日々の生活とケア

ここでは、医療的ケア児との自宅での生活が始まったときに大変だったこと、日々の生活のやりくりなどについて紹介しています。
子どもが退院すると、自宅で親が中心となって医療的ケアを行う生活が始まります。病院とは違い、困ったときに医療者にすぐには相談できません。
普段の生活の中で、子どものそばを片時も離れないというわけにもいかず、機器のアラーム音に耳をそばだてながら家事をこなし、寝ている間も子どもとケアのことが頭にあると言います。
日常の家事とケアに加えて、きょうだい児の学校や保育園の行事、習い事への送迎、自分の仕事や活動などの予定をこなし、家族のスケジュールとケアのスケジュールが頭の中を日々かけめぐっているお話を聞かせてくださいました。

ケアと日常生活

医療的ケアは、主なものとして胃ろうや経鼻経管からの栄養注入、気管切開部のたんの吸引、導尿などがあります。これら医療的ケアに関連して、チューブの交換や、チューブを固定するテープの貼り換え、器具や容器の洗浄・消毒などもあります。
それ以外にも日常的なケアとして、身体の清潔を保つ清拭、入浴、体位交換、排せつの介助として浣腸や摘便が必要な場合もあります。
食事ができる子の場合は嚥下を見守りながらの食事介助、学校や外出する際の移動介助など、様々な行為が日常的にあります。

栄養注入

食事を経口で取れない場合には、胃ろうや経鼻経管で、ミキサーで流動にした食事や栄養剤、水分を注入します。このような胃ろうや経鼻経管に関わるケアと生活についてのお話です。
この方のお子さんは、1歳で元気に動き回る女の子です。

一般的な食事は一日3食ですが、栄養剤の注入を行っている子は、数時間置きに注入時間が決まっています。
この方のお子さんは夜間にも注入があり、ケアに生活が縛られている感じがあったと言います。

次の方は、作った食事をミキサーにかけて当初は経鼻経管、現在は胃ろうから注入しています。お子さんの体調もよくなり、自分自身も子どもに食事を作る喜びを感じているそうです。

気管切開・人工呼吸器

嚥下ができない子どもは唾液やたんが気管にたまると呼吸が苦しくなるために、吸引を行う必要があります。冬場や体調を崩したときはたんなどの量が増え、吸引が頻回になり、親はベッドサイドを片時も離れられなくなるという声もありました。
また気管は非常にデリケートな部位なため、カニューレの交換や吸引時も気をつかうというお話もありました。

この方のお子さんは昼間の吸引回数が1日50回くらいと多くて大変だったのですが、気管と食道を分離する手術を行って、1日15回程度に減ったと言います。

この方のお子さんは人工呼吸器を使用することで体調が安定していた一方で、機械のアラーム音に振り回される日常についてお話くださいました。

在宅酸素療法

心臓疾患や肺疾患のお子さんでは、酸素を効率よく体内に取り入れるために酸素ボンベ等の酸素供給機器を近くにおき、管から酸素を取り込んでいます。
鼻にチューブが入っている場合には、動きまわっているうちにチューブがねじれたり、外れてしまうことも多いようです。

腹膜透析

腎臓が上手く機能していない場合、体内の老廃物が排出されないために、成人では一般に血液透析を行います。しかし、子どもは長い時間にじっとして透析を受けることが難しいため腹膜透析という方法をとります。お腹の中にカテーテルを埋め込み、透析液を注入すると、そこに身体の中の老怪物や余分な水分がしみだします。その廃液を捨てて新たな透析液と交換することを繰り返して老廃物を取り除く方法です。
この腹膜透析を行うお子さんとの生活についてお話をいただきました。

腹膜透析以外にも日常生活において注意が必要なことについてお話いただきました。

食事介助

経鼻栄養や胃ろうといった医療的ケアがない場合にも飲み込みが難しい子どもが誤嚥しないように食事をさせるのは、時間がかかり、大変な介助のようです。
子ども自身も苦しいため、なかなか口が開かず、食事は苦労したというお話です。

見守り

実際には直接的にケアしていない時間もお子さんのそばを離れられないのは、ついている管が抜けたり、外れたままになったりするのを防ぐための見守りに気を遣うことがあるからです。
幼い子どもはよく泣くものですが、心臓や肺疾患を抱える子どもは泣くことで心臓に負担がかかり、チアノーゼの症状が出てしまうので、泣かせないように優しく、そばに付き添うことに神経を使ったというお母さんもいました。

次の方は、お子さんのケアにあたり、自分の時間がなく、社会と切り離されている感覚をお話いただきました。

次の方はお子さんの経鼻経腸チューブが抜けるとそれを入れ直すために、車で30分の大学病院までいかなければならないので、チューブが抜けないように気を付けていたというお話です。

自己注射

この方のお子さんは小さい頃から慢性的に皮膚や粘膜に潰瘍ができる免疫系の病気を抱えています。家庭で定期的に薬剤を注射することで症状を抑えています。自己注射は大人にとってはそれほど難しくなくできますが、お子さんの成長過程では自分で注射する行為が面倒だったり、嫌だと感じることもあり、親子の葛藤もあったといいます。

家族の生活とケア

家で生活すれば、家族の食事づくりや仕事や学校への送り出し、きょうだい児のお世話、習い事の送迎もあります。
仕事をしていれば、通勤や仕事の段取りなど、いくつもやることはあります。
夫婦の関係は生活を共にするというよりも、交代でケアにあたる交代勤務のようだとおっしゃる方もいました。
一方、外で働く夫はどんどんケアから離れ、ケアは一人で行っていたという母親もいました。(家族の役割分担も参照)
ここでは家族の生活とケアのやりくりについてのお話を伺いました。

退院した当初は慣れないケアと生活に身体も気持ちも追いつかなかったというお話がありました。

次の方は、上に2人のお子さんがいて、3人目が医療的ケアのある子でした。
2年間ほぼ入院付添いの生活の後、家で家族5人が暮らせることが本当に嬉しかったと言います。
しかし、家で生活することで、今度は家族の用事をどうこなすかという新たな問題もあったと言います。

この方は、お子さんが気管切開をして吸引の回数が減ったことで、家族の用事や仕事をこなしやすくなったそうです。

家族がケアと自分の生活を両立するにあたって、睡眠時間の確保が大きなテーマです。
夜のケアと睡眠環境について伺いました。
あるお父さんは、お子さんのベッド脇の床に布団を敷いて夜のケアをしていたところ、冬の寒さで腰を痛め、正月休みをつぶしてしまったという苦い経験から、ケアする側もよい睡眠環境にしておく大切さをお話くださいました。

次の方は、寝ているときもお子さんのことが気になり、常に気が張っている感覚を話してくださっています。

次の方は、お子さんの学校への送迎では自ら車で運転することを考え、寝不足にならないように注意したと言います。

このご夫婦は、当初は夫婦2人で医療的ケアのある子に夜間付き添っていたものの、共働き家庭で、2人とも眠れないと共倒れになると思い、夫婦で交代制をとるようになり、それを「夜勤」と名付けているとお話くださいました。

2023年7月公開

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