投稿者「taguchi」のアーカイブ

認知症の語り

紹介状を書いた町医者に検査結果を報告しに行ったら「若年性認知症は5年で廃人になる」と言われた。別の病気でかかっても認知機能を試すような質問をするので行くのをやめた

わたし、あのー、町医者で、うーんと、お薬いただいていたときに、それ、もう、その先生は、あのー、あれ、その、わたし、あのー、あ、うーんと、紹介状、紹介状を書いてもらいたかったから、そこのところの医者に行って、あのー、こういう状態だから、ちょっと1回見せに行きたいから、でも、あのー、「紹介状書いてもらいたいんです」とかって言って。で、そのあとで、また、そのー、結果を報告しに行くときに、「あ、こういう結果出ました」とかって言って。「ああ、そうなの、ああー、若年認知症はね、もう5年で廃人になるって言われているからね」って言われたんですね。もう、何ていう先生なんだろうって、本人を前にしてそんなこと言うのって。もう、それで、そこで、そこに行くたびに、そこの違う病気もあったんで、その、そこの病院に行って薬をもらっていたんですけど、そこに行くたびに、あのー、「首相の名前は」とか、あのー、「知事の名前は」とかって聞くんですよ。で、答えないと、あ、難しい何か、何とか大臣の名前とか、そんなことも聞くんですよね。で、わたしも、何か、だんだんと、ちょっと怒(おこ)れちゃって、「先生、わたし、そんなね、あのー、うーんと、賢くないから、そんなとこまで分かりません」って言ったら、「あ、そうか」みたいな感じで。もう、そこから、そこの町医者も行かなくしました。本当に、あのー、傷つくだけで、毎回毎回、試されているようで、何か、そこから。

で、で、今の行っている先生にその話をしたら、「じゃ、そこで出している、あのー、薬もこちらで出すことにしましょうね」って言ってくださったんで。「あ、ありがとうございます」って言って、あ、言ってみてよかったと思って、そこで出してもらって。ねえ、もう、その町医者の先生も、まあ、先生だから、ま、よかれと思って、その、やってくださっていることだとは思うんですけれども、でも、ちょっと配慮のない言葉にちょっと悲しい思いはしましたね。だから、何か、今度会ったときに、もう5年以上は経っているから、わたしはこんな元気だよって、見せに行きたいなと思いながら。……うーん、でも、まあ、そこの医者には行っていないんですけど……。

認知症の語り

友達が息子に「母ちゃんのこと頼むよ」といったとき、後ろ姿で「任せろ」というように手を振ったのが忘れられない。先のことはわからないので今日一日を一生懸命生きていく

―― 息子さんは、その、診断が分かったとき、どんな感じだったんですか。

そう、あのね、その病院に、わたしの友達がいて、あのー、わたしは、ほかの病気とかで、あのー、その子(友達)にね、あのー、その子に世話になっていうか、その子のところに行ったりするんだけど、その、ま、あのー、友達がいて、で、そのときに、あのー、こういうふうだったんだって言って、その、その子の職場、職場っていうか、その、あのー、病院のね、そこのところまで行って、あのー、結果話に行ったときに、友達が、あのー、うちの子の名前呼んで、あのー、「母ちゃんのこと頼むよ」とかって言ったの。そしたらね、息子が、うしろ向いたまんま、その、わたしの友達に、こうやって手振って、もう、任せろみたいな感じで手振って歩いて行ったのね。息子だって、悲しい思いしているのに、その先生の話聞いたときに、ちょっといなくなったなと思って、ああ、その、「何しに行ったの」って言って、「うん、あのー、脳、脳だけでほかのとこは大丈夫ですかって言って、それは大丈夫だって、それを聞いてきた」って言って。それで、ね、ね、友達のそういう、うしろ向かってこうやってやるの見て、もう、そのときの光景が、いつも忘れられなくて。わたし、この子が結婚するとき、また号泣するんだろうなと思いながら。

