インタビュー時:33歳(2020年11月)
関係:母
医療的ケアのある子:長女1歳6か月
首都圏在住。夫と長女の3人家族。

娘は出生後まもなく体が青ざめていき、転院先の病院で、食道閉鎖と鎖肛と診断された。
現在はバーター症候群と診断されており、1日4回胃ろうからの栄養注入と、食道を切断しているため唾液を排出する唾液ろうがある。
来年には食道をつなぐ手術を行う予定だが、これまで口から食べる経験のほとんどなかった娘にとって、食べられるようになるには食べ物に興味を持ち、口を動かす訓練などが必要となる。
現在育休中で子どもと1日中一緒にいる。
居宅訪問型の児童発達支援などを利用したいが、子どもをみるのは親の仕事という行政の意識に壁を感じる。

プロフィール詳細

低体重児で生まれた娘は、出生直後から体が青ざめていき呼吸も浅いように感じられた。
看護師からビタミンK2シロップを飲ませても鼻から出てきてしまっておかしいと言われ、不安を主治医に訴えたところ、すぐに大学病院に転院が決まった。
大学病院では食道と胃がつながっていない食道閉鎖と、肛門が本来の位置にできていない鎖肛が生じていることがわかった。
生後3日目で食道をつなぐ手術を行い、その後1ヶ月NICU(新生児集中治療室)で過ごし、鎖肛の手術も行った。

退院後も食道閉鎖の合併症として口から入れたものが気管に入ってしまう、気管食道ろうを繰り返した。
肺炎のおそれがあることから、いったん食道を切断し、胃ろうを造設することとなった。
1歳半になるまでの間ミルクを飲んだり、口から食べ物を摂取したりしたのは合計でも3か月くらいである。

現在はバーター症候群と診断されており、必要な医療的ケアは、1日4回胃ろうからの栄養注入と、唾液排出のための唾液ろう部分の皮膚の清潔である。
娘は食道の切除部位が長く、唾液ろうが通常よりも顔に近い位置にあるため、市販のパウチでは合わず、自宅ではガーゼや母乳パッドを当てるなど自分なりに工夫を重ねている。

夜22時から朝5時までの間は胃ろうから栄養を入れているので、朝はいつも投与終了のアラーム音で目覚める。
それから10時、14時、18時と栄養注入を行い、娘の栄養ありきで1日が過ぎる。
娘が寝返りやハイハイするようになってからは、ポンプとチューブでつないでおくこともできず、娘を追いかけながら、シリンジによる手押しで栄養を注入するなど成長に応じて試行錯誤している。

来年には食道をつなぐ手術をする予定なのでとにかく体力を落とさないようにすることが今の一番の課題である。
娘はこれまで口から食べるという経験がほとんどないため、食べ物への興味が薄い。
手術をしても口から食べられなければ胃ろうは継続するため、食べるための訓練と経験が必要である。
娘と一緒に食卓について、親が食べる様子を見せたり、興味のありそうな顔をしたら、とりあえず口には入れてあげている。

出産前は、障害のあるお子さんとそのご家族をサポートする仕事をしていた。
そのときにたくさんのお子さんやご家族と触れ合ってきたことは今の子育てにおいても支えになっているように思う。
仕事は現在育休中である。保育園も考えてはいるが、食道をつなぐ手術後、胃ろうの継続などまだ決まっていないことも多い。
娘の安全を1番に考えつつ、非正規での職場復帰ができないかなども考えている。

長期入院になると筋力が落ちてしまうので、娘の運動能力の成長スピードは一進一退である。
ただ、娘が明るく笑顔なことがとても助けになっている。
病気を何回も繰り返しながらも耐えている娘をみると、かわいいという気持ちだけではなく、私たちにたくさんのことを教えてくれている、一緒に成長してくれようとしているという思いが湧いてきている。

娘はかわいいが、自分1人で1日中一緒にいる状況が続くことに行き詰まりを感じる。
訪問の看護師や理学療法士、言語聴覚士などのサポートは、子どもには刺激があって楽しそうだし、親も運動機能を向上させる方法など専門的なアドバイスがもらえている。
今一番ほしい制度は、人と触れ合う機会を増やし、子どもも成長し、母親も自分の時間が持てるような居宅訪問型の児童発達支援である。

住んでいる自治体でも居宅訪問型の児童発達支援があり、窓口で申請の相談はしてみたものの、子どもの就学までは親が主体的にケアをするのが前提で、介護認定や障害者手帳がない子どもでは前例がないと断られた経験がある。

まずは来年の手術がうまくいくことが一番の願いだ。
将来、どのくらいの形状のご飯をどのくらい食べられるか、排便のコントロールがうまくできるようになるか、など集団生活を送る上での心配はある。
それでも娘が、生まれてからこれまで頑張ってきたことに誇りをもって、自分自身を大切にできる子になってほしい。

私は: です。

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