学校での学び
子どもは子どもの中で育つ。子どもは学校に通い周囲に刺激を受け、身体も心も成長します。医療的ケアのある子が学校やクラスにいることで周囲の子が学び、成長することもあります。
その一方で、学校での学びに限界も語られます。発話や表現が難しい子どもにとって、ICTツールを使ったコミュニケーションに大きな期待がありますが、新しい技術は学校がなかなか取り入れてくれないという声もありました。
また、学校にいる間は多くの学びの機会があったのに、卒業後に学ぶ場がないといった点では多くの親から不安の声が聞かれました。
子どもたちの変化
子どもは学校では他の子どもから刺激をうけて、家とはまったく違う表情を見せることもあります。家ではゴロゴロ、うとうとしてしまう子も、学校では自分のペースだけでは過ごせません。学校を通じ、メリハリのある生活となったと語られた方もいます。
学校での学びを通じ、子どもの表情が豊かになったと感じた方、手話やスイッチなどを使って自分の気持ちを表せるようになり、子どもの情緒が安定したと感じた方などの語りを紹介します。
医療的ケアのある子は気管切開などで声を出すことが困難な子や、知的な面で発話やコミュニケーションの発達が途上にある子もいます。特別支援学校ではその子どもに応じたコミュニケーション手段として、支援ツールや手話、ジェスチャーなど様々な方法を教えています。
特別支援学校では、作業療法士や言語聴覚士などの資格を持った教員や外部専門員等による運動訓練やコミュニケーション訓練があり、家では取り組むことが難しい装具を用いたり、リハビリによる運動機能の向上が見られたりすることがあります。
普通学校でも、子ども自身が周囲から刺激を受けて心身ともに成長し、子ども自身やお母さん自身の価値観に大きな変化が生まれたというお話もありました。
性教育という大事だけれど親ではなかなか伝えづらい話を、学校ならではの視点で伝えてもらえてありがたかったとのお話もあります。
肢体不自由教育部門のある特別支援学校では学校に通学する方法と、自宅に先生が訪問し学ぶ機会を保障する訪問教育とがあります。
学校に通学できるかは、その子の心身の状況、住んでいる自治体の方針や学校での受け入れ体制があるかによっても異なります。
訪問教育により子どもの成長を感じたと話してくださる方、訪問教育には満足しているがスクーリングの機会がもう少しあれば、とお話してくださる方もいました。
学校での生活で学ぶのは医療的ケア児だけではありません。普通学校に医療的ケアのある子が通い、過ごすことで、周囲の子が障害について理解していく様子をみて、日常の成長も共にあることを実感したという声もたくさんありました。
次の方は、きょうだい児と同じ、地域の普通小学校に通い、周囲の子どもたちの成長を見ることができたとお話くださいました。
学校でのICT教育への期待
発話や表現の難しい子どもにとって、ICTはコミュニケーション手段としても、将来の自立を支えるツールとしても大きな期待がもたれています。しかし今の学校でのICT教育には限界を感じ、今後ICT教育をより充実させて、子どものできることを広げてほしいという意見が多くありました。
学校卒業後の居場所
就学時期にある間は学校という居場所があるけれど学校卒業後の学びの場や居場所をどう見つけるか、が親にとって一番不安なことで、子どもが小さいうちからそのことを悩んでいたと多くの方が話していました。
卒業後の進路や居場所をどうするか、多くの親が悩んでいる一方、子どもの自立や居場所についての工夫や努力を語ってくださった方もいます。
2023年7月公開
認定 NPO 法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」では、一緒に活動をしてくださる方
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コロナ禍で家にいると昼夜逆転し子どもの機嫌も悪かったが、学校で緊張する時間が長くなると体力消耗し家でも落ち着けるようだ
学校に入ってジェスチャーで自分の気持ちを伝えることを学び、情緒が安定してきた。今では一週間のスケジュールも把握している
息子は立てるかもと、リハビリの先生が装具をつくった。学校の学習発表会で舞台に立つ息子の姿には感動し、教育の力を感じた
運動会の組体操で、他の子に混じった娘の姿を探した。今まで目立ちすぎていた娘を探さないといけないことがどれほど嬉しかったか
息子が小学校高学年となり性教育が気になっていたが、母親ではなかなか教えることができず、学校で個別に行ってもらった
訪問教育でじっくり子どもの反応を引き出してもらえた。訪問籍でも通学籍の子との交流の機会もあり子ども同士のつながりもあった
訪問教育でしかできなかった学びや体験ができ先生には感謝しているが、訪問籍では通学の機会は月1回だけで不平等なようにも思う
小学校に入るとき友達や保護者の反応はすごく気になったが、周りの子たちは順応性が高くあっという間に友達になった(音声のみ)
息子はしゃべれないので、iPadの画像を本人がタッチすれば読んでくれるアプリなどを、学校教育でも取り入れてほしいと思っている
息子に視線入力にトライさせている。学校でも取り入れてほしいが、学校はこういった技術への取り組みが遅れているように感じる
高校まではリハビリや、その子なりの課題に取り組み、職業訓練を意識した手厚い教育やサポートがあるが、卒業後が課題だ
成人した娘が、児童館で子どもたちと交流する活動を社会貢献事業として認めてもらい、謝金を娘の口座に振り込んでもらっている