……この病気のとき、なって、ちょっと不安になったときに、初めて、ちょっと、離婚したことを、ちょっと、ちょっと、こう、あのー、後悔した。全く1人でしょう、連れ合いがいないでしょう。で、今は、こうやってやっていけれるけども、わたしがいなくなったときに、この子たちはどうなるんだろうかとか、この子、ね、ま、何とかなるんだろうけど。わたしが、もっとひどくなっちゃったときに、どうしょうとかって。そのときに、うーん、ちょっと一瞬、離婚したことを後悔した。でも、いかん、いかん、わたしが離婚したのは、毎日笑っていたいから離婚したんだから、いかん、いかん、いかん、こんなことで。よかったことだからいいんだって。で、子どもも、全然、その離婚したことに対して、あのー、「いないのは、何とも別に思っていないよ」っていつも言ってくれる。

「全然何ともないから大丈夫だよ」って言って。で、だから「ああ、そうか」って。
だからね、ま、先のことは分かんないから、自分がどうなるか分かんないしね。うーん、だから、ねえ、それこそ、ほんとに、ねえ、病気とかで死んじゃったりとか、いろんな人のそういう死を見ていたりすると、ああ、うちの母親も父親も早く亡くしているんで、ねえ、あしたのことは分かんないから、やっぱり、きょうはきょうで、思い切って、もう毎日、ほんとに一生懸命生きて行かなくちゃいけないなって、あしたどうなるか分かんないから、後悔していないように頑張って生きていきていくのが一番いいんだなっていう。そう思いますね。

認知症の語り

娘が頼んだことをやってくれないのは母親の病気を受け入れられずに苦しんでいたからだった。元気に外に出掛けていく姿を見せることが娘にとってもいいことではないかと思う

で、娘は、女性だから、シビアなんですよ、何か。女性だからシビアじゃなくって、ま、ま、あの、あの、あれ、性格もあるんだけど、あのー、ほかの人に言わせると、あのー、今まで、わたしがお母さんとしていろいろできていたわけじゃないですか。それが、これもできないあれもできないっていう、そういうお母さんを認めたくない。だから、あのー、何かね、……娘もそれで悩んでいて、友達に、何か、あのー、息子が、あのー、娘に、あのー、「何で、お前は、さっさとお母さんが、こういうのやってほしいことをやったらんのだ」と。あのー、「こんな、お母さんが頼むことは、そんな大したことじゃないんだぞ」って言って。「さっとやれば、あのー、お母さんが助かることなんだぞ」って、「それを何でお前はできんのだ」って言って、言ってくれたことがあるんです。そのときに、娘は、もう、大泣きして、「わたしだってやりたいんだけど、何かやれないの」って。で、「友達にも相談しているけど、何か分かるんだけど、できないの」って、そうやって言われて。あ、この子は、この子で、わたしの病気で受け入れられずに苦しんでいるんだなと思って。だから、ま、この子がやってくれなくても、あのー、ね、やってくれるときもあるわけだから、そんな多くを望まずに、やってくれることを、あのー、ありがたく思おうと思って。それで、そうですね、あのー、だから、あのー、ちょうどずつちょっとずつは、あのー、うん、やってはくれていますけど。でも、わたしも、あのー、自分のために自分でやろうっていう思いで。

この間、あのー、高齢の方の、うーんと、サロンに行ったんです。で、そのときに、ちょっとお話をして、そのときに、その、隣に座られた人が、あ、お母さんが認知症の方で、それで、あのー、その家族のサロンにみえていた人なんですけれども。で、その、だから、その方は、娘さんだから、あのー、わたしの娘と同じ立場になるわけじゃないですか。で、その人の話をちょっとしていたときに、その、わたし出かけることが好きだから、そうやってしょっちゅう出かけて、いろんな人に、その、ね、そうやって出かけて行って、そういう話をしたら、「娘の立場からして、そうやって、あのー、いろいろ、ね、母が元気で、あのー、出かけてこれることは、すごい嬉しいことになんです」って言って。わたしは、普段、娘からそんな話は聞けないじゃないですか。だけど、その人からは、あ、うちの娘は何も言わないけど、ああ、わたしがこうやって出かけていることは、あ、この人が言うようにうれしいことなのかなって。そこで、また、そういう話が聞けたときは、あ、こういういろんな会とか、行くのっていいよなって。いろんな人の、ね、また、その、ね、話も聞けるしって。わたしは、ほんとに、ね、娘なんか、やっぱり恥ずかしがって、恥ずかしがってっていうか、ほんとにそう思っているかどうか分かんないけど、そんな言わないけども、多分、いいほうに思って、あ、娘もそういうふうに思っているんだって。それで、そういうふうに、ちょっとね、うれしかったですね。その会に行けたことが……。

