インタビュー時:40歳(2021年3月)
関係:母
医療的ケアのある子:長男2歳
首都圏在住。夫と長女、次女、第三子となる長男2歳の5人家族。

生後2か月で、先天性心疾患が見つかったが、手術をすれば日常生活を送れると言われていた。
生後5か月で心臓の手術を行い、術後しばらくして容体が急変し低酸素脳症で寝たきりとなった。
2歳半となった現在も入院中で口腔・鼻腔内吸引と経鼻経管栄養をしている。
半年後に在宅医療への移行を検討しており、家族での生活に不安と期待を持ちつつ、自宅内の環境整備や訪問看護などの制度利用について情報収集を始めたところである。

プロフィール詳細

第三子となる長男は生後2か月の予防接種の際、近所の小児科で心雑音を指摘され、その後市内の総合病院で先天性心疾患であるファロー四徴症と診断された。
聞いたこともない診断名に大きな不安があったが、「手術をすれば普通に走ったりは問題なくできる」と説明を受け、都内の大きな病院を紹介され、生後5か月で心臓の手術を行った。

術後3日目くらいまでは順調で、「明日にはICUから出られるかも」と伝えられていた翌日、むくみが強くなりICUから出られなかったが、そのときは心臓手術後にはよくあると説明を受け納得した。
しばらくして一般病棟に移り、退院を見据え、自身は薬の投与の仕方なども教わっていた。
しかし一般病棟に移って1週間くらいで吐き戻しが増え、高熱や多汗の症状があるなど、子どもの機嫌の悪い日が続いた。

不調の原因を検査することとなり、その検査室から子どもが病室に戻り、自身が子どもをなでている際、だんだん顔色が悪くなり、目が動かなくなってきたのをその場にいた看護師と同時に気づいた。
容体急変で、ICUに運ばれていく子どもに対し大変なことになったと思いつつも、これだけ大きな病院で医療者も揃っているなら安心と当時は考えていた。

その日の夜、自宅に病院から電話があり、息子の心臓マッサージをしていると知らされ、慌てて病院に戻った。
翌日、脳のCTをとった結果、低酸素脳症と告げられ、その場で号泣するしかなかった。
低酸素脳症と知らされた後も、いつか回復するのではないかと信じていたが、ずっと薬で眠り続けている子どもの姿をみて、担当看護師と話すうちに、大きな回復は望めないと徐々に理解していった。

医師からは尿路感染症により低酸素脳症になったと説明されたが、もっと早くに別の手立てがなかったのかと医師に対する不満・不信は残っている。
その一方で、脳外科医から「低酸素脳症になったけど、生きているのはお子さんのもつ力です」といわれたことは大きな支えとなっている。

2年近く入院する中、看護師の方々には精神的にも支えられた。
家族面会の際には、寝たきりの息子と上の子どもたちが交流できるように、息子の手形や足形をとって工作を考えてくれるなど感謝の気持ちでいっぱいである。
その一方で、急変当時に関係した医師や、担当してきてくれた看護師の方々が異動で入れ替わるなど大病院では仕方がないと思いつつ、残念な面はある。

現在、医療的ケアは口腔鼻腔内吸引と経鼻経管栄養がある。
子どもは生後5か月で入院し家で家族と過ごしたことがほとんどない。
コロナ禍で1年以上面会時間も制限され、上の子ども達にも祖父母にも会わせてあげられていない。
息子にもっとたくさんの刺激を与え、家族の愛情を注いであげたいと思い、在宅医療への移行を決意した。
現在半年後の退院に向け準備を始めたところである。
在宅に移行するなら、管理のしやすさで胃ろうを勧められており、現在検討中である。

在宅への移行にあたりどのような準備が必要か、どんな制度があるか情報収集を始めたばかりで、今は同じような状況の方のブログやインスタグラムを検索している。
ただ、同じ市内の方ではないため、実際に自分の住んでいる市でどのようなサポートが受けられるかわからず不安である。
福祉ガイドを市役所からもらったが、分厚くて情報がたくさんあっても、自分の子どもの状態にはどの制度や仕組みが該当するかもよく分からない。
子どもの症状や障害の程度は障害者手帳を取得するときにも役所に登録しているのであるから、行政からあてはまるものを個別に紹介するなどしてもらえると助かる。
自身は運転には自信がないため、自治体の移動支援を利用したいし、上の子に何か急なことがあった場合にも息子をみてくれる看護師を見つけることができるのか、など漠然と考えていることはたくさんある。

上の子ども達は、自分の弟は今は病気だけど、病院から治って帰ってきて一緒に遊べると信じている。
寝たきりの弟の状態をどう説明しようか、今、頭を悩ませている。
ただ、息子は面会で抱っこすると嬉しそうな顔をしたり、看護師さんによって反応が違ったりするなど、息子なりに伝えたいこともあると感じている。
家に戻って家族で過ごす時間を大切にしたいし、息子には病院から出て太陽や風を感じてほしいと思っている。

私は: です。

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