放射線療法(組織内照射療法)

ここでは、組織内照射療法を選択した人たちの語りを紹介しています。組織内照射療法は、ブラキセラピー、小線源療法とも呼ばれます。前立腺がんの治療では、放射性物質のカプセルを前立腺の中に永久的に埋め込む「低線量率組織内照射療法(LDR)」と、前立腺に一時的に針を刺して集中的に放射線を照射する「高線量率組織内照射療法(HDR)」の2つのタイプがありますが、単に「小線源療法」、「ブラキセラピー」という場合には「密封小線源永久挿入治療」を意味する場合が多いようです。ここでは我が国で一般に広く行われているLDRのほうを「小線源療法」と呼び、高線量のものをHDRと呼んで区別します。どちらも直接前立腺に放射線を照射するという意味で、同じ原理に基づく治療法です。わが国では、体内に留置する「小線源療法(LDR)」が認可されたのは2003年のことで、それに先行して一部の医療機関で「HDR」が先行して行われていました。以下、それぞれの治療法の語りをご紹介します。

小線源療法(LDR)

小線源療法は、我が国では2003年9月に開始され、急速に普及した治療法です。そのため、インタビューに協力した人の中には、臨床試験段階で受けたという人もいます。この治療を選んだ理由として、手術に比べ体にかかる負担が少なく、後遺症が少ないこと、入院期間が短くて済むことや、外部照射療法と比べて長期的な通院治療の必要がなく、周辺の臓器に障害がおこる可能性が少ないことが、大きなメリットとして挙げられていました。ある男性は、近くの大学病院に導入されるまで1年以上待ったといいます。一方で、日本での実績が少ないことに少し不安を感じていたという人もいました。また、この治療を選択したけれど、原爆が投下された地域に住んでいたので、原爆症のイメージから、最初はあまり選択する気になれなかったと語った人もいました。

前立腺がんの診療ガイドラインで小線源療法を単独で用いることが推奨されるのは、臨床病期がT1~T2で、グリーソンスコア*が2~6、PSA値が10ng/ml未満の比較的リスクの低い限局性前立腺がんに対して推奨とされています。そのため、希望はあったけれど受けられなかったという人もいます。
*グリーソンスコアについては診断のための検査をご覧ください。

小線源療法(LDR)の実際

小線源療法は、小さな粒状のカプセルに放射線を放出する物質を密封し、前立腺へ埋め込む治療法です。肛門から挿入した超音波発信器で位置を確認し、麻酔下で専用の機械を使って会陰(睾丸と肛門の間)から50~100個のカプセルを埋め込みます(数は人によって違います)。治療に予想外の時間がかかり、直後は腰が痛くて動けなかったという男性もいましたが、翌日にはトイレに行ったり散歩をしたりすることが出来たという人がほとんどです。治療をしたという手ごたえを感じられなかったと話す人もいました。また、この治療法は、外部照射療法と組み合わせて行われることで(必要に応じてホルモン療法を加える場合もあります)、小線源療法単独で行う場合に比べて、リスクの高いがんにも対応できるようになってきました。

小線源療法(LDR)後の困った症状と退院後の生活

治療にともなう後遺症の程度は、人によってさまざまです。症状らしい症状はほとんどなかったという人もいました。一時的に肛門が痛くなって痔が悪化したり、尿の出が悪くなったりしたけれど、1ヶ月ほどで改善したという人もいれば、治療後数ヶ月たっても排尿障害や排便障害が続いていると話す人もいました。

この治療法は比較的、勃起機能が温存されやすい治療法と言われています(精液量は減り「出なくなった」と感じる人もいます)。このインタビューに協力した人たちの中には、勃起機能に大きな影響が出たという人はいませんでした。

小線源療法の場合は、治療を受けた直後から、およそ1年の間は、放射線源を体内に入れたことよる生活上の制限や、注意点を守るように説明を受けます。

挿入されたカプセルは、体の中を動くことがあります。そのことをあまり気にしていないし、気にもならないと話す人もいましたが、カプセルが排尿時に出てくるのではと心配だったという人や、前立腺の中でどうなっているか気になるという人もいました。治療後しばらく、前立腺のあたりに違和感があったという人もいます。実際、数個が体のどこかに移動してしまったと話す人もいました。

高線量率組織内照射療法(HDR)

HDRは小線源療法に比べ、実施施設も年間症例数も少ない治療法です。このインタビューでHDRを受けた人は2人いましたが、治療を受けた時期が2000年前後と、随分時間が経過していて、どちらも臨床試験で受けたという人たちでした。当時としては、切らずに済み、周辺臓器に障害がおこる可能性の少ない、画期的な治療法としてHDR選んだと言います。ある男性は、アメリカでこの治療法を行っている病院について耳にし、一度は渡米して受けることまで検討したけれど、たまたま国内で行っている病院を報道で見つけたと語っていました。

高線量率組織内照射法(HDR)の実際

HDRもほとんどの場合、入院して治療を受けることになります。前立腺に針を刺し、その針に放射線が出る線源を通し、集中的に照射します。一度刺入した針は、治療期間中は刺しっぱなしのまま留置するため、治療期間中は体を動かさず安静にする必要があり、それがつらかったという人もいました。HDRは、外部照射療法と組み合わせて行われる場合がほとんどです。外照射療法については、放射線治療(外部照射療法)のページをご覧ください。

高線量率組織内照射法(HDR)後の困った症状と退院後の生活

HDRでも直腸障害や排尿障害などの後遺症が出る可能性はありますが、今回インタビューに協力した人たちには、治療による後遺症と思われるような目立った症状が、ほとんど出なかったそうです。ただ勃起機能については、「自分は重大視していなかったけれど、治療後失われてしまった」と話す人はいました。治療後、経過は順調だと話す男性は、たまたま自分に合った治療法だったのだろうと語りました。一方、治療後PSA値が再上昇し、また別の治療を受けなければならなくなったという男性は、治療を受けた当時を振り返り、この治療があまりに簡単だったので、本当に治ったのか不安だったと話しました。また、治療後に、時々おこる後遺症として、尿道が狭くなり排尿に障害をともなう尿道狭窄があり、ある男性は、予防のため入院中に水分をたくさん取るように指導されていて、以来10年以上ずっと、水分摂取に気をつけていたと話していました。