認知症の語り

母は、まるでこうなっていくことがわかっていたかのように、「子どものことをしっかり見て、私のことなんかいいから…前を向いて生きていきなさい」と言っていた

…7月に入院したときから、…ほんとは私は母の前で泣いちゃいけないんですけど、…そうですね、入院したときはよく目を開けなかったんです、母。目を開けることがなくて、あの、ずっと目を閉じていたので、私もついついその間に涙をこぼしたりしていたんですが、…母は「もう仕方がない」とよく言ってました。「もう仕方がない、仕方がない」と小声で言って、そして私には…常に……「見舞いに来るな」と、「子どものことをしっかり見て、私のことなんかいいから……前を向いて生きていきなさい」と、まるで自分がこうなっていくのを…分かっているようでした。…今でも見舞いに行くと、母は私の前でも…母になります。……時間を気にして、子どもが帰ってくるまでに帰るように、夕飯の支度に支障がないように…いつでも心掛けてくれています。

―― …ほんとに優しいお母さまですね。

認知症の語り

アリセプトとメマリーを飲んでいるが、飲み始めてから夢をよく見るようになったくらいで、効果を感じることはない。それでも「飲んだら治る」と思いながら飲んでいる

―― で、お薬とかも今飲んでらっしゃる。

飲んでいる、はい、アリセプト、メマリーと。

―― あ、何か、それって飲んだことによって、自分に効果とかは感じてらっしゃいますか。

ない、ない、ない。ただ、あのー、ほんとに、あのー、毎日夢を見ることだけのことで。

―― 夢。

うーん、きょうも見ましたよ、お2人の、顔は見えないけど、もう、うちに来ている、もう、そういう夢なんで。あのー、誰かが来ていて、わたしが何か、ばたばたばたばたしていてっていう夢を見ていました、きょうは。

―― それは、お薬のせいっていう。

っていう人もいますしね。

―― お薬を飲み始めてからそういう夢を見るようになったとか。

ですよね、そうですよね。前は、そんななかったから、「お母さん寝言はよく言うよ」って言われたけど。

―― じゃ、何か、よくなっているとか、そういう感じを自分で受けるわけはない、ではない。

うん、うん。

―― でも、一応飲み続けているっていうのは、どういう気持ちで飲んでらっしゃるんですか。

いや、これを飲んだら治ると思って、そうやって思って。これを飲んだら治る、これを飲んだら治るって思いながら飲んでいますね。だから、ね、あのー、いっとき流行ったじゃないですか、あのー、何だ、ココナッツオイル、それもいいって聞いたから、もう、すぐ飛び乗って、それも、これを飲んだら大丈夫、これを飲んだら治るとかって、よくなるとかって、自分に言い聞かせながら。だから、この、ね、あのー、飲んで、薬飲んでも全然変わらないっていう人もいるけれども、そんなふうに思っちゃ駄目って。治ると思って飲まなくちゃ駄目ってその人には言っているんだけど。だから、もう、忘れないように、あのー、お薬は、もう、朝1番で飲むようにして、朝1番起きての1番最初にやることがお薬、それからトイレ。絶対飲み忘れのないようにって感じで。違う薬は飲み忘れたりしますけどね。

認知症の語り

在宅復帰するとめまいがして転倒しやすくなる。老健ではアリセプトが出ていないのが、家に帰ると出されるので、薬の副作用かもしれない。特に増量すると吐き気が出るようだ

特に母の場合は、在宅になると何か転ぶとか。ここでもそうですけど、あのー、立ち上がるときにふらっとよろめくというか、あのー、目まいって、本人は目まいって言うんですけど、何か目が回るとかって。

