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前立腺がんの語り

入院した当初は、あまりに痛くて、痛みをとってもらうことが第一で、治療は後でもいいと思ったが、医者は痛みでは死ぬことはないという感じだった

そうですね。はい、もう、痛いのが、とにかく、とれることが、わたしにとっては、もう第一条件だったですね。まあだから、その「治療なんて、あとでもいいわ」ということだったんですけど、その痛み止めのモルヒネを使うのが、その治療にどういう影響を与えるのか、医学的なことは、わたし分かりませんけど。きっとその辺の、えー、前後の影響があったと思いますけどね。ま、とりあえず、あの、放射線治療とホルモン治療をあわせてやっていただいたということですね。はい。

――その間は、痛みの治療はあまり?

いや、何かね、痛みのほうに対する治療もしていてくれたとは思いますけど。あの、一応、その一通りの治療というか、放射線とホルモン治療を始めて、えー、1度、中断をしていただきましたね。わたしがね。そのあと、治療を始めてから、その痛み度を示すね、にこにこマークっていうのがきまして。で、どのくらいですかって、少し痛いとか。大変痛いとか、とても痛いとかっていう、にこにこマークの、泣いているマークのところに、「わたしはこれです」って先生に。痛みは先生に伝わらないんですよね。とにかく痛いから、痛みをとってほしいということで、ずっとお願いし続けましたね。はい。

――でもその、先生には、伝わらない感じ?

いや、まあ、そのわたしの痛みは、多分、先生には、伝わってないと思うんですけど、つらさはね。寝ていても痛いんですよ。どうしていても痛いんで、もう、これはとにかく、痛みをまず最初にとっていただくことが、治療に入る優先順位だと、わたし自身は思っていましたけど。先生のほうは、多分、多分、痛みで死ぬことはないみたいな、ええ、あの、考えだと思いますけどね。

前立腺がんの語り

転移部への放射線治療を勧められたが、ホルモン療法で痛みもなくなったので、この先のために大切に取っておこうと思って断った

――その、放射線を断ったというのは、そういう、その気功の先生からの、放射線はなるだけだったらやめたほうがいいというのが?

いや、「できるんだったら、なるたけなら受けないほうがいいよ」と。だから受けなきゃならない、だから、本当に僕も痛ければ受けるけれども、痛くもないのに何で受けなきゃいけないのかなっていう疑問があった。要するに薬が効かないとか、もうこれしか治療方法がないとかいうんだったら、どうしても受けなきゃいけないと思うんですけども。だから、そうじゃなくって、それまでに数値が、だから上がれば、ね、これ以上、もうこうだったら受けなきゃまずいですよとかね、うん、そういうものがあるんだったら。それ以外に何か方法がないんじゃないかなというんだったらね、受けますけども。
要するに、放射線は、あのー、ね、60から70何だっけ? 60から70、単位があるんですね。

――グレイですかね?

うん、グレイが。それの単位で1ヶ所に1回は打てるけども、その箇所には打てないけれども、どこの、場所が違えば打てると。でも、普通の一般的な感覚だと、放射線を受けたら、一度っきゃ受けられないような、感覚になりますよね。だから、だったら、大切に取っとこうと。でも、よく聞いたら、60から70グレイの単位でこう放射線を打つんだけれども、同じ場所じゃなければ別に2、3回、4回ね、打つことできるんだよっていうことが、まず分かったと。でも、別に何も痛くも何ともないんだったら、めたらやったらに打つ必要じゃないんじゃないかなと思って。

