急性期の主な症状

ここでは新型コロナウイルス感染症発症後からおよそ2週間(いわゆる急性期)のうちに経験された主な症状についての体験談をご紹介しています。この病気の特徴として、症状の出方に非常に大きな個人差があります。今回のパイロット版のインタビューに応じてくださった患者さんの多くは軽症から中等症の方でしたが、人工呼吸器を使用したり、集中治療室で治療を受けたりした方もいらっしゃいました。限られた数ですので、コロナ感染が引き起こす多様な症状を網羅することはできませんでしたが、現在療養中の方々やご家族の参考になればと思います。

なお、感染しても症状が出ない「無症状病原体保有者」もいます。ここで紹介している症状がないからと言って、「自分はコロナではない」ということにはなりません。無症状で感染している人も他人を感染させる可能性がありますし、潜伏期間中も発症の2日前から感染力があるとされていますので、その点にご注意ください。

倦怠感

倦怠感は、新型コロナウイルス感染症でよくみられる症状の一つとして報告されています。起き上がれなくなるほどのひどいだるさで、普段よくある倦怠感とは全く違う、生まれて初めての感覚だったと、そのときの様子が語られています。

せき・呼吸困難

せきもよくみられる症状と言われていますが、今回のインタビューでは、ごく軽い症状で終わったという人や、最後まで全くせきがなかったという人もいました。その一方で、ぜんそくを持っているこちらの女性は、ひどい痛みをともなうせきだったと、ぜんそくのせきとの違いについて話しています。

こちらの女性も、もともとせきぜんそくを持っている方ですが、処方されたせき止めのおかげか、それほどひどいせきは出なかったそうです。ただ、ホテルでの療養中、独特の息苦しさを感じていたといいます。

こちらの男性は、自宅にいた頃の症状は軽かったのに、発症から6日後、療養施設に入ったその夜に、息苦しさと体の痛みが急に現れ、恐怖から何度もパルスオキシメーターで血中酸素濃度を測った、と話していました。

肺炎

肺炎は、一般的には重い症状とされ、血中の酸素飽和度の低下を招くとされています。ですが、肺炎という診断は同じでも、せきや呼吸困難が相当ひどかったと話す人もいれば、ほとんど感じなかったという人もいて、自覚症状としての肺炎は一様ではありませんでした。
例えば、こちらの女性は、歩くのもやっとの状態で病院にたどり着きました。肺炎の診断を受けて「すぐ入院先を見つけるように」と勧められましたが、PCR検査結果と、保健所が入院先を見つけてくれるのを自宅で待つ必要がありました。その間にどんどん状態が悪くなり限界に達してしまったと、そのときのエピソードを語っています。

一方、肺炎を起こしていても、せきや呼吸苦をほとんど経験しなかったという人たちもいます。こちらの男性は、退院後のレントゲンで肺炎の痕跡はみつかったけれど、入院当時せきはほとんどなかった、ただ頭痛とひどい悪夢にうなされ、寝るのがひどくつらかったと話しています。

こちらの男性医師も、肺炎と診断されていましたが、呼吸苦はなかったといいます。1週間ほど高熱が続き、ベッドでもうろうとしていたときに見た、先ほどの男性の夢とは対照的な夢について語っていました。

こちらの男性も、ひどい肺炎で医師から「ヤマ場」と告げられましたが、思ったより苦しくなかったそうです。ただ、頭を使うと余計に酸素を使ってしまうと思い、「なるようになれ」と思考を手放して気を失わないようにしていた、と自分なりに行った工夫について話していました。

発熱

発熱も、最もよくみられる症状の一つですが、やはり重症度は人によって差があります。今回のインタビューでは、37度ほどの微熱で済んだという話も聞かれる一方、ひどい人では38度以上の高熱が1週間以上続いたという人もいました。夜になると熱が上がり、しばらく上下を繰り返したという人もいますし、寒気が止まらなかったという人もいます。

こちらの女性は、自宅で過ごしていたとき、発熱は一晩寝たら落ち着いたけれど、ひどい寒気に襲われていたと話していました。

こちらの女性は診断がつく前に39度の高熱が出て、かかりつけ医に解熱剤を処方してもらったけれど効かなかったことや、発熱から2週間経ってようやく下がってきたときの様子を振り返っています。

味覚・嗅覚障害

味覚・嗅覚障害は、新型コロナウイルス感染症の特徴的な神経系の症状として知られていますが、すべての人が経験するわけではありません。また異常の感じ方も一様ではなく、嗅覚だけに異常が出たという人もいますし、全ての味が微妙にしか感じられなかったという人、酸味だけ、あるいは香辛料だけ感じた人、甘みは感じたという人など、感じ方の変化についてさまざまなエピソードが語られていました。

こちらの男性は、においや味を感じなくなって、目をつぶると何を食べているのか分からなくなったので、食べ物を見て記憶をたどり、味を思い出しながら食べるようにしていたと語っています。

療養期間のうちに回復したという人から、療養が明けて数週間、あるいは数か月以上たってもなお残っている人もいるなど、感覚が戻るまでの経過、かかる時間や回復の程度にも幅があることが体験者の声から伺えます。数週間から数カ月以上続く場合には、「後遺症」と考えられる場合もあります。

こちらの女性は、自宅での療養期間が過ぎても味覚と嗅覚の障害だけは残っていて、不安を感じていました。においの感じられなさが、なじみのある風邪や花粉症のときとは全く違っていた、と感覚の違いについても触れています。

頭痛・体の痛み、イライラ、不眠などの症状

ここでは、ときどき起こるとされている痛み、神経系の症状についての体験をご紹介しています。自宅で入院先が決まるのを待つ間に、身の置き所がないほど体中が痛く、よつんばいの姿勢で過ごしたという話や、療養施設でひどい痛みと不眠、イライラに悩まされたというエピソードが語られています。頭痛や発熱でもうろうとして悪夢にうなされ、眠るのがつらかったという話も聞かれました(「肺炎」を参照)。

風邪やインフルエンザとは違う、長く続く症状

いったん症状が落ち着いたように見えたのに、日常生活に戻って数日のうちにまた体調が悪くなったと話す人も少なくありません。なんとなくの身体のだるさから、療養中の安静による体力の低下では説明しきれない重い倦怠感、発熱、頭痛やせき、集中困難やイライラ、嗅覚・味覚障害、抜け毛など、さまざまな不調が語られていました。インフルエンザや風邪とは明らかに違って、コロナの症状はずっと長引き、それゆえに何十倍もきついという人もいました。

なお、ここでは、発症からおよそ2週間以内に体験された症状をご紹介していますが、それ以上に長く続く症状は「後遺症」とみなされる可能性があります。(「長引く症状・後遺症 」も参考にしてください)

2021年9月公開/2022年3月更新

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