感染の経路

自分が感染したと知らされることはショックなものです。多くの人は感染の事実を知ったとき「なぜ?いったいどこから?」と考えます。
中には陽性と判明した人の濃厚接触者として保健所から連絡を受けたり、数日前に会った知人が感染していたことを知らされたりして、感染経路について心当たりを得る人もいますが、今回のインタビューでは多くの人がどこで、どうやって、誰からうつったのか全く分からないと話していました。

次の男性もどこでうつったか心当たりがありませんでした。誰にうつされたかわかっていたら、その人に対して何らかの否定的な感情を持ってしまうかもしれないので、感染経路が分からないことはある意味では幸せなのかもしれないと話していました。 感染者を責めてはいけないということは頭ではわかっていても、感情的にはそこまで割り切れないと言います。感染経路が分からないことも、分かってしまうことも、どちらも同じく複雑な心境を生むことがうかがえます。

感染時期による受け止め方の違い

今回ご協力くださった方々の感染時期は大きく分けて、第1波(2020年3月から始まり4月中旬ごろをピークとする波)と第3波(2020年11月から始まり2021年1月初旬をピークとする波)に分かれています。第1波で感染した人やその家族は「まさか自分が(家族が)感染するとは思っていなかった」と話していましたが、第3波で感染されたある女性は「これだけ流行っていればどこでもらっても不思議ではない」と話していました。

心当たりはあるが確定的なことはいえない

インタビューに答えてくださった方の多くは、手洗い、マスクはかなりしっかりとされていて、宴会などに参加することも控えていた人たちでした。そのため、感染経路の心当たりと言えば、喫茶店やスーパー、公共交通機関などの不特定多数の人が集まる場くらいしか思いつかないと話していました。

中には身近に感染者が出たので自分も検査を受けることにしたという人はいましたが、ご自身は保健所の「濃厚接触者」の定義*には当てはまっておらず、他にも感染経路はあり得るので、直接その人からもらったとは限らないとも話していました。
*「濃厚接触者」の定義は、新型コロナウイルス感染症に関する知見の蓄積とともに更新されてきました。詳しくはこちらをご覧ください。

ほかにも陽性が判明した人の濃厚接触者となった場合でも、これだけ流行っているのだから、必ずしも濃厚接触した相手が感染源だと断定することはできないと語った人もいました。「感染させてしまった」「感染させられてしまった」といったことは、今後のその相手との関係性にも大きな影響を及ぼします(「感染者の不安と苦悩」も参照)。そのため感染経路についての言及には皆さんととても気を遣っていることが感じられました。

コロナ感染は夜の街だけではない

また、当初コロナは夜の街で感染するというイメージが強く、そういうところは避けていたという男性は、実は昼間の食事で感染したのかもしれないと考え、職場での昼食についても注意が必要だと考えるようになったと話していました。

第5波(2021年8月をピークとする)以降、一部の自治体では保健所の積極的疫学調査を縮小する方針も出ており、感染経路不明とされる人の割合はさらに増えています。感染力の強い変異株(デルタ株やオミクロン株)の蔓延により、特定の人や場所が感染源となるのではなく、あらゆる接触が感染のリスクを高めると考える必要があります。

手洗いやマスクの着用など、基本的な感染対策を守ることが以前にもまして重要になっていますが、どんなに注意をしていてもかかることはあります。各自が「明日はわが身」と考えて自らの行動を律し、感染者への思いやりを持つことが大切になっています。

2021年9月公開/2022年3月更新

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