前立腺がんの語り

ホルモン療法を受ける傍ら、変形した腰と首を固定して放射線治療を受けたが、食欲がなくなり体力も落ちたので、治療をいったん中止した

もう腰は、コルセットで固定、首は、プラスチックで作ったカラーで固定ということで、寝たきりの状態で、えーと、骨に放射線を、えー、2ヶ所、変形を始めた骨に放射線を2ヶ所照射しながら、えー、前立腺がんのほうは、えーと、ホルモン治療だということで、始めていただきましたね。それで、治療が始まって、もうとにかく、痛みがありますんで、痛みを優先的にとってほしいと思いながら、まあ、お医者さんの指示に従ってましたけども。だんだん、食欲がなくなってしまいまして、体重もどんどん落ちてきましたんで、もう、こんなつらい 思いをするんだったら、もうちょっと治療を中止してほしいと、中止してくださいということを主治医のお医者さんに申し出まして、で、中止をしていただいたんですよ。
で、その間、1週間くらい間があったかと思いますけど、ホルモン治療を進めながら、食欲を回復するのを、とにかく待たないと、わたし自身がつらいということで、病院の食事はすべてキャンセルしました。食べられないんですよ。それで、もう、うちの家内がですね、毎日食事を作って持ってきてくれましたね。ええ、わたしの好きそうなのを。で、それは、最初はね、そんなにたくさん食べられなかったんですけど、もう、メロンを1切れぐらい、1日に食べられるようになってから、少しずつ食欲が戻ってきましたんで、それで、治療を再開していただきまして、それからは食欲が落ちるということはありませんでした、はい。
結局ね、あれ、わたしあとで、多分分かったと思いますけど。首とそれから背骨の、あの、放射線治療で、多分、背中が真っ黒だったそうですよ。うん。だから、胃のほうまで、多分、その影響が出て、食べられなくなったんじゃないのかなということを、あとで何となくそんな気がしましたけど。もう、今は、その真っ黒な状態も取れましたけど、もう背中、その放射線で、黒くなってしまいましたって言われたの。わたし自身では、見られませんけど、家内がね、「背中真っ黒だったよ」って言って、あとで教えてくれましたからね。だからその影響もあって、やめたのが、食べられる最初の条件だったかなということは思いますね。はい。

前立腺がんの語り

診断後すぐ、痛みを取り除く目的で、腰骨に放射線治療を受けた。この放射線治療で根本からがんを取り払えたとは思っていない

(入院した)その3週間の間に、10回、最初の1週間は検査とか何かでして、放射線は1週間後だったんですよね、それで、1日1回、もちろん土日は休んでたから、その2週間に放射線治療を5回、1週間に5回、5回っていう形で10回したんですよね。で、腰の治療、腰に放射したんでしょうけど、とにかく上から、こう腹に部位決めて、そこにこう照射したんですよね。それが腰に当然、照射してんでしょうね。腰のほうに行ってんのかなあ、それは分からないですけど、今でも跡があるんですよ、これぐらいの。膏薬、腰に、膏薬貼った跡のような感じで黒くなってね、うん、そうそう。それを10回して。別に、した後、特別具合悪いとかなかったですよね、放射線に関してはね。何か具合悪くなるなんていう人もいるらしいけど、ただ、寝てましたからね、よくね。あのう、寝るしかないわけだ、入院中は。あと、起きるとタバコ吸いに外に出たりとかね、それだけだったですから。まああんまり本も読みたいタイプじゃなかったから、ないし。まあ、具合悪いから寝てるという、とにかく良くても悪くても寝てましたから、放射線に関して、さしたるね、あのう、治療に苦しかったとかいうことは全くなかったですね。
放射線は転移した骨に、腰骨に、そのー、がんを放射線で治療したっていうことですから、まあ進行しない程度に抑えたんじゃないですか、その放射線をね。腰に転移した骨に治療したというふうに認識しています。実際のところ、照射した場所がその一番痛んでた腰の部位だし、前立腺には放射線はしてないと思っています。したのかどうか分かんないけど、してないと思っていますよ。その前立腺の部位に関してはホルモン注射とホルモンの薬で抑えてんじゃないですか。うん。もう根本から、がん細胞を撤去したとは思ってないですね、私。うん。現にそうなんでしょうね。

