便潜血検査を受けた理由

人々はなぜ便潜血検査を受けるのでしょうか。継続して検査を受け続けている人もいますが、過去に受けていたけれど受けなくなった人、逆にずっと受けていなかったけれど受けるようになった人、退職するまで受けたことのなかった人など、さまざまな経験をした人たちが便潜血検査を受けた理由を語っています。加入している健康保険の違いに加えて、その人が受検をどれだけ勧奨されているか、周囲にがん経験者がいるかなどの環境的要因、また早期発見に対する個人の考え方なども検査を受けた理由になっているようです。

健康診断の項目に入っていたから

継続的に便潜血検査を受けている人の多くは、勤務先の健康診断の項目に便潜血検査が含まれている人です。自分から調べたり問い合わせたりといった手間がなく、職場の年間予定のひとつとして受けることができるので、検診を継続しやすいのでしょう。しかし、実は職場での健診を義務付けている労働安全衛生法において、法定健診(事業者が費用を負担して、被雇用者に行うことが法律で定められている健康診断)の中に便潜血検査は含まれていません。従って、すべての企業が便潜血検査を健康診断に入れているわけではなく、無料もしくは有料のオプションになっていたり、最初から入っていなかったり、などさまざまです。

一方、市町村が実施するがん検診では、40歳以上の男女に対し年1回の問診および便潜血検査が推奨されています。がん検診は健康増進法第19条-2に基づく健康増進事業ですが、便潜血検査は受診者が自分で申し込みをする必要があります。便潜血検査を申し込む必要のある国民健康保険加入者と職場の定期健康診断の中で便潜血検査を受けている健保加入者では受診の状況が大きく異なることが予想できます。ここでは、特に職場の健康診断の中で便潜血検査を受検した人々を主に紹介します。

会社を経営している男性は、標準的に便潜血検査を健康診断の項目に入れており、それが普通のことだと考えていました。

外資系企業で長く勤めた女性は、大腸がんに罹った友達の闘病に触れ、健診の基本の部分で便潜血検査が入っていて良かったと語っていました。

職場での定期健診はそれほど時間のかかるものではありませんが、そのために仕事を休むことがはばかられる場合もあります(「便潜血検査を受けなかった理由」を参照)。しかし、積極的に社員の健診受診を後押ししている企業もあるようです。
今は年金生活に入っている男性は、定年まで勤め上げた会社が社員の健康管理に気を配っていたことを話していました。

複数の会社で働いた経験があり主婦検診を受けたこともある女性は、職場によって検診を受けさせる雰囲気は異なっており、中には受けやすいところもあったと語っていました。

身近な人ががんになったのをきっかけに

周囲の人たちががんに罹った時期が重なって、がんになることのリアリティーが身近になった人もいました。3人の子どもを育てている女性は、ちょうど子育てが少し楽になった時期でもあったので、検診を受け始めたと言います。

早期発見すれば治るから

便潜血検査を受ける社会環境やタイミングに加え、健康診断(健診)やがん検診(検診)に対する個人の考え方も受診に影響を与えています。健診や検診全般が病気の早期発見のために必要だと考える人も多くいました。

自覚症状が全くない時に会社の補助で受けた人間ドックで潜血反応が出て、内視鏡検査を受診、その場で切除して病理検査の結果、がんだとわかった男性がいます。その後再発や転移はなく、これまでと同じように日常生活を送っている男性は、今の状態を「完治」と語り、父親にも検査を勧めたといいます。

一般に言われているような大腸がんの症状(便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、など)が全くなかった女性は、職場の人間ドックをきっかけに上行結腸のがんがわかり、早期発見の大切さを感じていると語りました。

家族の闘病経験からがん検診について関心が高い人は、便潜血反応が痔でも出るので迷ったものの、大腸がん検診の有効性や受診の手軽さから受診しました。

安心を得たいから

早期発見を理由に受ける場合、病気のある可能性が前提になりますが、病気が見つからなければ安心できるという気持ちが受診を後押しすることもあります。自分の健康に自信を持ちたいと願う人たちが便潜血検査を受ける場合、こうした気持ちが前面に出てきていました。

また、健康診断を継続して受けることは、生涯にわたる健康管理や変化の記録をとるためにも大切だと語った人もいました。

自覚症状があったので

検診は本来、病気を早期に発見するのが目的ですが、中には自覚症状があって、まずは検診を受けたという人たちもいます。普通に病院に行くよりも、敷居が低いのかもしれません。郵送で検診のキットが送られてくる場合、時間がなくても受診できるというメリットもあります。

現役時代には会社の健診や人間ドックの中で便潜血検査を受けたことがなかったという男性は、定年退職後に自覚症状があったことから便潜血検査を申し込みました。

複数の検診を受けた

職場の健診を受けている人は、自治体からも通知が来るので両方を受けている人もいます。また、職場がある年齢になった人たちを対象に内視鏡検査を検診として提供しているケースもありました。

国民健康保険に加入していて自治体のがん検診を受けつつ、同業者の組合でも便潜血検査を受けていた男性もいました。