1度、あのー、何ていうかなあ、精密検査を受けたんですが、おっきな病院で。そのときは、何か腎臓機能かどっかが、うーん、薬の、今まで飲んでた副作用か何かで、何か弱くなってて、その原因が、それが原因じゃないかっていうような。うーん、そのー、立ちくらみっていうか、なのでもう、寝てた人が起き上がって、トイレに行くとか、あの、車椅子に乗るにしても、そのときは一旦、まあ、何ていうかな、ベッドから下りる。一旦、まあ、しゃきっと立たなくても、一応、そのー、足を地に付けるっていうか、そのときにふらっとしたら、車椅子に座る前にそれが起きたら、それこそ母がトイレ行くたんびにドキドキっていうか、するので。

それと、何ていうかな、在宅になると、ここ(老健)で飲んでる薬よりも少し薬の量が増えるんですね。まあ、主治医が良かれと思って処方されるんですけど、どういうわけか、うーん……、その薬が多すぎるっていうわけではないんですけど……その、アリセプト、アリセプトだっけ、うーん、それも何か母にとっては、副作用が出やすかったりいろいろするもんですから。なんせ、あの、在宅になるとすごい不安がいっぱいです。

―― 今何か、アリセプト飲んでらして、何か副作用ってちらっとおっしゃったんですけど、それは、その目まいみたいのが副作用ですか。

あのー、アリセプト、何か何ミリ、何ミリとかってあって、このー、当初、1週間か2週間かちょっと分からないんですけど、何ミリを最初に飲ませると。それで1週間から2週間たったら、そのー、ミリ数を少なくするのか多くするのか、どっちか分かりませんけど、母の場合は、そのー、それを多く、当初はいいんだけど、多くしたら何か妙に副作用が出て、吐き気とかいろんな症状が出て、あ、おばあちゃんには何か合わないみたいですねえみたいな。でも、何か飲ませたいんだけどみたいに、主治医の方はおっしゃるんですけど。そのー、何ていうかな、老健施設で飲まなかったものを、いきなり飲ましたらそういうことになるのかなあと思ったり。ちょっとその薬の効き目については個人差もあるし、特に、そのー、認知症のお薬だからどういうふうに効いてくのか。まあ、Aさんが効いて、その症状が改善されてきたものが、まあ、うちの母にとったら、まあ、合わなかったっていうのか。まあ、その辺のところは個人差もあるし、何とも、うーん、飲まなかったほうが良かったのか悪かったのか、うーん、それも、アリセプトって老健に来たらそういうお薬は飲まないので……。在宅に戻ってから、さあ、飲みましょうって飲んで、それが効果的なのかどうかっていうか、そんな思いもあるし。何か認知症って奥が深いなあっていうか、うーん。

認知症の語り

できないことがあると病気の進行かと思うが、先のことを考えてもしようがない。きっと誰かが助けてくれるから不安はない。不安があったときそこにつけいられて詐欺にあった

―― 日々の中で、新たに、その、できないことがあったりすると、ああって、やっぱり、ちょっと気持ちが、こう。

ああ、思いますよ、あ、これが、進行かなみたいな。前まではできたのに、これもできなくなっている、あれもできなくなっているって思うのは、もう、ほんとによくありますよ。で、最近では、その、カレンダーとかも、ちょっと、えって、この、え、うーんと、月曜日はどこ、あーと、えーと、これはって、考えなくちゃ分からなくなって。

―― 先、その、先のことっていうのは、やっぱり、ちょっと不安になるときもありますか。

うーん、あのー、不安になるのは、不安になるのは、今は、ほとんどないかな。だって、病状だって、考えたってこれからどうなるかって誰にも分かんないことだし。それだったら、やっぱり、もう、何も考えないほうが、悪いこと考えているより、あ、きょう何食べようかなとか、そんなこと考えていたほうが楽しいし。で、金銭的なことも、でも、あのー、働けないわけだから、収入がないわけでしょう。まあ、あのー、年金ぐらいなことで、で、まあ、ね、ま、子どもは、とりあえずは、ま、自分でやっていくだろうから、ま、それはそれで、もう、子どもは任せて、ま、自分は、その、年金で、とりあえず、あのー、…うーん、今までみたいに無駄使い、もう、ほんとに無駄使いしていたのがね、すごくよく分かるんだけども、もう、無駄遣いせずにちょっと節約も、こう、ね、心がけてやっていかなあかんなっていうぐらいで。