前立腺がんの語り

再燃状態にあるけれど、骨折に気をつけながら慎重に体を鍛え、数値が高くても元気でやっている仲間の存在を支えに頑張ろうと思う

で、まあ前立腺の場合は骨転移、特に骨転移をするとお医者さまは、医師の方はですね、将来、骨折が起きるかも分からない、心配するわけですね。で、だったら、筋肉で守ればいいじゃないかとかって考えるわけですよね。だから、黙ってじっとしているんじゃなくて、もちろん無理のない範囲でね、あの、器具を使ったりすると痛めるので、バランスボールっていうのがあるんですけど。実はジムに行きました、ある程度体力が戻ってから。
あのー、イメージ、さっきイメージの話をしましたけど、じゃあ、4年、5年に(生存率が)10%しかないんだったら、じゃあ、10%の中に入りましょうと。で、入ってたとしたら、体の状態すごく良くなっている状態だろうなと。逆に5年後に、じゃあ、良くなっているというイメージを置こうということで、逆算して考えましょうと。5年後の目標はそのときに、もうすべてあきらめてた、それまで続けていた運動をやれるようになっているというイメージを置こうと。私は病気になる直前まで合気道をしてましたので、合気道の練習に参加するという目標を、5年後の目標を「合気道に参加しています。病気はどこかに行っちゃいました」っていうイメージを。そうすると、まあ、退院直後は体がね、動かない状態ですから、5年後のイメージに向けて、じゃあ、3年後にどういう状態、1年後にどういう状態って、逆算していったんですね。
で、いつからトレーニングを始めようかということも考えました。そういうイメージをこう持ったわけですよね。その一環で、さっき行った公園に行ってみよう、歩いていってみよう、えっと、自転車で行ってみよう、マウンテンバイク買ってみよう、1周回るのをもうちょっと頑張って2周回ろうということでやり始めたんですね。で、そうこうする間に体の調子が上がってきて、筋肉も付いてきていたので、じゃあ、ジムにも行っちゃおうと。骨折とかって心配されるんだったら、筋肉で守りましょうと。バランスボール、すべてをこうお話ししたら、トレーナーの方がね、じゃあ、体の中心の筋肉を支え、器具はなるべく使わないで、筋肉、中心の筋肉、じゃあ、バランスボールということで、インナーマッスルということらしいんですけど、それを鍛える練習方法を教えてくれて、それもやっていましたね。すごくそういう意味で調子がいいっていう期間がこう結構長かったですね。
で、まあ実は一番最新の状態で言いますと、再燃状態に数値上はなっていて。実は、えーと、ここのところ実は私自身はちょっと調子が悪いということが続いています。うーん、なので、今、まあそういったトレーニングは中止している状態なんですけどね、まあいつか再開したいなというように思っているわけですね。それは、1回はそういう、あの、トレーニングをして体の状態が良くなってきましたので、まあたとえPSAが上がろうと、私の場合はALPという骨の成分が溶けだしているという数値がものすごく今上がっていますけど、それはそれとしてね。
えーと、数値のこと、事実認識をするのは大事だけども、そういう状態になっても元気でやっていらっしゃる方もいっぱいいるってふうように聞いています。そういう情報に接することも、とても今としては気持ちを高めて支えになりますので、そういう方に、これからはね、そういう情報を自分としては求めて、えーと、そういう情報に接しようと。つまり仲間ですよね。もうそんな数値上はそうなっているかも分かんない。頑張っている方は一緒に、いっぱいいるんだったら、自分もまた、えーと、今は、取りあえず今は慎重に運動は再開してませんけども、慎重に、慎重に少し運動を再開したいと思っています。

前立腺がんの語り

骨転移で腰椎や頚椎の一部が変形を始めていて、立って歩けず、寝ていてもつらいほどの痛みだった

検査した結果、前立腺がんだということが、判明しましたね。で、その時点では、もう既に、骨にがん細胞が転移しておりまして。えー、腰椎と頚椎の一部が、すでに変形を始めていますと、それで、そこから、痛みが来ていますんでということで、もう、骨に転移をしてしまいますと、もう、多分、長くは生きられないだろうということを通告されました。

――そのときの痛みって、あの、どんな感じの痛みなのか、もう少し教えていただいてもいいですか。

はい、痛みはね、多分、皆さんには、伝わらないと思いますけど。もう、何とかしてほしいと思う。もうとにかく、この痛みだけはとってほしいと。まず、立って歩けないですよ。ええ、だから、四つんばいで移動しますね。で、夜寝ていても痛いんですよ。もう、それはそれはつらい痛みで、で、おなかの周りも全て痛いんですよ。はい。で、とにかく、その痛みだけ、もう整形(外科)だと思っていますから、始めから、わたしは。そのために、鍼(はり)もいきましたね、ええ、それで灸、お灸もやっていただきましたし。整体も行きましたけど。基本的には、全くよくならなくて、もうこれは駄目だと思って総合病院へ行きましたが。そこでも、少しの間、今の痛み止めをいただいて、うん、様子見ということでしたので。まだ、全然、そのがんの、がの字も思っていなくて。とにかく、痛みだけとってほしいということを、先生に言いましたけど。

