適切な医療、福祉、教育などのサービスを受けるための情報収集についてのお話です。行政や通っている事業所から必要な情報を得られた方がいる一方で、自分に必要な制度やサービスの情報に辿り着けなかった方や、行政担当者に制度や助成を申請したものの前例がないという理由で断られた方もいました。必要な情報は同じ境遇の親同士の交流やSNSを活用して集めた方、自分自身のことを発信し、ネットワークを広げる中で情報入手に繋がった方もいます。
行政の担当者とのかかわり
日々、医療的ケアに追われる親たちの多くは必要な支援や制度をリサーチする時間がなく、適切な情報にアクセスできずにいます。
そんな中で行政担当者やソーシャルワーカーの情報提供に助けられた人もいます。
この方は相談員や訪問看護師からの助言や、専門職との情報交換で助かったことが多かったとお話くださいました。
しかし、情報をいただいてサービスの利用を申請しても「その自治体では前例がない」といった理由で、必要な支援が受けられないこともあります。
療育センターなどを利用する年齢になれば情報も入手しやすくなりますが、お子さんが小さいうちは相談できる場所もなく、孤独な思いで子育てとケアをしていたと話された方もいます。
一方、周囲のサポート、制度支援を受けるために、自分からどのような制度が必要か、行政に働きかけたり、コミュニケーションをとったりするように心がけたという方もいます。
次の方は、当時居住されていた地域で、障害児にヘルパーを派遣してもらう第一号となったときの経験から、情報を集めて客観的にわかる形にすることが必要とお話くださいました。
行政からの情報提供が足りない
自治体ごとに様々な制度や補助金があるのにそれが自分の子・家庭に該当するのかどうかがわからない、日常のケアに追われ気づいたら申請時期を過ぎていた、入院先や療育センターで知り合った親仲間から、「こんな制度がある」と聞いて初めて制度の存在を知った、という方も少なくありません。
利用できる制度について、行政から情報を提供してほしいという願いは数多くありました。
次の方は就学時の特別支援学校の情報について、行政から連絡が来るものと思っていたが、実際は何もなかった、教育委員会に問い合わせたところ、役所の障害課が把握している子どもの情報が就学担当部署とつながっていないと知り、驚愕したとお話くださいました。
在宅療養生活に必要な支援や補装具等の助成について、病院にも情報が集まっています。
病院のソーシャルワーカーがもっと情報を提供してほしいという声や、医療的ケア児や病児のいる家族から聞き取った情報や困りごとを病院から社会に発信してほしいという声もありました。
コーディネーターの不足・不在
行政には様々な制度がありますが、管轄や部署が細かく分かれていて、一回訪問しただけでは用が済まないという経験をされた方も多くいます。
ソーシャルワーカーや相談員と呼ばれる担当者がコーディネートをするのが一般的ですが、多忙でなかなか相談に応じられないケースや、相談員の紹介がないため自分で役所に問い合わせ、必要な制度やサービスを行う事業者を自力で見つけた経験をされた方もいました。
次の方は、ご自身で役所に問い合わせてコーディネート業務をしましたが、とても大変だったとおっしゃっています。
次の方はご自身が社会福祉士の資格があるため制度に関する理解や関心は高く、障害者支援業務を専門に行う相談支援専門員の利用を行政に申し出たことがありました。
その際に子どもはまだサービスを使う年齢ではなく、支援員の数も不足していることから、保護者が子どもを看てほしいという説明を受けた経験をお話くださいました。
必要な情報も製品もなく困った
お子さんが小さいうちに退院し在宅療養に移行した方の中には、呼吸器や吸引器を載せられるバギー(子ども用車いす)を探したのになかなか見つからず、メーカーに問い合わせても、安全が保証できないと言われて困ったという方もいました。
次の方は、バギーやベッドサイドの棚などがないため自作しましたが、あらかじめ医療的ケアのある子を想定した製品や情報提供があればいいのにとおっしゃっています。
同じ境遇のママからの情報
制度や必要な物品などの情報収集で頼りになったのが、ブログ等で情報発信されている方の情報や、病院や療育センターなどで知り合ったママからの情報だったという方が多くいます。ご自身でSNSを通じた情報発信を行うようになった方もいます。
次の方も、自分でブログを発信してつながりを広げながら、医療的ケアがあっても受け入れてくれる療育センターを見つけたといいます。
自分の子どもに気管切開をするかという難しい決断を迫られているときに、同じような医療的ケア児を育てる家族に出会ったことや、SNSを通じて知り合ったご家族の言葉に背中を押されたと言う人もいます。
2023年7月公開
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