家族の役割分担

子どものケアを中心とする生活の中で、親の仕事、きょうだい児の学校、日常生活を切り盛りしていくには家族の相互の協力は欠かせません。
このとき、家族の役割分担の方法は家族の数だけあるようです。
父親は経済的に家庭を支える、母親は24時間体制で子どものケアと家事という分担の家庭が多かった一方で、共働きやシングルで子育てする家庭もあります。
また、子どもの身体が大きくなるにつれ、力のある父親の役割が大きくなったたという家庭、祖父母の助けでなんとか乗り切っているという家庭、それぞれのお話を伺いました。

夫婦におけるケアの分担

父親は経済的に支え、母親は子どものケアと家事が中心だったという家庭、それぞれに仕事をもちケアも分担したという家庭、分担の中でも平日/休日担当、昼間/夜間担当など、それぞれの家庭の方法があるようです。

この方は母親で看護師です。お子さんに必要なケアは当初は、経管栄養と酸素吸入でしたが、体調を崩すごとに導尿や人工呼吸器と増えていったそうです。看護師とはいえ、在宅でのケアに不安があったものの、父親も完璧に手技を覚え、家での万全の体制を整えたとお話くださいました。

次のご家庭も、母親が看護師です。父親は当初は医療の素人ながら今では医療的ケアを完璧にこなせると言います。お風呂の様子や風呂上りのガーゼ交換だけは夫婦で協力して行う様子をお話くださいました。

父親の日中の仕事に支障が出ることを懸念して、ケアの分担をしなかったというご家庭もありました。それでも夜中のケアの途中に、隣の部屋から気持ちよさそうないびきが聞こえてくると悔しかったというお話も。
また、退院当初は夫婦で医療的ケアを覚えたが、子どもの成長やケアの内容が変わってくるにつれ、日常的にケアを担う母親に知識や技術が集中してしまい、結局、夫には任せられなくなったというお話も多くありました。

次の方は、仕事をしている父親の立場からお気持ちを語っておられます。

普段仕事が忙しくあまりケアに関われない父親が、すべてのケアを母親に代わって担うことはなかなか難しいようです。その中でも休日や外出時は父親が練習してケア担当になるという家庭もありました。

きょうだい児がいるおうちではきょうだい児の面倒をみる側と、医療的ケアのある子をみる側に分かれる場合もあります。

親自身が病気になったり怪我をしたり、ときには入院する場合もあります。
また、下の子を出産する際の入院など、どうしても子どもをケアできなくなる場合もあります。そのようなときに、どのような役割分担で乗り越えたのでしょうか。

こちらの夫婦は共働きで、入院の付添いを求められた場合に、父親が付き添うこともあると言います。
病院から男性である父親が付き添う場合には母親である女性の多い部屋なので、個室を取ってほしいと言われ、憤慨したと言います。

夫婦間の精神的な関係

医療的ケア児を育てる中で、夫婦の関係の変化は大変重要なテーマです。
夫婦で協力し困難を乗り越えた経験から夫婦の絆が強まったという方もいれば、ケアに追われる中で、夫婦間でお互いの気持ちが離れていったと感じるという方、その両方の気持ちを日々、揺れ動いていると話される方もいます。
夫婦ならどの家庭でもすれ違いは起こりますが、医療的ケア児を育てる中で、そのすれ違いはより色濃くなるようにも感じられました。

次の方は、医療的ケアのある子が初めて退院し家に戻ってくるにあたり、小学生だった双子の兄を含め家族で三男の命を優先すること、そのためにみんなで協力しあうことを話し合い、夫婦や家族の結束が高まったというお話をしてくださいました。

家でケアに追われ、自分が社会とは断絶し家に閉じ込められているように感じている妻の気持ちを知ってか知らずか、夫は帰宅が遅く頼りにならない、帰ってきても自分のことだけ、妻の不満は多くありました。その中でも、お互いの歩み寄りや、子どもの成長を誰より喜べるのは夫婦という思いを語ってくださった方もいます。

次の方はケアには人手が必要と感じながらも、最終的に離婚を決意したことについてお話くださいました。

祖父母の関わり

祖父母や自身のきょうだいの力を借りて、日常のケアや他の子どもたちの世話など生活の切り盛りをしていたという方もたくさんいます。
一方で、祖父母は遠方でなかなか頼れなかったという方や、小さい頃は少しの間みてもらえたが、子どもが大きくなり高齢となった祖父母にお願いするのはなかなか厳しいと感じるというお話もありました。

この方は、ご自身のお母さまと2人3脚でお子さんのケアにあたってきたといいます。

次の方は、祖父母は遠方にお住まいですが、長期休みで帰省した際にケアをお願いしたり、必要なときに呼び寄せてお願いしたりできる関係にあるといいます。

次の方は、親世帯や自身のきょうだいの支援の手に感謝しながらも、高齢になってきた祖父母世代に任せるには心もとないという気持ちと、家族とはいえ頼りきれず自分で頑張ろうとしてしまったという気持ちを反省とともに述べておられました。

祖父母にとっても、孫に医療的ケアが必要であるということはショックな出来事です。
そのような中、孫が生まれてきてくれてうれしいと言ってくれたことで気持ちが安らいだというお話もある一方で、世代的になかなか受け入れや理解が追いつかず、「かわいそう」と言われるやりとりにストレスを感じ、祖父母と距離を置いたという方もいました。

次の方は、祖父母や親せきから温かい言葉を受けて支えられたというお話です。

2023年7月公開

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