大腸がん検診と女性

大腸がんは女性の部位別がん死亡者数ではトップ(国立がん研究センターがん対策情報センター「最新がん統計」 より)ですが、このことはあまり知られていないようです。女性は、乳がんや子宮がんに関心が向きがちな一方で、肛門科への抵抗感や月経の時期と重なった場合の心配など煩わしい面もありそうです。女性が大腸がんあるいは大腸がん検診とどう関わっているのか、女性たちの語りを紹介します。

女性に多いがんとの比較

女性たちががん検診を語るとき、しばしば乳がんや子宮がんの話が出ていました。それらのがんの方が大腸がんよりも関心が高いようです。男性特有のがんである前立腺がんを比較対象として話した男性がいなかったのと対照的です。

女性は大腸がんにならない気がする、と語った女性(「便潜血検査を受けなかった理由」のインタビュー10 をご参照ください)は、大腸がん検診に積極的になれない理由を女友達との話題にのぼりにくく、自覚症状が表れるがんだからだと認識していました。

乳がんが話題になるのは、財団や企業を通しての乳がん撲滅のためのキャンペーンが盛んなことも理由なのではないかという意見もありました。

きょうだいが婦人科系のがんに罹ったという女性は、婦人科系の病気には気をつけているそうですが、大腸がん検診を含む検診全般を受けるかどうかはどれだけ体を大事にしていくかという意識の問題だと語っていました。

乳がんや婦人科系のがんに比べ大腸がんが身近でないと話す人がいる一方で、身近に大腸がんになった人がいて、それがきっかけとなって精密検査を受ける気になったという話も出てきました。

生理時の検診受診

月経時に便潜血検査が重なることを考えると、女性にとって便潜血検査はやっかいな検査なのかもしれません。遅れて提出しても良いのであれば問題はありませんが、提出日が決まっている場合、どうしたら良いのか困ったという女性も多いのではないでしょうか。病院によってはタンポンの使用を勧める場合もあるようです。今回のインタビューでは、潜血反応があっても生理なので仕方がないと重く考えない人、終わりの頃ならば潜血反応プラスの可能性があることを承知の上で提出する人がいました。

自覚症状から肛門科へ行く

検診を受けていても、自覚症状が出て直接肛門科にかかった人もいます。けれども肛門科には馴染みが薄く、特に女性にとっては行きにくい診療科であることが語られていました。女性の医師のいる肛門科を探して病院を訪れた女性は、女性の患者さんもたくさん来ていたと語っていました。

この他に、肛門のひどい痒みから痔を疑ったものの、恥ずかしさから肛門科への受診をためらい、家族の反対もあって受診が遅れた女性もいました(「精密検査を受けない理由」インタビュー20 をご参照ください)。男性であっても、肛門科の受診をためらう人(「精密検査を受けない理由」インタビュー18 をご参照ください)もいましたが、上記の女性のように女性の医師に診てもらいたいと思う場合、さらにハードルは上がるようです。

家庭の責任と受診

子育てや介護など主として家族の世話を行っている人たちには、企業などで働く人たちのように定期的な健診が義務付けられているわけではなく、がん検診についても、被雇用者の配偶者は被雇用者よりも受診率が低いというデータがあります*。主婦健診と言われる健診は、被保険者の扶養家族に対するものですが、実施するかどうかは企業の判断に任されています。便潜血検査を通常の健康診断の検査項目に標準的に入れている企業もある中で、主婦検診に便潜血検査が含まれていない、主婦検診を受けない、あるいは主婦検診が用意されていない女性は、40歳以上になって地域の大腸がん検診として便潜血検査を受けることになります。

今回のインタビューでは、主婦検診や特定健診からも足が遠のきがちだったり、病院に行くこと自体が難しい、と語った女性たちがいました。

*:がん検診の受診率は被雇用者が36.3%、被雇用者の配偶者22.9%です。 田淵貴大, 中山富雄, 津熊秀明「日本におけるがん検診受診率格差~医療保険のインパクト~」『日本医亊新報』(2012年)。

夫の扶養になっているという女性は、夫が病気になる方が自分が病気になるよりも大変だと思っており、会社での定期的な健診受診に加え、生命保険の補償も夫の方を厚くしているといいます。

舅姑と同居し家事を切り盛りしていた女性は、検診を受けるどころか、かなり具合が悪くなるまで病院に行けず、入院の当日まで食事の支度をしていたと話していました。