もう、不安っていったら、ほんと、ほとんどないかな。ほんと先のこと考えてもしょうがないってそんな感じ。で、ね、あのー、進行になったらなったで、誰か助けくれるし。1人じゃないから、ねえ、話聞いてくれる人もいっぱいいるし、そういうときにね、こうなんだこうなんだって愚痴言ったら、それですっきりするし。絶対、誰かが助けてくれるから、もう、ほんとに不安はない、もう、ええーっと思われるかもしれないけど、ほんとだもんって感じ。そうですね。

ただね、不安になっていたときにね、1個ね、失敗したのがね、詐欺、詐欺っていうか、そうか、詐欺、詐欺、の話にのっかっちゃったことがあって。それも、子どもには誰も言っていないんだけど、誰にも言っていないんだけどって言って、それはね、あの、友達に怒られた、うーん、「そんな儲け話なんかあるわけないから」って言って。「そうだよね、そうだよね」って言って。だから、もう、そういう話には耳を傾けないようにしなあかんなと思って、反省、反省ですね。

認知症の語り

認知症になるのは本当に苦しく、自分に対して怒(おこ)れてくる*こともある。ただ、最近はそういうことが減ってきた。同じ立場の仲間と話す機会が増えたからかもしれない

―― 日常生活の中で、何か、その、嫌な思いしたことってありますか。

えーとね、うん、いっぱいあるような気がする、うん。

―― うーん、それは、どんなときだったでしょう。

うーん、ちょっとよく覚えていないけど、うーん、何か、うーん、あったような気がするんだけど。

―― 人から何か言われたとか、嫌なことがあったとか。

うーん、何かそういうのがあったと思います、ええ。

―― やっぱり傷つきますよね、嫌なこと言われると。

ですね、その、ほんとの、本人、自分が、その、あれになったら、本当に苦しいと思います。……ばかなことばっかり言ってあれなんですけどね、本当に。怒れてくるときもありますし、自分が。

―― 自分のことを。

自分が、自分で、ええ、そういうこともあるし、ええ。

―― 自分が。

怒(おこ)れるというか。

―― 怒(おこ)れる、自分に対してですか。

ても、ええ。

―― 怒りを持つ。

そんな偉そうなことじゃないです。

―― そんな感じじゃなくて、でも怒る。

怒れる、怒れる。

―― うーん。

そういうこともあるんです、ええ。

―― 初め、ご自分が病気だと分かったときは、何で自分だけみたいに思ったりしませんでした?

そうですね、あったかもしれないですね。もう、ずいぶん前なんでよく覚えていないんだけど。

―― 今はそういう気持ちはないですか。

今はあまりないですね、うん。

―― それは、どうしてでしょうね。

ねえ、どうしてなんだろう。もう、……怒れてくるとかそういうことがなくなってきたのかどうかよく分かんないけど。うん、そんなんじゃないかなと。

―― 怒れてくることがあまりなくなったのは、何だろう。どうしてでしょう。

どうでしょう、どうしてだろう、まあ。

―― 人間ができてきた。

できるほど、おっさんではないです(笑)。ただ、おっさんで。

―― でも、お仲間もいるっていうこともあるんでしょうかね。

ええ、そうです、ええ。

―― ほかにも、同じような立場の方がほかにもいらっしゃる。

ええ、みえるですよ、ええ。

―― それは、やっぱり力になりますか。

そうですね、やっぱり話しても、やっぱり普通の話ができる、うーん、何て言うかな、自分でするのもちょっとおかしいかな、うん、うん、何と言うんだろうな、ちょっとよく分からない。

認知症の語り

レジ袋に商品を入れるのも、財布からお金を出し入れするのも苦手で時間がかかってしまう。困ったときはお店の人にSOSを出して手伝ってもらうようにしている

きのうでも、あのー、コンビニに、あ、最初スーパーに行って買い物して、そのあとで、コンビニに行ったときに、もう、荷物がこんなになっちゃって。わたし、あのー、二つ持つっていうのも、ちょっと難しいもんだから、何か、どっちにもどっちを持っているのかっていうのが分かんないもんだから。で、コンビニの人に、その、こっちのスーパーで持った紙を出して、「すみません、この荷物をこっちに、こう、入れてもらっていいですか」っていうのお願いして「あ、こっちですか」って、ああ、ああ、あ、あ、「ついでに、ちょっと、すみませんけど、この財布も、ちょっと上手に入れてもらっていいですか」とかってお願いして。「はあ」って言ってやってもらって。あ、最後は、にこっと「ありがとね」って言って頼んで帰ってきました。