前立腺がんの語り

骨シンチで転移したところが真っ黒になっているのを見たときは痛かったが、今は(ホルモン療法で)PSAも下がり痛くないので、放射線治療は受けないことにした

前立腺がんで死ぬなんていうのは、最近、思ってません。その、転移しててもですよ。ほれでね、これ不思議なことに、転移してね、この、真っ黒に、この、あの、骨シンチで見ると、そこだけ真っ黒になるんですよね。真っ黒で気持ち悪いんですよ、写真見ると。ほしたらね、やっぱ人間っていうのはね、それ、当初はね、痛いんですよ、ここがね。痛いの痛いの。やっぱり病は気から。今、何ともないですよ、これ。別にこれ、消えてるわけでもないですけどね

――その骨転移した部分に対して、放射線を当てるとかそういうのはないんですか。

いや、それは、あの、言うてます。そこをね、当ててくれと言うて、紹介状もくれてます。その、今のIMRTがあるでしょ。もうピンポイントでね、やれますから。それできるところを大阪でね、紹介しとくって、そこでやってもらってくれと。ほんで、PSA下がったらいいじゃないですかと言われてもらってるんですけど、行ってません(笑)。紹介状もらったけど(笑)。
ですから、今もうこう、(PSA値が)下がってますから、今測ってませんよ、その、骨シンチ撮ってませんよ。撮ったら消えてるかも分かりませんけどね。

前立腺がんの語り

転移の不安はあるが、数パーセントのことをくよくよ考えても仕方ない。積極的に生きて、満足し、安らぎを得ることが薬になると思う

ええ、あのー、不安な点はですね、まあ必ず、いつ、うーん、どのような形で転移が起こるだろうと。まああのー、それはですね、まあ、がんっていうのは、まあ何かいろんなことをいわれてますけど、いったんがんになりますと、それはいろんな部分にやっぱり発生してるんじゃないかなと、まあ、自分では思うわけですね。それが、実際に、そのー、がんが出てくるかどうかっていうのは、やっぱ免疫力というか、自分の体力とかいろいろ、関係してですね、出てくるんじゃないかなというふうに、まあ、自己流に考えておりまして、まあ、そういう中から、一体いつ転移がですね、どこに現れるのかなと。
で、ということが、やっぱりこう、頭の中にはありますけど、一方では、もうみんな、そのー、手術によって、まあきれいになったんだから、そんな…数少ないパーセントのことをくよくよしても、仕方がないという思いもありますが、これらの二つは、やっぱり何回も申しますけど、その人自身のですね、あのー、生活に対する取り組み、積極的に生きるか、明るく生きるか。一方ではもう何もなしに、家でずっと新聞とテレビを見て生活するかと、この二つによって、大きくやっぱり、えー、影響されるというふうな思いからですね、もう一度、やっぱり海外、オーストラリアですね、自分の思った仕事をして、それでまあ、なったら、また、うーん、そのときだというような考え方にですね、あのー、せざるを得ないなあというふうに思ってるんですが、娘なんかはちょっと違う感じがしまして、「次のフォローアップはいつ?」とか、「どんなことをするの?」とか、まあ、いろいろそういうのは聞くわけですね。まあ、幾らそんな心配ばっかりしてもですね、まあ、いろんなそういう、皇室の方でもいろんな、いろーんなレベルの方でもそうなるわけですから、まあ、そういうことのできるだけならないようにするというのは、何回も申しますが、この精神的な部分ですとかね、あるいはこういうふうにお話しするとかですね、ディペックスに何か役立てているとかですね、やっぱり心の中にそういう安心感というか、何かをこう…を、できてるという、そういう満足感というか、気持ちの安らぎがですね、やっぱり一つの薬になるんではないかなというふうに、感じ始めましたですね。ええ。

前立腺がんの語り

再発を確認するためだけに生検を受けるのは嫌だ。医師は絶対にありえないと言うが、生検は転移のリスクを高めると自分では思っている

――はい、その生検を受けることに関しては、そのご自身では何かこう抵抗というか?

