監視(待機)療法

ここでいう「監視(待機)療法」は、早期の前立腺がんに対して、すぐに積極的な治療を始めないで、PSAの推移を見ながら、治療が必要になるまで延期することを言います。悪性度が低く進行が遅い初期の前立腺がんでは、直ちに治療を始めなくても寿命に影響を与えないことから、排尿障害や勃起障害などのリスクを伴う治療を避けて、様子を見ることが可能です。以前から、症状が出てから体に負担の少ないホルモン療法を行うことを前提として、経過観察をすることを「待機療法」と呼んでいましたが、最近では、3~6ヵ月ごとにPSA検査をして、手術や放射線療法など、がんの根絶を目指す治療を受けるタイミングを計ることを「PSA監視療法」と分けて呼ぶようになっています。
このインタビューに答えた人たちの中にも、外科的手術や放射線療法、ホルモン療法などと並ぶ選択肢の一つとして、監視(待機)療法を提案された人が複数いました。

日本泌尿器科学会編『前立腺癌診療ガイドライン 2012年版』によると、グリーソンスコア*が6以下で、PSAが10ng/ml以下、臨床病期がT1~2、生検で採取した検体のうち陽性が二本以下の場合には、前立腺全摘除術や放射線外部照射などの根治的治療を前提としたPSA監視療法の対象になりうるとされています(但し、高齢の患者さんで、がんの根治を目指すよりも負担の少ないホルモン療法でがんをコントロールしていくことを希望する場合は、グリーソンスコアやPSAがこれより高くても、待機療法の対象になります)。PSA監視療法中は3~6ヵ月ごとにPSA検査、1~3年ごとに生検を行って、PSA値が3年以内に2倍になったり、生検のグリーソンスコアが上昇したり、腫瘍が増大したりしていることがわかった場合、その時点で積極的な治療を検討するという方針が採られています。
*グリーソンスコアについては診断のための検査の「グリーソンスコアによるがんの悪性度の分類」をご覧ください。

今回インタビューに協力した人の中で3人が、がんの診断を受けた時点で監視(待機)療法を勧められてそれを選択していました。選択の理由については、手術や放射線など積極的な治療法を行った場合の副作用の懸念が挙げられていますが、診断時に既に70代に入っていた男性は、無治療でも平均寿命まで生きられるであろうという医師の言葉が、監視(待機)療法選択の決め手となったと話していました。

しかし、診断時にまだ60代前半だった男性は、「他の人より10年早い」と思い、監視(待機)療法を選択肢の一つとして提案されながらも、骨転移をした知人の話から早いうちに手を打つほうがいいと考え、小線源療法を選んでいました。

監視(待機)療法を選択した3人のうちの1人は、2年ほど経ってPSAが上昇してきたため前立腺全摘除術を受けましたが、あとの2人はインタビュー時点で無治療経過観察を継続していました。

経過観察を続けている人たちは、定期的にPSA検査を受けて値の推移を監視しています。特に尿の出が悪くなるような場合は要注意、という説明を受けたという人もいました。

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