だからね、そういう困ったときでも、まずは「嫌」って言う人はいないかなと思って。ま、顔見てね、あ、この人なら大丈夫かなみたいな人には、ほんとにSOSしてもらってて。うーん、だから、スーパーなんかでも、「袋詰めお願いします」って言うと、最初は、その「認知症なんでね」とかって言うと、「えーっ」とかって言っても、もう、きのうでも、あのー、あれ、もうこれ「財布開けちゃっていいですか」って「お願いします」って言って、で「あ、この細かいのがほしいんですけど」「あ、取ってください」って言っています。全てお願いして。で、それで、「ついでにいいですか、お願いして」って「あ、何ですか」って「財布も入れてもらっていいですか」って。すごいずうずうしいお願いなんだけどね。で、そうすると、もう、助かっちゃって。たまに違うスーパーに行くと、やっぱり、なかなかそこまで、もう、今は慣れているから、そういう人が、ね、いるからいいけど。違うスーパーだとそんなに知らないから、この間は、「袋詰めしてもらっていいですか」って言ったのを、勘違いして袋をくれただけだったんです。で、あ、この人には伝わらなかったんだなと思って、ま、仕方がないから、自分の言い方も悪かったし。だから、自分で、もう時間をかけながら、あのー、スーパーの袋を、こう、ちょこちょこちょこっと開けて、もう、それも時間かかって、そこの中に入れるのもまた時間かかって、ああ、やっぱ、もっとしっかりと伝えなくちゃいけないなって。向こう、嫌だと言って、あ、ま、あのー、ね、あのー、多い人がいるときは、ちょっと、あのー、ご遠慮くださいみたいな放送は流れるけども、嫌って言ってはいないわけだから、もっとはっきりと自分の意思は伝えなくちゃいけないなと。で、そこら辺は反省して。あ、今度からは、しっかり伝えよう。これだけ、ちょっと、ね、困るんだったら、その前にちゃんと話してやってもらえたほうが楽ちんだ。ああ、今度からは気をつけようって自分で反省しながら、たりして。それがきのう。

認知症の語り

姑のおしっこのにおいがひどく、味覚障害になってしまい1年くらい戻らなかった。姪御さんに話したら、自分も母親のときにそんな風になったと言われた(テキストのみ)

それからもう、これちょっと難しいなと思って、で、今度(自宅に)帰されると今度おしっこの問題があるので。もう、今日も、もう、1週間、1週間取りに来なかったら、もう、ばんばんに洗濯物があるので、ほとんどおしっこの。で、もう臭い、私臭いで、あのー、一時、味覚障害になったんですよ。で、自分でそれ分からなくて、あのー、風邪引いたあとに、まあ、味覚なくなるじゃないですか、そのあと、次第に、あのー、元に戻るだろうと。全然戻らなくて、おかしいなあと思って。で、姪っ子さん(夫の従妹)に「ねえ、私こんなんだけど何だろうね」って言ったら。「ええー、あんたやっとなった?」って言われて「やっとなったってどういうこと」って「私、自分の母親のときもそんなふうになった」って言われて。「え、何で?」って。その臭いが、おしっこの臭いが、ものすご強烈なので我慢するんですよ(笑)。それの影響なのか、はっきりそれは分かんないんですけど、1年ぐらい戻りませんでした。ちょうど年末だったので煮物をしても全然全く味も分からないし、全部主人に味見してもらって。未だに、でも、ちょっと味覚のほうがまだ何か完璧じゃないですね。やはり常に我慢して息止めて洗濯物(笑)。

あまり何ていうか、あのー、何て、何ていうかな。割りと単純なんですね、私(笑)。もう、もう、それでくよくよしていたってもう仕方ないですし。まあ、でも、在宅になると仕方ないとは言ってられないですね。在宅になるとほんとにもうどうなっているかを自分でも分からないです。たまたま、こういうふうにデイサービスから(老健)入所っていう感じで、タイミングよくきているので、いざほんとに在宅で看るとなったら、私絶対病気になってしまうかもしれないです(笑)