ありますよ、だってそんなもんやりたくないもん、だって。生検なんてしたって別に治療になんの影響もありませんしね、本当はしたくないんですよ。ただ黙って(がんを)取ってくれたほうが僕はありがたいんですけども、医者の立場はまた医者の立場があるでしょうし、あるかないかわかんないのにね、取ってしまうってことはできないらしいですね。

――では、ご自身としては本当はもう取ってもらいたいぐらいなんだけどもっていうことなんですね。

ええ、そうです、そうです。だって今までの経過を辿ってみれば、(がんが)あるに、あるに決まってるじゃないですか。そのクライオをする前に、いったんあるっていうのが証明されたわけでしょ、生検で。だからクライオで行ったわけですよ。それでまたPSAが上がってきたんであれば、これはあの、クライオで死ななかった細胞がまた息を、復活してきたと考えるしかないわけですよね。

――もう、あるってわかっているものをあえてこう生検ってやらなくちゃいけないっていうのが。

そこはちょっとわかりませんね、僕は。納得いかないですね。だって生検してひとつもいいことないんですもん。ブスブスブスブスあの、傷つけるわけでしょ、前立腺に。血液を採ってくる、血液じゃないや、細胞を採ってくるわけじゃないですか、当然血も流れるわけですよ、その血の中にがん細胞が含まれてる可能性だってあるわけですよ、それが外に出て行く可能性だってあるわけですよ、それが僕はいやなんですよ。

――刺して、そのときに流れる血の中にがん細胞が含まれて、それがまた、どういう影響を与えると思いますか?

それはやっぱり一番その、前立腺の組織、あー、がん細胞の特色として骨に転移するっていうのがあるんですよね、骨に一番転移しやすい。骨盤とか、あるいは肺のこのあばら骨とか、だからそういう、形になって骨の痛み、痛みで、がんが転移したってことがわかるっていうことが一番いやですよね。

――生検するとそういう転移の可能性っていうのが、何かこう高まるっていうような感じっていうのはありますか?

します。医者は絶対そんなことはないって言うんですけど、僕はそうは思わない。だって当然血が流れるわけですから、生きている細胞に針を刺すわけでしょ う。当然流れますよねえ。それの中にが、がん細胞が入ってないっていう証拠は…、証明はできないですもんね。可能性としては絶対あると思うんです。だから、できたらしたくない。やはり医者は医者の立場があって、これこれありますから取りますというふうな順序を踏まないことにはできないと。それが辛いとこですね。

前立腺がんの語り

がんと仲良く生きられればいいと言ってはいるものの、やはり痛みがあると不安になる。不安は完全にはなくならない。

こないだも、歯が、まあ、歯が悪くてね、お医者さん行ったんだけど、「先生、とうとうがんが歯に転移しちゃったよ」。したら、「がんってのは、歯になんか転移しないんだ。歯はがんにならないんだよ。」って。「虫歯だよ」って言われてね。うん。それから、頭が痛くて、頭が痛くて、これ、脳にも転移したかなって思って医者に行ったら、「いや、それはないから。風邪か何かじゃないの」って言われてね(笑)。
うん。完全に治れば、そういう不安なくなるもんね。うん。無病息災じゃなくて、今、一病息災で、病気と仲良く10年も生きてればこんないいことない、なんて格好いいこと言ってきたけどね、やっぱり一病息災、駄目だね。無病息災じゃなくちゃね。
人間だもん。うん。口では「不安はない」とか「喜びだけ」って言ってっけど、それは、不安がよぎったり、それはありますよ。そんなん、全然なくなったら、仏様だよ。ね。仏様っていうのは一人しかいねえから(笑)。あとはみんな、迷ってるんだ。うん。だけど、迷ってるっていってもちょっとな。質が違うかもしんないけどね。昔の迷ってるっていうのと今とは違うかもしんないけど、やっぱりそういう不安っていうのはありますよね。うん。だから、まあ、人間だと思ってますけどね。うん。

――特にこういうときにそういう不安がよぎるとか、何かそういう場面とかありますか。そういうのは関係ないですか。

そうですね。まあ、あのー、痛みがあるんですね(笑)。私の場合は、骨に転移してるわけですからね。骨に転移してるので、痛みがあるんですよ。で、痛みを忘れてるようなとき、あまり痛まないときにはあれだけど、ちょっと痛みが激しくなると、「あっ、うん? これは悪くなったかな」とかね、そういうのがよぎりますね。うん。 それから、あのー、排尿のときに、やっぱり痛みがあるんですね。
うん。まあ、普通の痛みだったら、まあまあ同じなんだけど、痛みが強いときなんか、「ひょっとするとこれは進んだかな」とか、そういう風にさっと思いますね。やっぱりそういう不安っていうのは、完全になくならないんじゃないですかね。だから、誰かこう、「治ったよ」ってこう早く言ってもらいたいんだけどね(笑)。うん。自分で引導を渡すわけにいかないから。