをもっとやれるよう今ではパートで働いている

病気を克服できて心底ほっとしています。人生を前向きに生きたいし、やりたかったことを全部やりたいと思いました。私にはペルーとボリビアに行くという一生の夢があって、去年その夢を実現する予定だったのをキャンセルせざるを得なかったのです。実際に治療が終わったのは1月でしたが、9月に南米に行くことを目標に掲げ、それまでに元気になって絶対に行こうと思って、実際にそうしたんです。本当に南米まで行って夢を実現したんです(笑)。それは素晴らしい経験でした

英国人の乳がんの語り

乳がんが自分の人生にもたらしたいくつかの前向きな変化を話している

私は人生が癌とともに止まるなんて少しも思いません。実際、私の場合、多くの点で生活が癌ともに始まりました。癌と診断されたのは40才になったばかりで、多くの女性と同じように、人生は40才で始まると考えていました。40才になったら何をしよう、こうしようと考えていた計画が沢山ありました。
自分が癌と診断されなかったらそんな計画が実現しなかったかも知れないというのはまったく本当だと思います。例えば、私は最近、ギターやキーボードを買い、これから弾き方を習いたいと思っています。本は以前よりずっと多く、娯楽のために読んでいます。家事は早めにすませ、何をしようかと毎日が楽しみです。
州議会でのフルタイムの仕事は大変だったので、以前する機会を持てなかったことに毎日を費やそうと思っています。

英国人の乳がんの語り

乳がんを持って生きていく際に直面する、手続き上の様々な障壁について語っている

 それは様々な形で現れます―そう、あらゆる問題、たとえば仕事を探す、保険や年金について考える、そういったことすべてです。(がんになると)突然こういった状況の中に放り込まれるのです。そして例えば、そうですね、「これまでに深刻な病気にかかったことはありますか?」といったような用紙にチェックを入れようとする時などに、それはぱっと目の前に現れるんです。
 それまではどの答えも「いいえ、いいえ、いいえ、いいえ」だったのに。それは突然現れて、変えてしまうんです、そう、すべてを変えてしまいます。他人の書類に書かれた自分への見方が変わってしまいます。
 ええ、あまりに多くの事が変わってしまうんですから、もちろん自分自身にも影響を及ぼします。それについて考えまいとしても、自分の人生に影響を与えているんです。

英国人の乳がんの語り

再発の恐怖は中々頭から離れない

一旦治療が終ったら普通の生活がまた始まると思います。そして、普通の生活、ふだんの日常がもどってくるのね。もちろん気がかりもあります、心配なのです。
それで、いつもいつも自分の体をチェックしてばかりです。時にはやり過ぎだと思うこともあります。頭から離れることはありません。「おや、ここにしこりがある」と思ったり・・・もちろん、しこりではありません。でも、本当に心配なのです。心配しなくなるなんてないと思いますよ、がんが戻ってくるのじゃないかと。

英国人の乳がんの語り

再発の恐怖があり、定期検診を受けることが不安になる

どこかに、ガンが、ひょっこりできているのではと本当に恐れていました。ですから、自分の体について本当にまた知る必要があったのです。もう一度、自分の体に対する自信をつける必要が本当にあったのです。最初の数年は特に精神的に参っていました。頭痛がするといつも脳腫瘍ができたと思い込み、お腹に痛みがあれば肝ガンに違いないと考えました。
特に最初の頃は、次の検診までの日々を過ごすのがとても辛かったものです。検診の直前にはとても怯えました。前回の検診の時にはガンができていて、医師たちがそれを見落としたかもしれないと思ったのです。検診の直後も、次の検診まで丸々1年も待たなければならないけど、どこかに医者が見落としたガンがあるかもしれないと本当に怖がったものです。でも時が経つにつれて、自転車に乗っているように、自分の体にも自信がついてきました。

英国人の乳がんの語り

徐々に元の自分に戻りつつあることを説明している

私が言いたいことは、やっと先週になって、いい気分になり始めたっていうことなの。そう、もっとよくなるに違いない、かならずもっとよくなっていくわ。心配事がすべてなくなるだろうと思っているわけじゃないんだけれど。心配事がなくなることはないわね。私は常にどこかに痛みを感じることになるのだろうし、今までそうしてきたように「何でもない」と思うか、「そのうち何ともなくなるわ」と思うだろうし、健康という観点から見れば、すべてのことが、今まで私が考えていたよりも大きなことになってくるでしょう。
だけど私は必ず本来の自分自身を取り戻すことができると思うの。だって、以前の感じ方とは違ってきているから。バドミントンを始めたし、この前は求職の面接にも行ってきた。それで、私は私自身の生活を少しづつ取り戻してきていると感じているの。