ロボット(支援)手術

ロボット(支援)手術とは、近年急速に広がりを見せている「ダ・ヴィンチ」という手術支援ロボットを使用した腹腔鏡(内視鏡)下手術のことです。ロボット手術というと、ロボットが独自に手術するというイメージを持つ方もいますが、ロボットはあくまでサポート役です。腹腔鏡下手術と原則同じ手法で、術者(執刀医)がロボットを遠隔操作して手術を行い、機器が精密な動きや詳細な画面を補助するもので、日本では2009年に医療機器として認可が下り、2012年には限局性前立腺がんの手術に対して保険適用となりました。2013年には年間の実施件数が従来型の腹腔鏡手術を上回り(※)、2015年6月時点で国内に192台導入されています(※※)。

ここでは、ロボット手術を経験した男性2名の体験談をご紹介します。なお、「手術療法」のページには、従来の手術療法の体験談も掲載されています。あわせてご利用ください。

※「腹腔鏡手術、安全どう確保」朝日新聞be report 2015年3月28日付掲載、日本内視鏡外科学会調べ
※※日本ロボット外科学会

ロボット手術を選んだ理由

ロボット手術は、開腹手術と比べると傷は小さく、出血も術後の痛みも少なく、入院期間が短くて済むとされています。また、従来の腹腔鏡下手術と比べると、ロボットのサポートが術者の手ぶれを減らし、正確で繊細な縫合や、広い視野の確保を可能にするため、術後尿失禁の発症率が低くなり、性機能をつかさどる神経も温存しやすくなるといわれています。

インタビュー協力者2人のうち一人は、がんの診断を受けたとき、手術時の出血が心配だったけれど、ロボット手術では出血がほとんどないと聞き、それが治療法を選択する決め手になったといいます。一方もう一人は、それほど深く考えずに、たまたまそのときにかかっていた病院にロボット手術の設備があり、医師に勧められたから選んだと話していました。

ロボット手術の実際

ロボット手術の場合、術後の痛みや排尿トラブル、性機能障害は、従来の術式に比べてリスクが少ない、もしくは回復が早いとされています。ただし感じ方や回復プロセスには個人差があります。今回のインタビュー協力者のうち一人は、痛みなどほとんどなく、翌日には歩けたと語っていましたが、もう一人は手術中のことは、麻酔で気にならなかったけれど、術直後に二度と味わいたくないほどの痛みを経験したといいます。それでも、術後2、3日後には歩くことができたと話していました。

ロボット手術は、入院期間や尿道カテーテルをつけている期間、尿漏れが続く期間も、従来の術式と比べて短くなるとされています。今回インタビューを受けた2人とも、回復のプロセスや感じ方には差がありましたが、尿漏れにそれほど苦痛は感じなかったといい、1ヶ月、3ヶ月、半年と、時間とともに回復したと話していました(「術後の排尿障害とケア」を参照してください)。ただし、入院期間やカテーテル留置期間など、それぞれに要する期間は、今回のインタビューでは、従来の術式と比較して際立って短くなったことを示すような体験談はありませんでした。

また性機能が温存できるかどうかは、他の術式と同じく前立腺肥大などの既往やがんの進行度に影響を受けます。手術をしてみないと分からないケースもあります。前立腺の肥大がかなり進んでいたという男性は、術後に勃起神経の温存できなかったと説明を受けたと話していました(「手術と性機能障害」を参照)。

ロボット手術は、術式としては腹腔鏡下手術と基本的には同じですが、手術中30度ほど頭側を下げた姿勢(頭低位)をとることになります。そのため眼圧や脳圧が上昇する可能性が高く、緑内障や脳血管障害の既往があったり、呼吸機能が非常に低下したりしている場合は、この方法で手術を受けることができない場合もあります。

他に、頻度は低いですが、コンパートメント症候群(ひざ下から足首にかけての血管が圧迫され循環障害が出て、筋や神経の機能障害が起こる)や胸郭出口症候群(鎖骨周辺で神経や血管が圧迫されて、首や肩の痛み、コリ、鎖骨上と前胸の焼けるような痛み、腕の小指側の感覚異常や痛み、親指または小指の付け根のしびれなどの症状)と呼ばれる症状も、ロボット手術を受ける際のリスクの一つとして報告されていますが、今回の私たちのインタビューでは、こうした経験をもつ人はいませんでした。

経済的負担

ロボット手術は、以前は先進医療(「経済的負担 」の「保険適用外の診療」の項目を参照してください)の対象でしたが2012年4月より、保険適用となりました。診療報酬は1回95万2800円(2015年11月現在)と高額ですが、高額療養費制度を使えば、69歳以下で一般所得の人なら9万円程度で、他の手術療法とほとんど変わりません。今回のインタビューでは一人が先進医療で、もう一人は保険診療で治療を受けていました。

手術までの待ち時間

普及が進んだとはいえ、ロボット手術の設備を持つ病院は、まだまだ限られています。そのため施設によって、手術まで数か月単位で待つことも珍しくないようです。